お客さまがメディアになる時代 — マクドナルド、西友、DEAN & DELUCAが考える思わず発信したくなる体験とは?

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参加者
・日本マクドナルド 上級執行役員 マーケティング本部長 足立 光氏
・西友 マーケティング本部 バイス・プレジデント 木村 真琴氏
・ウェルカム マーケティング&コミュニケーション ジェネラルマネージャー 菅野幸子氏
・「JAPAN CMO CLUB」 CMO 加藤希尊氏(セールスフォース・ドットコム マーケティング・ディレクター)

写真左から木村 真琴氏(西友)、足立 光氏(日本マクドナルド)、加藤希尊氏(「JAPAN CMO CLUB」CMO)、菅野幸子氏(ウェルカム)

商圏ビジネスが直面するメディア環境の課題

メディア環境の変化は特に実店舗を擁し、商圏を持ったビジネスを展開する、小売り・サービス業に大きな課題を投げかけている。集客プロモーションを始めとしたマーケティング手段を大幅に見直さざるを得ない状況は、多くのマーケターにとって課題のタネだ。

「JAPAN CMO CLUB」の活動方針や狙いを、参加者に向けて説明する加藤希尊氏。

1月20日に開催された「JAPAN CMO CLUB」の15回研究会には、全国で約2800店舗を展開する日本マクドナルド、「DEAN & DELUCA」などのブランドを展開するウェルカムといずれも実店舗が事業の柱となる小売企業のマーケターが参加をした。

会の冒頭で「JAPAN CMO CLUB」CMOの加藤希尊氏は、約2年にわたる「JAPAN CMO CLUB」の活動の狙いを説明。マーケター同士が交流できる場を通じて、ブランド間のコラボが実現するなど「日本のマーケターの知の集積」をコンセプトのひとつに活動してきた、本CLUBの構想が具体化しつつある現状に触れた。

西友の木村真琴氏は「以前はテレビCMと折込チラシがあれば十分に機能したが、今は折込チラシが、かつてほどのリーチ力を担保しえなくなっている。スーパーマーケットのビジネスは商圏が決まっており、商圏の外にあるお店の情報が届いたところでお客さまは足を運ばない。商圏内におけるプロモーションを担っていた折込チラシに代わる手段の模索が必要であり、特にスマートフォンやSNSなど、新しいコミュニケーション手段の活用が不可欠と考えている」と話した。

西友 マーケティング本部 バイス・プレジデント 木村 真琴氏

また木村氏は「顧客自身が発信者となって周囲に情報が拡散していく、情報環境の変化にも対応していく必要がある」とも考えているという。この意見に対して、日本マクドナルドの足立光氏は「情報環境の変化に対応し、マスマーケティングの方針を大きく変えた」と説明。これまで通り、テレビCMは出稿しているものの、商品発売時のテレビCMを開始する前から、ソーシャル上での話題の盛り上がりを醸成するシナリオ設計を重視しているという。足立氏は「広告だけでなく社会ゴト化、身内ゴト化してもらうためのコミュニケーション戦略が必要」と話す。

スーパーらしからぬBGMがネットで話題に

実店舗を持っているからこそ提供できる「体験」は、日本マクドナルド、西友、ウェルカムと3社ならではの強み。議論の中では、この店舗での「体験」がSNS上での話題の盛り上がりにもつながっていくという共通見解が見えてきた。

例えば、西友では店内で流しているBGMを大幅に変えたところ、Twitter上で話題になり、新聞記者も取材に来るなど、話題が広がったという。具体的には、一般的なスーパーマーケットが流すような定番の音楽ではなく、選曲をInterFMに依頼。しかも、その選曲も定期的に変える取り組みをしている。「スーパーマーケットのような業態では、お客さまが店舗に来てから商品購入を決めるケースがほとんど。長く滞在したくなる、心地よい環境づくりはビジネス上、重要であるということ。さらに店舗スタッフは1日中、BGMを聞くことになるので従業員の働く環境をよくすることの2つが目的で約3年前に始めた」という。

もちろん「なぜ、スーパーであんなにカッコイイ音楽を流しているの?」と来店客に疑問を持って、話題にしてもらうことも大きな狙いの一つだ。さらに、その話題を目にした人が実際に来店したくなる動機づけも狙っている。

日本マクドナルド 上級執行役員 マーケティング本部長 足立 光氏

足立氏も店舗体験とSNSの親和性に着目した施策を展開。「1日にマクドナルドに来店いただく約150万のお客さまの1%の方がツイートをしてくださるだけで、1万5千件。その規模を考えれば、SNSは非常に大きなメディアと言える」と足立氏。商品パッケージをグローバル統一のものから、日本オリジナルデザインに変更。思わず写真を撮ってSNSにアップしたくなるデザインの工夫をしているという。

新メニューやキャンペーンのネーミングにも、SNS時代の工夫がある。以前は英語やカタカナを用いることが多かったが、最近は「名前募集バーガー」、「必勝バーガー」、「マクドナルド総選挙」など漢字を多用する方針に転換。「Twitterに投稿したり、LINEで友達に送ったりする際、カタカナの長い名前だと、打ちづらかったり、文字数がオーバーしてしまう」と足立氏。ユーザー目線に立った、拡散したくなる仕組みが商品設計にまで及んでいるのだ。そして、その商品・コミュニケーション設計の根底には「お客さまがマクドナルドに求める価値は、一種の背徳感。その価値を理解したうえでの企画を考えている」という。

人と人とのつながりの中でブランドを育てる

ウェルカム マーケティング&コミュニケーション ジェネラルマネージャー 菅野幸子氏

今回も研究会で恒例となっている、各社のカスタマージャーニーの発表も行った。1日に約150万人が来店するという日本マクドナルドの足立光氏は「マクドナルドには、マーケティングの基本となるターゲティングが存在しえない」と解説。

一方、同社と真逆の展開をしているのがウェルカムだ。同社は「DEAN & DELUCA」の他、「GEORGE’S」、「CIBONE」、「TODAY’S SPECIAL」など主に食とデザインを軸に複数の店舗ブランドを展開する。「代表の横川を中心に社員自身のライフスタイルやライフステージの変化に合わせて、自分たちの暮らしに必要なブランドをつくってきた」と菅野幸子氏は話す。

そのため、どこにでも出店をするというのではなく、自分たちが行ってみたい、暮らしてみたいとおもう地域へ赴き、その土地を基点に新たな食文化や生産者、食材との出逢いを拡げていく。なぜなら、規模が拡大していくと、これまでつきあいのあった小さな生産者との供給量が対応できず、付き合いが途絶えてしまうという課題もあったからだ。

一人ひとりの社員が自ら感性を磨き、情報を集めて企業同士ではなく、人と人との関係でつながっていく中に「DEAN & DELUCA」が提供できる価値がある。1ブランドで他店舗展開を図るのではなく、世界観や領域の異なるブランド自体を増やしていく戦略の背景には、そんな考えがあるのだという。

次ページ 「社会ゴトと身内ゴト、発売前の露出量が売上を左右する」へ続く

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