メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×

4000点を越えるコピーからキュレーション「大仲畑展mini」の見どころを特別インタビュー

share

数えきれないヒット作を生み出してきた、コピーライターの仲畑貴志氏の作品展「大仲畑展mini ~コピーライター仲畑貴志のぜんぶのいちぶ~」が、5月10日から13日まで東京・南青山のギャラリー5610にて開催されている。仲畑氏に展示会の見どころを聞いた。

—今回、展示されているコピーは仲畑さんご自身が選んだのではなく、親交のある方たちがキュレーターとなって選んでいます。そのスタイルにした理由は?

仲畑 貴志 氏

これまで仕事をしてきた48年間で4000以上のコピーを生み出してきたんですよ。でも、ギャラリーのスペースには限りがあるから、その中から絞り込まないといけない。そうであれば、いまの時代にコミットしている人たちの目線で選んでもらい、再検証してもらおうということです。選んでもらうというアイデアは、TCCの幹事たちが出してくれた。僕がつくったコピーはすでに様々な場で紹介されているので、違う角度で見せた方がいいよね、と。

—ご覧になって、「このコピーが選ばれたか!」と驚かれたものもあったのでは?

もちろん、あった。人それぞれなのが、面白いところ。マーケットの多様さも分かるわけじゃない。リリー・フランキーさんと、佐々木希さんが選んだものとではずいぶん違うよね。

—佐々木希さんが、坂本龍一さんの「戦場のメリークリスマス」のコピー「異常も、日々続くと、日常になる。」という社会性を持ったものを選ばれていて驚きました。

ディープなコピーだよね。人というのは、みんないろんな活動をしていて、いろんな見られ方をされている。商品としての彼女と、その実態は違っていたりする。演歌歌手が本当はロックをやりたいと言っていたりすることもあるわけで、そんな違いが見えるところも面白いね。

—今回が初の個展と聞いて驚きましたが、そもそも開催することになったきっかけは?

最初はTCCの東京コピーライターズクラブ2015年度Hall of Fame(コピーライターの名誉殿堂)記念のトークショーを開催しようって話だった。でもTCCの人たちが「仲畑さんだから、もっと人が呼べるだろう」と、違う箱を探してくれたの。そしたら、ギャラリーの方が僕のことを知っていて、好意で1日の料金で1週間借してくれた。そこから、何をやろうかということになり、展示会の話が出てきた。

—展示会のタイトルは「大仲畑展mini ~コピーライター仲畑貴志のぜんぶのいちぶ~」です。「大」であり「mini」、そして「ぜんぶ」であり「いちぶ」という、相反する考えが込められています。

これも、スタッフが提案してくれた。僕のこれまでのコピーの中から選ぶ必要があったから、大きくと言いたいところもあったけど、参加者の期待を裏切らないようにしたかったという意図もあったんだと思う。

普通の広告の展覧会であれば完成物だけが展示されるが、今回は来場するターゲットがプロのコピーライターなので、完成する前の段階の手書きの提案書やメモも展示されている。サントリーのトリスのプレゼン資料は、銀行がオマケでくれるメモ用紙に手書きで書いたもので、実際につかったものそのまま。汚い字で10枚ぐらい書いて、企画を通している、というのが面白いね。

—完成前のプロセスが見られるのは、とても貴重ですね。

もう一つのアイデアは、展示会に解説者を入れたことだね。一緒に仕事をしてきた中村禎、葛西薫、副田高行がコピーを解説してくれる機会がある。今回の展示会のスタッフは素晴らしくて、僕が考えつかないことをやってくれたので感謝しています。

—来場者には展示会のどこを見てもらいたいですか?

ギャラリーでの展示は5月13日までだけど、同時にTCCクラブハウスでも5月31日まで展示会を行っています。クラブハウスはよりディープな内容で、実際の仕事に加えて、過去のインタビュー記事やエッセイなどが膨大に見られる。エッセイというのは、そこに視点があるから、その視点を持っている人間がこういうコピーにいたるということを、見る人がつなげることができれば、発見があると思う。セットで見るといい。

—先日、TCC賞が発表されました。最後に、仲畑さんが最近のコピーワークをご覧になって感じていることを教えてください。

はっきりいって、ここ10数年、日本の広告表現はピークもアベレージも低迷していた。ただ、この2、3年で希望が見えてきたと思う。表現に躍動感が出てきたので、これからを楽しみにしている。

広告はどうしても経済性の影響をもろにうける表現。したがって、経済性が低いと萎縮して、広告もコピーも刺激的なものが出てこない。表現者は社会の価値観からコピーを検証する。経済が低迷しているとチェックも厳しくなってどんどん縮こまっていく。僕ら表現者はクライアントの影響を受け、クライアントは日本経済の影響を受ける。それらは全部リンクしている。

その抑圧が、いま解除され、表現が伸び伸びしつつあるということ。やはり表現は、もっとエキサイティングになったほうがいい。

「2015年度Hall Of Fame顕彰記念 大仲畑展mini ~コピーライター仲畑貴志のぜんぶのいちぶ~」

日時:2016年5月10日(火)〜5月13日(金)11時〜18時
場所:Gallery5610(東京都港区南青山5-6-10 5610番館)

「大仲畑展mini —そのまたmini展—」

日時:2016年5月10日(火)~5月31日(火)月~土曜日13時~20時
(日曜休み。平日の一部に休みがあり、詳細はTCCのWebサイトで確認ください。)
場所:TCCクラブハウス(東京都渋谷区神宮前5-7-15)