究極のユーザー目線 「欲しい!」思いを具現化できる社内体制にカギ――スノーピーク

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世界一ユーザーに近い会社

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スノーピークは2011年、年中無休のキャンプ場を併設し、店舗と工場とオフィスが一体化した、広大な敷地面積を誇るヘッドクオーターズに移転した。地上2階、地下1階のヘッドクオーターズは、ロケーションが良くアクセスしやすい2階部分がユーザースペースとなっており、1階を見下ろす形でオフィススペースや工場などバックヤードの見学もできる。

「スノーピークはメーカーブランドであると同時に、コミュニティブランドでもあります。真のオーナーはユーザーです」と山井氏。

コミュニティブランドとしての意識は、1998年に数年間不振が続いていたビジネスを回復させるためのきっかけづくりを目的にスタートしたキャンプイベント「The Snow Peak Way」で生まれた。第1回のイベント開催時、「製品が手に入りづらい」「店舗の品揃えが悪い」「製品の価格が高い」といった声が、「参加したユーザーほぼ全員から聞かれたんです」と山井氏。

そこで2000年に大規模な流通改革を決行。従来からの問屋との取引を全廃し、小売り店との直接取引に切り替えた。また、2003年には直営店の出店を開始。店舗にはスノーピークスタッフを常駐させ、対面接客を充実させた。

当時アウトドア市場は下降傾向にあったが、スノーピークは2000年から10年間、毎年平均約7 %の成長を、2011年の新社屋移転後は年率20%の成長を維持している。

大改革の効果は売上だけではない。「ユーザーから、『自分たちが意見を伝えれば、スノーピークは真剣に聞いてくれる』と思ってもらえたことは大きい。ユーザーとの間にインタラクティブなコミュニケーションが生まれるようになりました」。

1998年から18年間、毎年開催している「The Snow Peak Way」には、毎年5000人もの人が参加する。

1998年から18年間、毎年開催している「The Snow Peak Way」には、毎年5000人もの人が参加する。

キャンプイベントは18年間続けており、毎年約5000人が参加する。ヘッドクオーターズにキャンプに訪れるユーザーを加えると、年間1万人を超えるユーザーとコミュニケーションを取っている計算になる。

「ありがたいことに、ユーザーの間では“世界一ユーザーに近い会社”というイメージが浸透しているようです」。

自身も年間60泊ほどキャンプを楽しむという山井氏は、「キャンプをしている時に真のニーズが発見できる」と話す。同社の名前を世界に知らしめることになった世界1998年から18年間、毎年開催している「The Snow Peak Way」には、毎年5000人もの人が参加する。

120 Marketing最小・最軽量・高出力のストーブも、「胸のポケットに入るサイズのストーブが欲しいよね」という雑談が発端で開発された。「スノーピークでは、フィールドでのディスカッションから製品が生まれるんです」と山井氏。

本社にキャンプ場が併設されていることには、そうした理由もあったのだ。

文明社会の疲れを癒したい

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山井氏は、「アウトドア市場は世界中すべての国にあるわけではありません」と話す。マーケットがあるのは高度に発展した先進諸国だ。

文明社会は便利である一方、人間を自然から乖離させ、疲れさせる。「アウトドアは、人々を自然の中へ連れ出し、人間性を回復させてくれる。文明化が進む先進国は、もっと自然とのバランスを取るべきだと思います」。

そうした状況下、山井氏は、スノーピークの提案内容を今後はより「原始的」なものにすべきだと考えている。例えば1988年当時のオートキャンプでは、調理はツーバーナー式の調理台で行っていた。「ストレスの度合いが、ツーバーナーでも癒せる程度だったからです」。

しかし現在は、スノーピークユーザーの多くが「焚火台」を使用しているという。「これはかなり象徴的なこと。より原始的な手法を取らなければ癒しを得られないほど、ストレス強度が増してきているのだと思います」。

いまスノーピークは「アーバンアウトドア(都会の真ん中で自然を楽しむ、より気軽なアウトドア)」を標榜した新規事業に力を入れている。現在のキャンプ人口は約750万人で、これは日本の総人口の約6%に相当する。山井氏は「本当に自然を必要としているのは、非キャンパーである94%の人たち」と言い、彼らをターゲットとした「アーバンアウトドア」を確立したいと考えている。

父である先代からスノーピークを受け継ぐ時、「自分にしかできないアウトドアビジネスを」と考え、同社をアウトドアレジャーメーカーから「オートキャンピングブランド」へとリニューアル。以来、アウトドアをライフスタイルと捉え、発信し続けている。

父である先代からスノーピークを受け継ぐ時、「自分にしかできないアウトドアビジネスを」と考え、同社をアウトドアレジャーメーカーから「オートキャンピングブランド」へとリニューアル。以来、アウトドアをライフスタイルと捉え、発信し続けている。

「我々のコアバリューは人間性の回復です。『スノーピークが提案するものを受け取ると、癒される』というイメージを定着させたいですね」。アーバンアウトドアに事業領域を広げるブリッジ役として、アパレル製品の開発にも力を入れる。「アウトドアでもアーバンでも着られる、スノーピークにしかできないカテゴリーの服」がテーマだ。

山井氏は、「人口の94%を動かすには、新たな仕掛けも必要」と話し、業界外の企業とのパートナーシップにも力を入れるという。

2014年12月には東証マザーズに上場、新規株式公開以降は異業種からの引き合いも増えている。ただし、「どんなに事業内容が拡張しても、我々のコアバリューが『人間性の回復』という軸からぶれることはありません。自然と人間とをつなぐことをミッションとして、オートキャンプとアーバンアウトドアからなる事業構造を確立していきたいと考えています」と決意をみせた。

山井 太(スノーピーク代表取締役社長)
1959年新潟県三条生まれ。明治大学を卒業後、外資系商社勤務を経て、86年に父が創業したヤマコウに入社。アウトドア用品の開発に着手し、オートキャンプのブランドを築く。96年の社長就任と同時に社名をスノーピークに変更。


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