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アートギャラリーが販売する、美術品としての「りんご」って?

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東京 青山のスパイラルで12月に開催されたアートフェア「spiral take art collection 2017『蒐集衆商』」展。その中のとあるブースに「りんご」が売られていた。

りんご?それとも本物さながらの美術作品?ともう一度よく見てみるが、紛れもなく本物のりんご。

販売を行う鳩ノ森美術 代表の戸嶋一博さんによれば、このりんごは名産地として知られる秋田県増田町のもので、同ギャラリーで2017年より美術品のひとつとして扱っている。「はとのもりんご」の名で年限定500箱を販売し、箱には作者(生産者)のサインとシリアルナンバー入りで発送する。一箱8つ入りで、定価は5000円。

スパイラル「蒐集衆商」展での販売の様子。アートのようにりんごを展示。箱には生産者のサインとシリアルナンバーを書き入れて発送する。

「増田りんごの最高級サンふじは、一口食べればりんごの概念が変わるほど美味しいにもかかわらず、農協からは十把一絡げで買いたたかれてしまいます。いいものには、いいものの価値づけをして販売したい。それは、アートでも、りんごでも同じです」。

背景には、前職での経験がある。あるオーナーが所有する美術品を手放すことになり、一斉に売り出したが、数百点の美術品に買い手がつかず、結果、処分されることになってしまった。その時、「きちんと価値づけができなければ、いいものを後世に残すことはできない」と胸に刻まれた。

そして、秋田のりんご農家に縁があったことをきっかけに、日本全国の農作物にも同じ状況があることに気づいたという。

美術品も美食も人の心を豊かにするという意味では同じ。またギャラリーの顧客である富裕層には美食家が多く、親和性があると考え、増田りんごの扱いを開始した。

アートギャラリーでりんごを売っていることに対する反応はさまざまで、「お客さんがこれは何なのか?と自問自答し、マグリットの絵に出てくるりんごではないかなど、意図を超えた反応が返ってくるのが興味深かった。デュシャンがレディメイドを発表した時は、こんな反応だったのかもしれません(笑)」。

2017年の販売分は好評につき完売。現在は、2018年の予約販売を行っている。

フライヤー。ロゴはじめ制作物のデザインは、グラフィックデザイナーの貞弘和憲さんが担当。