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“消費者の魚離れ”をテクノロジーでどう解決するか? 博報堂アイ・スタジオとフーディソンが共同プロジェクト

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魚をもっと気軽に、身近な存在としておいしく食べられる未来をめざす「未来のお魚屋さんプロジェクト」。博報堂アイ・スタジオとフーディソンとの協業プロジェクトとして、魚を「知る」「食べる」体験をつみ重ねていく取り組みがスタートしている。

10月7日には、体験型イベント『もっと理解したい、魚と米のこと。』が東京都内で開催された。魚に関する知識が充分に消費者へ伝わっていないことから、旬・安い・おいしいにとどまらない情報を伝える場の第一弾として、鮮魚売り場などで使うための、魚の骨が透けてみえる販売促進ツール「スケルギョン-SEEfood glass-」のプロトタイプ発表が行われた。

そこで今回のプロジェクトで中心的な役割を果たしたメンバーである、博報堂アイ・スタジオとフーディソンからそれぞれ2人に、プロジェクトのきっかけや、魚の消費における問題点、「未来のお魚屋さんプロジェクト」が目指す未来について聞いた。

左から、フーディソン 代表取締役CEO 山本徹氏、マネージャー 小倉康孝氏、博報堂アイ・スタジオ 取締役常務執行役員 沖本哲哉氏、広告新商品開発室 鈴木香菜氏

「未来のお魚屋さんプロジェクト」とは何か

—「未来のお魚屋さんプロジェクト」は、どのようなきっかけで始まったのでしょうか。

沖本:以前よりフーディソンさまから「魚屋さんや漁師さんが持っている情報と、消費者に届く情報の格差が大きいことが魚離れの要因になっているではないか。そして、それを埋めることさえできれば、消費者と魚との接点が増えるはずだ」という課題の共有を定期的に受けていた中で、当社からソリューションとしてご一緒に研究開発していきませんか、とご提案したことがきっかけです。

実際に、水産庁が発表した「平成28年度 水産白書」によると、食用魚介類を1人あたり1年間に消費する量は2001年の40.2㎏をピークに減少し、2015年度には前年より0.8㎏少ない25.8㎏になるなど、魚離れが起きています。

また、経済産業省の商業統計によると、1972年には5万6165軒もあった鮮魚小売店いわゆる「街のお魚屋さん」は、2015年には1万1155軒にまで落ちこんでいます。それによって、「旬の魚は、なぜおいしいのか」といった基礎知識や調理方法など、これまで鮮魚店から伝えられてきた魚の情報の流通機能が失われてしまっている可能性があります。

そのような中で、私たちの総合広告会社直下の制作会社として、テクノロジーを活かしたユーザー体験の提案ができれば、これらの課題を解決ができるかもしれないと考えました。もともとWebやデジタルは、企業が持っている情報をいかに生活者に伝えるための装置です。我々が持つテクノロジーとクリエイティブを武器にして、コミュニケーションが設計できるはず。

—たしかに、昔は商店街にひとつはお魚屋さんがあった気がしますが、最近ではあまり見かけなくなってしまいました。「スケルギョン-SEEfood glass-」のアイデアは、どのような経緯で生まれたのでしょうか。

鈴木:働きざかりの世代は、調理に時間をかけるのが難しいこともありますが、丸魚の見た目によって、「なんとなく面倒くさそうだ」と感じて敬遠しているケースも多いのではないでしょうか。

中身がわからないことが原因であれば、「透けて見えたら状況が変わるのではないか?」と仮説を立てました。私自身も小さい鯖などをさばいた経験はあるのですが、それ以外の魚はさばき方から調理の仕方までわからないため、切り身や調理済の料理を買ってしまっていたのです。実際にフーディソンさんが運営する鮮魚店のsakanabaccaの方にヒアリングをすると、「骨の形や場所が見えることで、さばき方のポイントがわかりやすくなったり、食べる際に綺麗に食べられるなど得られるメリットが多い」との反応をいただきました。そこで、魚が消費者に渡る鮮魚売り場で、中身が見えたらいいのではないかと「スケルギョン-SEEfood glass-」の開発にいたったのです。

「スケルギョン-SEEfood glass-」。魚をかざすと骨格が見ることができ、魚をさばく際のガイドになる。販売者がショーケースの魚の説明を分かりやすく行うための販促ツールとしての活用を想定している。現在は魚に関するデータベースと照合させることで、魚の骨格を出しているが、将来的にはディープラーニングによって骨格を表示させていく予定。

—フーディソン側では、博報堂アイ・スタジオの提案にどのような感想を持たれたのでしょうか。

小倉:僕はもともと広告会社で勤務していまして、実は鈴木さんと同じ部署の方と一緒に働いていた時期がありました。会社を離れてからも、定期的に自分の仕事について伝えていて、一緒にできることがあったらサポートしてほしいとお願いしていたのです。

そこで、今回の提案をいただき、まさに僕たちの危機感が反映され、漁師さんや卸の業者さんとの情報格差を踏まえた企画でしたので、即決で進めることにしました。

今回のプロジェクトで僕は、魚を取り扱う専門家とテクノロジーを活用したコミュニケーション作りの専門家といった、まったく畑の違う専門家同士を繋げる橋渡しのような役割を担当しました。

そして、今までは魚屋さんが口頭で伝えているばかりに伝わりづらかった魚の情報を、より効果的に体験として届けられる仕組み作りを目指しました。

例えば、魚にたずさわる職人は、さばくことを「身をはがす」と表現します。魚を切って分割する感覚ではなく、骨から効率よく身をはがすことを目指している。そのため、おいしく食べるためにも大切なのは、骨格を把握しておくことなのです。そういった面もふくめて、「スケルギョン-SEEfood glass-」のコンテンツに落としこんでいきました。

体験型イベント『もっと理解したい、魚と米のこと。』の様子。フーディソンのスタッフが実際に、魚の知識に基づいて魚をさばいた。完成した寿司はイベント参加者にふるまわれた。

—魚屋さんや漁師さん、卸をされている業者さんは、ITをあまり積極的には取り入れられていないイメージがあります。そのあたりで大変さを感じることはなかったのでしょうか。

山本:難しさを感じるところも確かにありましたが、いっぽうで便利かつ収益につながるツールに関しては、みなさん使いこなしているという印象があります。たとえばLINEを業務の過程で使っている方がかなり多い。魚の発注をしたり、漁師さんや卸との間でグループが組まれていたりします。そもそも、漁で使う魚群探知機もIT機器ですからね。みなさん利便性が高くて、用途に最適化されてさえすれば、問題なく利用しています。

次ページ 「肉との戦いに、負けっぱなしではいられない」へ続く


お問い合わせ
株式会社博報堂アイ・スタジオ
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