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新しいテクノロジーを「広告クリエイティブ」に取り込むために何が必要なのか?

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【前回記事】「デジタル領域の広告クリエイティブにこそ「手触り」が求められている」はこちら

最近、広告プロモーションにVR(バーチャルリアリティ)やAI(人工知能)といった新しいテクノロジーを活用するケースが増えてきた。なぜ広告は新しいテクノロジーを欲し、それはどのように企画のなかで機能するのか。ヤフージャパンのプログラマー向けイベント「HAKC DAY」の「VRバレンタイン」など、テクノロジーを活用して話題を集めた企画を担当する、博報堂アイ・スタジオのクリエイティブテクノロジスト Qawasaki(カワサキ)さんに話を聞いた。

博報堂アイ・スタジオ フューチャークリエイティブラボ クリエイティブテクノロジスト Qawasaki 氏

——「クリエイティブテクノロジスト」という肩書きは初めて聞きました。どのような役割なのでしょうか。

広告制作のなかでテクノロジーに関する肩書きは、一般的には「テクニカルディレクター」となります。ただ、それだと技術面だけを担当するイメージ。最近は企画からプロダクト開発、イベントの実施、公開後のPDCAのマネジメントまで、クリエイティブ全般に関わることが増えたので、「テクニカルディレクター」ではなく、より広義の意味で作り物に向き合う職種が良いと考え、「クリエイティブテクノロジスト」という肩書にしてもらいました。

——新しいテクノロジーを活用した広告キャンペーンが増えています。Qawasakiさんはどのように日々新しいテクノロジーを吸収し、広告に活用しているのでしょうか。

大きくは2つの活動から、テクノロジーについて学んでいます。1つ目は、僕が所属するフューチャークリエイティブラボでの研究開発業務。この組織は、博報堂アイ・スタジオの研究開発部門で、毎年研究テーマを決めてチームで取り組んでいます。2015年度は、「IoT」「機械学習ディープラーニング」「コンピュータービジョン」「ビジュアライズ」の4つでした。

また、もう一つの活動として、「HACKist」にも参加しています。これは、博報堂アイ・スタジオ内の有志の集まり。業務時間外を利用して、自分が作りたいものをチームや個人で制作しています。

新しいテクノロジーをすぐに広告に活用しても、当初予想していた結果が得られない可能性があり、リスクも大きい。日々進化するテクノロジーに対応しながら、それを最大限に生かし、新しい体験を生み出すために日々、研究開発しています。

——ヤフージャパンのプログラマー向けイベント「HACK DAY」での「VR バレンタイン」でも、さまざまなテクノロジーが活用されていると聞きました。

そうですね。「VR バレンタイン」はVRのヘッドセットを付けると、タレントの篠崎愛さんからバレンタインのチョコレートが貰えるというもので、博報堂と一緒に開発しました。体験者の視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚の「5感のHACK」がコンセプトに設定され、実現するためにプロトタイプ制作を繰り返し、色々なテクノロジーを使いました。

映像は美しさにこだわり、4K画像でのVRを実現しました。音声はヘッドホンを通してではなく、実際の耳で聞いているように感じられるバイノーラル録音を採用。事前に70種類ほどのニックネームが登録され、体験者の名前を入力すると、篠崎さんがニックネームで呼んでくれるというサプライズも仕込みました。

また、篠崎さんがVR上で体験者に近づくと香水が本当に匂ったり、風を出して吐息を演出したり、実際に彼女の部屋でふたりきりで話をしている感覚を味わえる仕掛けにしています。最後は、篠崎さんがチョコを置いてくれます。そして体験者がヘッドセットを外すと、目の前に本物のチョコが置いてあるという流れです。体験者からは、「こんなに映像がきれいで香りまで感じたVRはなかった」という感想が多かったです。

——テクノロジーに関心がない人も楽しめる企画ですね。最近はVRを活用する広告も増えてきました。こうした新しいテクノロジーを広告に取り入れる必要性はどこにあるのでしょうか。

10年ほど前から、生活者の情報の入手経路がテレビからWebへと変化しました。さらに、今ではメインデバイスがPCからスマートフォンになりました。ただ、それらは20インチや6インチの画面の世界。そのディスプレイから出ることで違う表現の可能性が見えてきます。

広告の目的は、企業や商品の記憶を生活者に残すこと。そのためには、新鮮な印象を生活者に与えることが必要で、VRなどのデバイスも新しい体験が求められ、その結果として賑わっていると思っています。

次ページ 「テクノロジーを広告に導入するときの注意点はありますか?」へ続く