今年のユーキャン新語・流行語大賞候補にノミネートされた「ポポポポーン」。公共広告のワンフレーズ(しかも擬音)が、流行語として世を席巻したことは恐らく過去にもないだろう。
この状況に、同フレーズ“生みの親”のひとりともいえる、北海道在住のコピーライター・関ひとみさんは戸惑いを隠せない。「多くの人に知ってもらえたのは光栄なことですが、地方の一制作者の想定を超えていました」。
ACジャパンの公共広告『あいさつの魔法。』は東急エージェンシー北海道支社で制作され、2010年7月から全国で放映されていた。当然、制作に携わった誰もが、震災後のあの露出量を想定してはいない。「私についていえば、それまで札幌ローカルの仕事が多く、全国区で流れる電波の仕事は初めてでした。ですから、どちらかというと黒子的なスタンスで制作をしていたし、この仕事もその延長線で携わった。それが、震災を境に全国区で際立って注目を集める結果となり、戸惑いも大きかったです」。デザインプロダクションのコピーライターとして参加した関さんは、当時、身内にも自分が携わったことを言えなかったという。
企業CM自粛に伴うAC素材の大量露出は、広告の影響力が出稿量に比例するという事実も浮かび上がらせた。3月15日にはCMの総放送回数の8割超をACが占めた今年、CM総合研究所調査の「上半期銘柄別CM好感度トップ10」で、ACの公共広告は前年の73位から1位に浮上している。
「度を超えた放映量が、いかにプロパガンダ的な力を持つか。マスメディアの影響力をあらためて見せつけられた思いでした。このCMに携わったスタッフ以上に、そのことを実感した人はいないのでは」。
影響力低下説をよそに、非常時下で発揮されたテレビというメディアの強さ。CM制作に携わる人々には、未来への希望となったのも事実だ。「今回のことで、インターネットとは比較できないテレビの力を感じた。格差なく、瞬時にすべてのコミュニティに届く力強さは、制作側にとっては怖さにも希望にもなりえます」。
また、今回初めてACの活動を知ったという視聴者も多く、関さんは制作側と視聴者のギャップを再認識している。「歴史があり、素晴らしい広告を世に送り出してきたACの活動が、一部の生活者には知られていないとわかって驚いた。業界にいると忘れがちな、視聴者の率直な感覚には敏感でありたい。同時に、あれだけの露出に耐えうるクリエイティブとは何かということも考えさせられました。ひとつのCMがここまで露出する機会はもうないだろうから、そういう意味でも貴重な体験をさせていただいたと感じます」。
関ひとみ
コピーライター。有限会社ホーム在籍中、『あいさつの魔法。』のコピーライティングで、2011年全北海道広告協会賞 グランプリ受賞を経て独立。現在はフリーランスとして活動中。
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