佐藤可士和さんに質問「日本人の強みは何だと考えますか?」

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『ブレーン』では佐藤可士和さんが美大生からの質問に答える連載コーナー「美大生からトップクリエイターへの質問」を掲載しています。アドタイでは、隔週でこの連載を転載しています。
※本記事は、『ブレーン』2011年9月号(連載第2回目)掲載分です。


連載「佐藤可士和さんに質問」こちら

Q. 海外で仕事をするとき、日本人としてどんなところが強みだと考えますか?
(京都精華大学デザイン学部 ビジュアルデザイン学科 2回生)
A. 成熟した時代には日本的な強みが生きる

小型化と多機能化に強み

日本人の強みの一つは、すでにある製品を、改良しアップデートする能力の高さだと思っています。自動車しかり家電製品しかり、もとは海外で生まれた製品を“小型化”“多機能化”していく技術が非常に優れている。

グローバルで仕事をしていると、必然的に日本らしさとは何かを意識します。さらにいま、高度成長期以降の産業史を扱ったドキュメンタリー番組『らいじんぐ産』(NHKBSプレミアム)のナビゲーターをしているので、改めて日本人のものづくりについて考える機会が増えています。

番組の中で特に僕が面白いと思ったのはショベルカーの事例です。ショベルカーはもともとイタリアで開発され、日本には昭和30年代に輸入されました。ところがイタリア製品は日本の狭い国土で使いづらかったため、日本企業が独自にミニパワーショベルを開発したんです。

当時は作業効率の面から、小型化に疑問を抱く声が多かったそうです。しかし次第に小回りのきく勝手の良さが評価され、いまや世界の8割が日本製。ベルリンの壁を砕いたのもすべて日本製のショベルカーでした。土を掘ることだけが目的だったショベルカーを多機能化したのも、日本企業です。合体するスーパーロボットのように、アームの先のアタッチメントを変えることで作業性を高め、解体や破壊に適した動きもできるようにした。

カンボジアでは地雷除去にも使われています。あるときカンボジアに行った日立建機の技術者が、地雷で足や手をなくした現地の人に「日本の技術で私たちを助けて」と言われたのがきっかけだったそうです。ジャングル化した地雷地で作業できるように、日立建機の技術者は、まず木々を切り倒す、巨大な芝刈り機のようなアタッチメントを開発。伐採しつつ、地雷除去装置で地雷を爆発させ、車両後部には荒れた土地をならす耕運機の機能も加えた。その結果、その地にはトウモロコシ畑や学校ができているそうです。開発者たちが、長年研究を重ねてやっと完成させた、未来を拓く多機能ショベルカーです。

この話をはじめて聞いたとき、これこそ仕事の本質だと思い感動したことを覚えています。助けを求められ、技術で問題を解決し喜ばれる。クリエイティブの仕事というのは、まさにそういうものですから。

1から10にアップデートする力

日本人が小型化、多機能化する能力に長けている理由は、国土の狭さが大きく関係しているでしょう。その国らしさというようなものは、環境要因が規定していくと僕は思っています。利休の茶の湯や俳句のように、国土の狭さから、無駄をそぎ落とすことで本質に向き合う独特の表現哲学が見出された。

そしてこれからは、そういった日本の強みが生きる時代だと思う。かつては大胆なコンセプトアイデアを出す欧米型の価値観が良しとされてきたけれど、いまGoogleやAppleが行っているのはコンセプトの最適化です。検索エンジンはもともと他社が開発したものだし、iPodは、それまでにもあったMP3プレーヤーを、デザイン、サービス、マーケティングで今の時代に最適化させてヒットしました。

0から1を生みだすアイデアはもちろん非常に価値の高いことです。しかし世界的に市場が成熟している今の状況では、すでに存在している1を10の価値にアップデートすること、つまり日本人が得意とする技術がより求められるだろうし、それを意識する必要があると思います。

※編集部では佐藤可士和さんへの質問を随時募集しています。 brain@sendenkaigi.co.jp まで[質問、お名前、学校名、学部名、学年]を書いてお送りください。お待ちしています。


(プロフィール)
佐藤可士和
アートディレクター/クリエイティブディレクター。1965年生まれ。多摩美術大学卒業後、博報堂を経てサムライ設立。主な仕事にユニクロ、楽天グループのクリエイティブディレクションなど。

シリーズ【佐藤可士和さんに質問】
佐藤可士和さんに質問「美大生がもっと勉強すべき分野は何ですか?」

『佐藤可士和さん、仕事って楽しいですか?』
人気アートディレクターである著者が、学生との一問一答を通じて、やさしく、わかりやすく、ズバッと答えます。月刊「ブレーン」での好評連載にオリジナルコンテンツを加えて書籍化。

定価:¥ 1,050 発売日:2012/12/25

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