周年イヤーの迎え方 — 合併から10周年 大日本住友製薬

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2015年、大日本住友製薬は合併10周年を迎えました。グローバルスローガン制定、役員・社員による社会貢献活動、テレビCM放映などを手がけたコーポレートガバナンス部の石川誠氏(コーポレート・コミュニケーショングループマネージャー)に、周年事業の目的についてお話を伺いました。

大日本住友製薬
2005年合併

2005年、医薬品企業である大日本製薬と住友製薬が合併して誕生。医療用医薬品事業と動物薬、食品添加物などを扱う。企業理念は「人々の健康で豊かな生活のために、研究開発を基盤とした新たな価値の創造により、広く社会に貢献する」。実現のために、精神神経領域やがん領域のほか、再生・細胞医薬分野などでの研究・開発を手がける。

 

ブランディングの担い手は社員

2015年10月から始まったテレビCMでは企業名を押し出すのではなく、力強い言葉のナレーションで大日本住友製薬の今後の方向性を印象付けた。

10周年記念サイトでは多田正世社長による挨拶のほか、新たに制定したグローバルスローガンの概要、10周年記念マークの概要などを公開。

この10年で大日本住友製薬の事業構造はグローバル化し、がん領域への参入、治療薬のない疾患分野や再生・細胞医薬分野における研究開発など大きく変化しています。高齢化社会の進展により市場のニーズが変化していることもあり、合併10周年にあたる2015年をコーポレートブランディングに着手する1年としました。

周年は今まで取り組んできたことを土台としながら、未来を見つめ、今後会社としてどのようなことを守り、そして変えていくのかを改めて整理し、宣言できる機会です。特に業界全体の枠組みが大きく変わってきた企業では、同社のように周年を機にコーポレートブランドのさらなるイメージ向上を図るケースが多く見られます。

そもそもコーポレートブランディングとは、企業として社会に対する「宣言」や「約束」をし、社員がその考え方や理念を製品やサービスにも反映し、実行していくことで築かれるものです。そこで今回の周年事業ではコーポレートブランディングを遂行する担い手となる「社員」自身を会社のコアなファンにすることを意識した設計とした点がポイントです。
まず着手したのが、社会に対する「宣言」としての役割を果たすグローバルスローガンの刷新です。大日本住友製薬グループの医薬事業4社の経営陣によるディスカッションを重ねる中で浮かび上がってきたキーワードをもとに5案を作成。社員から投票を募った結果、「Innovation today, healthier tomorrows」というスローガンが制定されました。

このスローガンで注目しておきたいのが、tomorrowの後にあえて「s」をつけているという点です。石川氏によれば、「常に社員が自らの変革(=Innovation)を追求しながら、新たな発想や高い研究開発力により革新的な新薬を社会に届けることで、患者さんやそのご家族がより健やかに自分らしく(=healthier)過ごせる日々を実現したい。つまり、多くの皆さんの明日を創っていきたい」という思いが込められているとのこと。

広告を通じて生まれた「責任感」

コーポレートブランディングにおいて最も難しいとされているのが、洗練されたスローガンのニュアンスや文脈を内外ともに伝え、実行に移していくという段階です。一朝一夕で社員の行動を変えられるわけではなく、スローガンに対する理解や共感を得る必要があります。その手法は多種多様ですが、大日本住友製薬ではテレビCMを制作しました。その中で登場するのが「限界というスタートラインに立て。」「命のために、できることすべてを。」といったセリフの数々。力強い言葉が印象的です。

テレビCMは認知獲得を目的とするケースが多く、会社名を強調しがちです。ところが今回はあえて最後まで社名を出さず、自分たちが提示したスローガンの中にある「変革」とは何か、どれほどの意気込みや意図で社会に対して貢献していくのかを映像で表現しました。石川氏は「まずは社員、そしてそのご家族に、自分たちが本気で変わっていくのだという姿勢を伝えたかった」と説明します。

コーポレートガバナンス部の石川誠氏と筆者。大阪市中央区にある本社にて。

結果的に社員はもちろん、医療関係者の皆さんからも反響が大きかったようです。周囲の期待値が高まるとともに、社員の中に良い意味での緊張感と責任感が生まれるという相乗効果もあります。今や「変革」という言葉は世の中にあふれていますが、実践は決して簡単とは言えません。まさにこれからが勝負です。

このほか10周年事業としては、社会に対する感謝をダイレクトに表現するために社会貢献活動にも参加しています。今の経営状況や今後の変化への強い意志を表明するために、スローガン制定とテレビCM制作、そして社会貢献活動に施策を絞り込んだと言います。その上で会社としての姿勢を提示することも、社会および社員への強いメッセージを伝える周年事業のひとつのあり方かもしれません。今後の同社の変化、躍進に注目していきたいと思います。

これまでの社会貢献活動に加え、役員・社員参加型の社会貢献活動を2015年10月から1年を通して実施している。写真は岸和田市の「フクロウの森 再生プロジェクト」の現場から。
全国にある事業所近隣での清掃・美化活動などにも取り組む。
<総括>
周年は5年、10年おきにやってきます。経営状況を踏まえ、会社としての特徴、イメージが明確ではない施策は逆効果となることもあります。情報があふれているからこそ、自社らしさ、自社としての強い意志を綺麗な言葉だけではなく、意図やニュアンスも含めて強くメッセージとして打ち出すことが社内外ともにファンを増やし、ブランド力を高めていく肝なのかもしれません。

文/根本絢帆 リンクイベントプロデュース エンジニアリングユニット マネジャー

ねもと・あやほ 2005年リンクアンドモチベー ション入社。リンクイベントプロデュース創業 時から参画、数多くの周年事業、理念浸透プロ ジェクトに従事。イベントを通じた企業のイン ナー・アウターブランディング、人の心を動か す「場創り」を支援する。

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