編集協力/大阪芸術大学
実践的な学びの場をつくる
「みらいへの手紙」の各ストーリーは福島県民の実話に基づいており、登場人物にはモデルが存在する。いずれもいまだ完結しない物語であり、現在の福島の“光と影”の両面を伝える。「震災からの5 年間で、多くの方が復興の“ 復” =復元する作業を進めてきました。一方で、“ 興” =興す・楽しむという部分は抜け落ちていると感じていました」と、福島ガイナックス 浅尾芳宣さんは話す。内堀知事、福島県クリエイティブディレクター 箭内道彦さんと共に、このプロジェクトを進めた。
10本の物語は、箭内さんが震災以降、ツイッターや新聞で見つけて集めた福島の人たちの話やつぶやきから選んだ。「監督やディレクターとエピソードごとに、何を伝え、どう見せるべきかを話し合いました。最初に、箭内さんと知事から“ 良くも悪くも今の福島を伝えてほしい”という話があり、僕もスタッフも何度も福島へ足を運びました。当初は答えが見いだせなかったのですが、制作を進める中で見た人が例え1本でも共感や反発も含めて何かを感じたり、考えてもらうきっかけになればいい、と思っています」。
浅尾さんが2015年に福島ガイナックスを設立した目的は、若手アニメーターを育成すること。そして従来のようなビジネスではなく、コミュニケーションツールとしてアニメの可能性を広げていきたいと考えたことにある。福島ガイナックスに併設するミュージアムでは、アニメ制作の裏側を紹介する展覧会「アニメ作法展」を常設。子どもにアニメの原理や制作について教えるワークショップを開催する。
「絵が描けないからアニメの仕事ができないと思っている人って、大学でも実は多いんです。でもアニメは映画と同じで、いわば総合芸術。絵を描く人だけではなく、物語を考える人、音楽をつくる人、時代考証をする人…と、さまざまな知識や技術を持つ人たちが集まって完成させるもの。制作のプロセスではものづくりだけではなく、人との関わり方も学ぶことができます。アニメとは本来間口の広いもので、若い人たちにその可能性を感じてもらいたい。いま福島では種まきを始めたところです」。
浅尾さんは福島での活動を続ける一方、2017年に新設される大阪芸術大学アートサイエンス学科の准教授として現在の映像学科より移籍する。アニメーションで培った知見を生かし、さらなるクリエイティブの可能性を切り拓く浅尾さんの試みは、福島と大学で続いていく。
あさお・よしのり
1968年福島県生まれ。「福島ガイナックス」「吉祥寺トロン」代表取締役、
「ガイナックス」取締役・プロデューサー。映画、アニメーション、PVなどの
映像作品をはじめ、映画祭や展覧会といったイベントを企画・プロデュース。
幅広いジャンルで手腕を発揮する。現在、大阪芸術大学映像学科准教授
を務める。
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