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CMOの役割とはパーパスを浸透させる「チーフ・ストーリー・テラー」-Marketo Marketing Nation Summit2018

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2018年4月29日から5月2日の期間、米・サンフランシスコにて開催されたMarketo主催の「Marketing Nation Summit2018」。本サミットで講演を行ったMarketing Insider GroupのCEOである、Michael Brenner氏に未来のCMOの役割について話を聞いた。
Michael Brenner氏はリーダーシップ、マーケティングに関して数多くの講演を行っており、2017年のThe Huffington Postのトップビジネススピーカー、ForbesのCMO Influencerの一人に選ばれている。また著書に『The Content Formula』がある他、近日中に『The Empathy Formula』の刊行も控えている。

―現在のマーケターを取り巻く環境をどのように見ていますか。

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Marketing Insider GroupのCEOである、Michael Brenner氏。

マーケティングの世界は今、大きな変革に向けた過渡期にある。デジタルテクノロジーの浸透、消費者行動の変化、そして社会・経済環境の現実に向き合うマーケターは誰もがFEAR(恐れ)を抱いている。しかし今、マーケターはFEARに立ち向かい、組織が達成しようとするゴールに向けて、新しい役割を認識し始めなければいけない。

世界が大きく、変わる中で多くの企業がいまディスラプションに直面している。企業がモノを製造し、販売を始めた初期からマーケティングは存在していたが、今求められているマーケティングは、全く別のものへと変化している。
従来通りのマーケティングを実行していても機能しないにも関わらず、企業はマーケターに従来通りの活動を実行することを期待する。しかし、それでは一向に結果が出ないので、マーケターは大きなストレスにさらされているのが現状だ。

これまでマーケターはCEOからの指示を受けて動く、受け身の仕事であったと言える。経営目標に基づき、マーケティング目標が組み立てられるが、そこにはマーケティング発の戦略性はなかった。しかも広告・プロモーションを制作・実行するのは広告会社であり、彼らとのプロジェクトを円滑に進める、プロジェクトマネージャー、コミュニケーターという役割にとどまっていた。しかし、いまマーケティングに真の戦略が求められている。

―具体的にマーケターはどのように変わればよいのでしょうか。

マーケターのトランスフォーメーションに際して、私が重要と考える概念は「Purpose」と「Empathy」の2つだ。
マーケターは、これまで自社が売っている商品・サービスについて伝えることを仕事してきたが、今はいくら広告・プロモーションをして、商品について語っても、消費者の心には届きづらくなっている。しかし、企業が商品を製造する背景には、社会に対して提供したい価値、つまりはPurposeが存在しているものだ。そもそも、企業の成り立ちまでさかのぼれば、その設立の背景には、何かしらの社会課題を解決したいというPurposeがある。このPurposeを見つけ、語り、理解・共感を促すのがマーケターの仕事と言えるだろう。

そしてマーケターはPurposeとその背後にあるストーリーを消費者に“サービス”として届けるだけでなく、従業員に対しても同様のサービスを提供する必要がある。
従業員も消費者と同じ一人の人間だ。顧客視点に立ち、消費者のEmpathyを生み出すスキルを持ったマーケターだからこそ、従業員のPurposeに対するEmpathyも醸成することができる。組織において、Empathyのカルチャーを広め、そのカルチャーのオーナーとなることが、これからのマーケターの役割だと言えるだろう。

なぜ消費者と同様に従業員に対しても“サービス”を提供する必要があるのか。それは企業と従業員の契約関係は変わってきているからだ。いま従業員はブランドネームや報酬のためではなく、Purposeに共感できる企業で働きたいと考えるようになっている。環境問題、社会問題解決に積極的に働きかけるプログラムを実行する企業が増えているのも、Purposeを明確にし、従業員の共感を醸成することも目的の一つだ。

―Purposeはどの企業にも存在するものなのでしょうか。それともマーケター自身がそれを創り出す必要があるのでしょうか。

あらゆる企業にPurposeは存在する。歴史が長く事業内容が変化をした企業であっても、創業当時の裏話などに、それを見つけるヒントがあるはずだ。

―従業員に対してPurposeを伝え、広める活動においても消費者に対すると同様にデジタルソリューションの活用可能性はあるのでしょうか。

私が今、注目しているソリューションに「LinkedIn Elevate」、「EveryoneSocial」などの従業員向けアドボカシープラットフォームがある。
こうしたプラットフォームは社内においてPurposeを浸透させる目的でも活用できるが、Purposeが浸透した後は、企業や製品をよく理解している従業員がつくるコンテンツを社外向けのコミュニケーションにも活用するために使うことができる。
具体的には、例えば「誰か子犬をもらってほしい」「○○さんに子供が生まれた」などの社内に対してだけ発信するコンテンツはこの社内限定とするが、一方である従業員が消費者の問い合わせに答えた内容など広く社外に発信した方が有益なコンテンツは外部に共有することもできるプラットフォームだ。

Purposeを理解した従業員一人ひとりのコンテンツを作る力を、活用する。例えばMarketoは従業員の3割は、既存の従業員からの紹介だと聞く。一人ひとりの従業員のコンテンツ発信力が高まれば、例えば人材採用においてもポジティブな効果を期待することができるのだ。
またMarketoのCEOである、Steve Lucas氏はCMOとしてSarah Kennedy氏を招聘した際、人事の領域まで責任を持つよう指示をしたと聞く。従業員向けアドボカシープラットフォームを管轄するのは人事の役割だが、そこにCMOが関わるのはPurposeの共有という役割に期待してのことだと思う。

―他の企業で従業員向けのコミュニケーションプログラムに力を入れている企業とは。

Adobe、DELL、GEなどは成果を上げている企業だと思う。

―これからのマーケターの役割を一言で表現するとどのような言葉になるでしょうか。

私はPurposeを社内外に伝え、共感を醸成する「チーフ・ストーリー・テラー」になるべきだと考えている。Purposeを社外のみならず従業員にも浸透させることで、従業員一人ひとりの力をマーケティング活動、あるいは人事採用活動などに生かすことができるからだ。