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ソーシャルがわからない企業に明日はない(1)

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始まったAQUA SOCIAL FES!!

AQUA SOCIAL FES1

川面が半分ほど凍ってしまうほど寒い3月下旬の北上川。


AQUA SOCIAL FES2

雪原のなかの沢内銀河高原ホテル。

3月20日の早朝、盛岡駅西口ロータリーを見渡すと、雪と静寂に包まれた世界が広がる。北の都の凛とした美しさは、寒さに弱い東京暮らしの人間にも、忌避感を超える感動をもたらしてくれる。白銀の世界で感じる雪への畏怖と親しみ―、人間の論理でいえば両極端にあるような感情さえも易々と包摂してしまう大きなもの、それが自然の力なのだろうか。

今日の雪中行軍での取材の目的は、トヨタ自動車の小型ハイブリッド車(HV)「AQUA(アクア)」のソーシャル・マーケティングと「流域思考」の環境保全活動の現場レポート。正式名は「早春の和賀川流域水源の森・苗づくりと雪わたり」という。12月26日の発売開始から約1カ月で、月間販売目標1万2000台の約10倍の12万台の受注という人気車「AQUA」には、これ以上プロモーションは必要ないと思うが、そのまわりで何が起きているのか、特別な車好きでなくともちょっと気になるところだ。

さて、AQUAのプロモーションとして、トヨタが打ち出したのは「AQUA SOCIAL FES!!2012(以下、アクアフェス)」だ。主催するのは自動車のマーケティングや商品の企画開発を行うトヨタマーケティングジャパン。とはいえ、名前だけ聞いてもなんだかよくわからない。ただ、FES(祭り、フェスティバル)というからにはなんだか楽しそうだ。ごみの回収などを徹底し、エコな音楽イベントとして定着したフジロック・フェスティバル(FUJI ROCK FESTIVAL)が略して「フェス」と呼ばれるのに近い。

「フェス行くでしょ、もちろん」「うん、虫よけ忘れないようにしなきゃ」そんな若者の会話が聞こえてきそうな雰囲気をかもしだしている。

「復興の星」アクアを生んだ岩手、北上川流域へ

AQUA SOCIAL FES3

AQUA SOCIAL FES!!で荷物の運搬などに使われるAQUA。


AQUA SOCIAL FES4

1日のプログラムの説明をするスタッフと説明を聞く参加者たち。

本題に戻ろう。アクアフェスは全国50カ所で地域のNPOなどと一緒に環境保全活動を行うというもの。AQUAのオーナーでなくても、参加したい人は誰でも参加できる。1度の参加人数の上限は50人~100人程度で、各地の水(河川や海)に関連する環境の課題解決につながる活動を行う。

そして、アクアフェスのスタート地点として選ばれたのは、AQUAを生産する関東自動車岩手工場から数キロメートルのところを流れる北上川流域の支流、和賀川だ。

3月20日、朝8時を過ぎると、白い雪に包まれた盛岡駅前ロータリーに大型観光バスが2台現れた。そして、アクアフェスのキットや資料が置かれた受付机の周囲にアクアブルーのビブスを来た人たちが少しずつ集まってきた。

トヨタ関係者や電通スタッフ、取材陣などが挨拶を交わすと、盛岡駅からの一般参加者もぽつぽつと集まってきた。参加予定者からの欠席の連絡も入る。盛岡駅から約80キロメートル、クルマで約1時間ほどのところにある沢内銀河高原ホテルへ直行する参加者もいる。しかし、あいにくの雪模様で「大丈夫だろうか」「雪で立ち往生している参加者もいるのではないか」「フェスを楽しむ参加者の笑顔は撮れるかな~」と、不安もよぎる。

そもそも、1年の半年を雪に覆われるこの地域で、わざわざ休日に、雪まみれになりながら環境学習や環境活動をしにくる人はどれだけいるのだろうか…。そんな思いを抱きながら、バスに乗り込む。

粉雪舞うなか、バスは市街地を抜けて郊外へと向かっていった。途中何度か川を横切る。橋の上から凍った川面が見え、駅周辺とは違う本当の寒さに身がすくむ。AQUAの生産地からスタートしたいのは理解できるが、寒い時期に寒いところでスタートしたら、今後の参加者募集にマイナスになるのではないか。一瞬、思い入れが強すぎて失敗するメーカーのパターンが頭をよぎった。

しばらくして、杞憂だったことがわかった。バスは沢内銀河高原ホテルに到着し、カラフルなスノーウェアを身にまとった人の群れが目に入ってきた。見渡すかぎりの雪原のなか、ホテルの入り口からは集まった人たちの活気があふれていた。

『ソーシャルがわからない企業に明日はない(2)』に続く。

※ソーシャル・リテラシーとは
リテラシー(literacy)は、「言語により読み書きできる能力」を指し、従来「識字」と訳され、メディア・リテラシー(メディアの情報を読み解き活用できる能力)などとして使われてきた。1990年代からは、コンピュータの利用技術に社会の関心が高まると同時に「情報リテラシー」と言われることが多くなった。さまざまな言葉と組み合わされて「ある分野の事象を理解・整理し、活用する能力」一般を指すこともある。ソーシャル・リテラシーもそのひとつで、ツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアを理解し、活用できる能力を指す。ソーシャルメディアの双方向性という、ウェブとは異なる特性を理解し、その機能を活かしたコミュニケーションができているかどうかが問われる。企業活動においては、生活者の声に耳を傾けて商品開発やコミュニケーションデザインができているかどうか、その結果、O2O(オンライントゥオフライン)で、具体的な購買行動を喚起できているかどうかなどが問われることになる。

人間会議2011年冬号
『環境会議2012年春号』
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