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八木敏幸が語るディレクター道「ディレクターに必要なのは粘り強さと客観性」

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映像クリエイティブに関心の高い方々へ向けた「チャレンジャーdeないと」。第2回目に登壇したのは、サントリー BOSS「宇宙人ジョーンズ」シリーズをはじめ数多くのCM制作を手がける八木敏幸監督。スペシャルゲストに映画『幕が上がる』など映画やテレビで活躍中の女優、秋月成美さんをお招きした。前回に引き続き、足立茂樹さん(イー・スピリット)がモデレーターとなり開催された。


左から、イー・スピリットの足立茂樹社長、女優の秋月成美さん、八木敏幸監督。

関西独特のノリをスタイリッシュに仕上げた「Hot Pepper」シリーズ

今日では誰もが一度は目にしたことがあるCMを多数作り上げている八木敏幸監督。今回のトークでは、どのような道のりを経て監督になったのかを語ってもらった。

監督がこの世界に飛び込んだのは大学卒業後。関西にあるプロダクションで数年間プロダクションマネージャーを経験し、その後、博報堂へ出向という形で1年間プランニングを学ぶ機会を得る。出向から戻ったのち、プロデューサーに。「今では考えられないほど予算が少なく、経費削減のためにディレクターをひとりで兼任していました。そこでディレクションの面白さに気づき、本格的にディレクターになろうと決意しました」。

その後、プロデューサーからディレクターになりたいと申し出た八木監督だったが、会社からの返答はノー。そのままふたつの立場を兼任し、CMの制作を手掛けていた。プロデューサーとディレクター。相反するものをひとりで抱える苦悩が、監督の原点にあった。そして1年後、ディレクターとして独立。 

関西独特の「ノリやオチ」を好まなかった八木監督は、そういった関西のメインストリームとは異なる、スタイリッシュなテイストを目指したという。

そんな中、クリエイティブディレクター山崎隆明さんと制作したリクルート「Hot Pepper」創刊時のアフレコのシリーズCMが、大きな話題を呼ぶ。

今から約15 年前に放映された「Hot Pepper」シリーズは、洋画のワンシーンのような映像に、全く関係のないセリフを関西弁で吹き替えたものである。関西弁のCMでありながら、監督の目指す洗練された簡潔さと両立しているのが印象的だ。放映が始まって以来、そのシュールさと卓越したセンスが、人々に大きな衝撃と笑いをもたらし、長年愛されるシリーズとなった。

このCMが世に送り出されるまでの苦労を、八木監督はこう語った。「実はこの映像は、このCMのために撮り下ろしました。当初は本物の洋画を借りたかったのですが予算が合わず、誰もが見たことあるようなワンシーンを研究して、さも実在する映画のように撮っています」。

しかし撮影の時点で、吹き替えるセリフは未定だったという。撮った映像を編集し終え、そこから「Hot Pepper」シリーズの肝と言える、アフレコの収録を行った。「セリフはすべて山崎さんが考えて山崎さんがしゃべるんです。面白いものができるまで800テイク以上録りました。何日間もねばって、やっと形になりました」。こうして誕生した「Hot Pepper」シリーズは、八木監督にとってひとつの大きな転機に。映像はディレクターである八木さん、音声はクリエイティブの山崎さん、という完全分業制にも関わらず、2人の力が掛け合わされて傑作に昇華したという、自身でも“目からウロコ”的作品だったという。

次ページ 「CMの中に時代性や人生を描き込みたい」へ続く