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プリンター・メーカー6社が生物多様性と震災復興にセットで取組む(1)

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里帰りプロジェクトのポスター。家庭用プリンターの使用済みインクカートリッジを回収し、再資源化に取組むプリンター・メーカー6社共同のプロジェクトで、ブラザー、キヤノン、デル、エプソン、日本HP、レックスマークが参加する。回収ボックスは全国約3600の郵便局や自治体庁舎などに設置されている。里帰りプロジェクト事務局では、今後も郵便局や自治体に呼びかけ、回収拠点を増やし、回収量増を目指す。プロジェクトでは、廃棄物の収集運搬の広域認定を取得、全国から回収された使用済みインクカートリッジは、セイコーエプソングループのエプソンミズベで仕分けされ、再資源化される。

2010年に名古屋で開催された生物多様性条約CBD COP10。愛知ターゲットでは2020年までの中期目標が定められ、昨年10月にはケニアのナイロビで「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)に関する総会」が開催された。気候変動と並び、生物多様性はリオの地球サミットで定められた人類共通の課題。リオ+20が開催される今年、プリンター・メーカー6社が、家庭用プリンターの使用済みインクカートリッジ共同回収事業「インクカートリッジ里帰りプロジェクト」の一環として、環境省と国連大学高等研究所が主唱する「SATOYAMAイニシアティブ」の支援を始めると発表した。参加企業に今年の計画や展望を聞いた。

家庭用プリンターのインクカートリッジは、年間約2億個(推定)使用されているが、そのうち、メーカー各社に戻ってきてリサイクルされるのはおよそ1割程度。残りはゴミ箱に捨てられて、自治体の焼却炉で焼却後、埋立て処分されているのか、メーカー以外の別のリサイクル・ルートに流れているのか、定かではない。

そんなカートリッジの問題を改善すべく、2008年、プリンター・メーカーが責任をもってインクカートリッジを回収する「里帰りプロジェクト」が始まった。この取組みは、いま、2010年に名古屋で開催されたCBD COP10で提唱された「SATOYAMAイニシアティブ」、そして東日本大震災被災地への継続的な復興支援へとつながっている。

プリンター・メーカー6社が共同回収 「インクカートリッジ里帰りプロジェクト」

――2月3日、競合する6社が一緒に里帰りプロジェクトとして「SATOYAMAイニシアティブ」支援を発表されました。東日本大震災の復興支援と「SATOYAMAイニシアティブ」支援を結びつけることになったきっかけは昨年の3月11日にあったそうですね。

中山勉

中山勉(なかやま・つとむ)インクカートリッジ里帰りプロジェクト 代表幹事/キヤノン インクジェット事業統括センター部長。

中山 まさに昨年の震災当日ですが、この日名古屋では、「SATOYAMAイニシアティブ」を具体的行動に移すため、「SATOYAMAイニシアティブ(IPSI)第1回定例会合」が開催されていました。「SATOYAMAイニシアティブ」とは、2010年CBD COP10で発足したものです。

私たち「インクカートリッジ里帰りプロジェクト」のメンバーもその会場に出展していました。インクカートリッジ里帰りプロジェクトは、2008年4月、プリンター・メーカー6社(ブラザー、キヤノン、デル、エプソン、日本HP、レックスマーク)が家庭用使用済みインクカートリッジを共同で回収するために始めた活動で、リサイクルから再製品化・再資源化等を製造元が行うことを“里帰り”と位置付けて活動してきました。そのコンセプトから、「SATOYAMAイニシアティブ」に共感して、ともに活動しようということになったのです。

昨年3月11日は、「これから共同で活動を始めよう」というときに震災があり、戸惑いはありましたが、振り返れば震災で取組むべき課題がはっきりしたともいえます。その後の動きは早く、翌月に国連大学副学長の武内和彦さんとIPSI事務局長の竹本和彦さんにお会いしました。SATOYAMAイニシアティブのほうでもちょうど、震災を受けて特別な支援プログラムを形成しようとしていたところで、インクカートリッジ里帰りプロジェクトの説明をすると、好感をもって受け入れていただき、協力して活動しようということになりました。

久米章仁

久米章仁(くめ・あきひと)インクカートリッジ里帰りプロジェクト副事務局長/キヤノン インクジェット事業統括センター担当課長。

久米 インクカートリッジ里帰りプロジェクトは、使用済みインクカートリッジをただ回収してリサイクルするだけでなく、さまざまなCSR活動と関連させている点が大きな特徴です。

たとえば、回収したカートリッジ1個あたり3円を国連環境計画(UNEP)に寄付し、UNEPの実施する環境保護活動を支援しています。2011年9月現在の累積でUNEPへの寄付金額は約1000万円になりました。「SATOYAMAイニシアティブ」支援に関しては、たまたま第1回IPSI定例会合で世界中の参加者と地震を体感して、海外への寄付に加え、国内、それも被災地への還元をしようと意見がまとまったのです。

具体的には、回収した使用済みインクカートリッジ1個につき1円をIPSIに寄付し、受け取ったIPSIがそれを東日本大震災復興支援活動と被災地の自然共生社会づくり活動に活用します。

神阪誠

神阪誠(かみさか・まこと)インクカートリッジ里帰りプロジェクト営業部会長/エプソン販売 販売推進本部 CPMD 部課長。

神阪 支援を決めてからはさっそく、8月に開催された「東日本大震災復興支援シンポジウム―里海・里地・里山の復興をめざして」に協力団体として参加しました。シンポジウムの配布資料の一部は、セイコーエプソングループの障がい者雇用モデル企業として活動しているエプソンミズベ株式会社でデザイン・印刷しました。同社は、インクジェット里帰りプロジェクトでも重要な役割をしている拠点で、回収した使用済みインクカートリッジの仕分け作業を担っています。

中山 IPSIへの寄付は1個につき1円と金額的に大きくはありませんが、いかに長く続けられるかがより重要だと思っています。初回の寄付金は、2011年3月21日までさかのぼって集計し、岩手県大槌町吉里吉里地区の復興記録映画の制作に活用されます。また、今後は、海と田んぼからのグリーン復興プロジェクトを主導する東北大学生態適応GCOEを中心とした国内外のIPSIメンバー団体とともに、自然克服的な技術を使用しない、自然を活かした被災地の里山・里海の復興および地域活性化への協力を検討して頂いています。

もともと「里帰りプロジェクト」は、メーカーとしてともに拡大生産者責任を果たしていこうという志から始まったことですので、ビジネスではライバルとして競い合う6社ですが、復興支援と生物多様性保全という、日本や世界の課題に一緒に取組むことで、社会に働きかけるうえではより効果的であると考えています。

(続きは3/14日に掲載予定です。)

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