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PRパーソンこそカンヌへいくべき!?電通PR 根本陽平カンヌレポート1

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PRプランナー 根本陽平
株式会社電通パブリックリレーションズ (電通 PRプランニングセンター所属)

2008年、電通PR入社。現在は、電通のPR専門セクションに所属。グループ横断・動画専門チーム「鬼ムービー」にも参画。徹底したPR視点からのプロモーションプランニングを手掛ける。PRをテーマに企業や成蹊大学や立教大学、CNET Japan Live等で講義。主なメディア掲載に、朝日新聞「ひと」など。
Global SABRE Awards(「世界のPRプロジェクト50選」)、WOMMY AWARD、PRWeek Awards Asia、日本PRアワードグランプリなど受賞多数。

 

「PR会社の人もカンヌにくるんですね」と言われますが、2011年に名称から“Advertising”がはずれ、「CANNES LIONS International Festival of Creativity」となってからは、公範なコミュニケーションの先端事例が集まっているということで、むしろPRパーソンこそ現地で学ぶべきことが山ほどあると思っています。(ちなみに今年は、例年に比べPRパーソンやさまざまな肩書き、職種の方、クライアントさんも多いようです!)

ということで、私からはPRの観点で気になった作品をレポートしていきます。今年のPR部門の日本審査員である博報堂ケトルの橋田さんにも話を聞くことができたので、その内容を交えながらまずはPR部門から紹介していきます。

サプライジングアイデアとリザルトとのコネクション

今年のPR部門で重要視されたのが、“サプライジングアイデアとリザルトとのコネクション”でした。どうしても昨年の受賞作に似てきてしまう傾向がある中で、「見たことのないサプライジングなアイデア」と、リザルト(結果)に対して「このアイデアならこのリザルトで納得」という、ある種“全世界的に腑に落ちる”みたいなことが必要だったようです。

ここ数年PR部門でずっと言われてきていたPublicity(Awareness)は当然で、それによって達成されるPerception change 、Behavior changeは起こせたかということは、ますます重要になってきたということですね。

それをクリアしている上で、さらにサプライジングアイデアとリザルトが今年は重視されたということです。Public Relations屋としては素晴らしい状況でありつつ、身の引き締まる思いでございます・・・。

さて、それでは作品をみていきましょう。

女性の胸がダメなら・・・

PR LionsのGold、「Manboobs」。

プロモ部門などでも受賞していますが、乳がんの早期発見を啓発する非営利団体・MACMAの受賞作。女性の67%は自己検診を行っていないけれど、平均1日110回携帯電話をチェックしているということで、そんな携帯にいかに登場することができるか?というお題に秀逸に応えています。

SNSでは、医療系の内容でも女性の胸(乳首)は表示できないため、表示OKな男性の胸を使おうというセルフチェック動画を公開。自分でできる乳がんのセルフチェック方法はネット上でも数多く紹介されているけれど、この動画はシンプル且つ見たことのない強烈なインパクトを残すものになっていて、再生は勿論、やってみる人が続出し、議論を巻き起こしました。しかも、おそらくコンパクトな制作費である点もアイデアの強さを感じます。

オーガニック食品の魅力を本当に届けたかったら・・・

続いては、チェック必須のGRAND PRIX 、「THE ORGANIC EFFECT」。

スウェーデンでオーガニック食品販売のパイオニアで有名なスーパーチェーンであるコープの受賞作。農業環境の影響ではなく、消費する人に焦点を当てたキャンペーンで、普段はオーガニック食品を食べていない家族が、2週間オーガニック食品に切り替えると、尿から農薬がほとんどなくなった、という様子を動画化。視聴回数は3500万を超えて、現状のサステナブルではないオーガニック農業についてのイメージを変え、期待を高めました。何より、スウェーデンでは、オーガニック食品の売り上げが伸び、コープは過去20年間で最高の売り上げを記録したということで、シンプル且つサプライジングなアイデアが強いリザルトと結びついていたというものかと思います。

もし糖分の摂取をおさえたかったら・・・

続いてGold、「BEES CAN FIND SUGAR WHERE YOU LEAST SUSPECT ITNÁŠ GRUNT」。

世界保健機関(WHO)が2015年に新ガイドライン発表するなど、世界的に注目の集まる遊離糖の摂取量に関する問題ですが、今年は、糖の摂取を抑える取り組みのエントリーが非常に多いです。その中でもインパクトの強いのがこちらのチェコのヘルスフードチェーンの「Grunt」の取り組みです。

チェコの人はWHO基準の糖分の3倍を摂取していて糖尿病患者が急増している中、蜂を利用して視覚化。その蜂はなんと、花ではなく加工食品から糖分を採取しているという・・・。蜂は糖分15%以上のものから蜂蜜をつくれちゃうらしいのですが、このネタ自体も情報価値があり、強烈な気づきがあります。競合の前でサンプリングするなど着火の仕方も上手く設計されており、サイトのトラフィックが30%、店舗来店が10%あがりました。

企業側の意図しない食べ方が世間で推奨されていたら・・・

そして、日本からのブロンズ受賞作品2点のうちのひとつです。
「10 MINUTES NOODLE」

*公式サイト

なかなか日本の作品は、課題からアイデアまでを説明するのにグローバルで理解を得にくい複雑なコンテキストなものが多い中で、「10分どん兵衛」は日本でもしっかり実績を挙げている上に海外で評価されたことが素晴らしいと思いました。

世界共通で何十年も昔から変わらなかったカップ麺の待ち時間を、ソーシャルの反応をこまめにみて、企業がオフィシャルに対応したことで行動変容までさせるという、“時代に呼応したリアクション芸”と“企業としての勇気”があってこそ成せる芸当が評価されたようです。

カンヌからの絵葉書」を人気連載中の電通・尾上さんの取り組みということで、連載の方もお見逃しなく!ですね。