今年、その連動企画のひとつである「ミラノ ジーニアス2019」に、コンペで予選を勝ち抜いた大阪芸術大学の3名の学生の作品が展示された。
ミラノ・デザイン・ウィークでプロと並んで作品を展示
ミラノサローネでは多くのインテリアメーカーやプロダクトデザイナーが新作を発表するほか、この時期にはフォリサローネと呼ばれるミラノ市街での展示会やインスタレーションも数多く開催される。サローネ開催期間中は「ミラノ・デザイン・ウィーク」と呼ばれ、世界中からデザイン関係者をはじめ多くの人が集まる。
その期間に開催されたイベントのひとつが、「ミラノジーニアス2019」だ。大阪市と姉妹都市であるミラノ市が創造力や芸術力を発信することを目的に、イタリア文化会館と大阪市で開催したものである。その取り組みの一環として、「Design Made in Osaka」と題し、ミラノ・デザイン・ウィーク期間中に、ミラノ・トルナート地区の展示会場で展示する作品の公募が行われた。
この公募で、大阪芸術大学デザイン学科の3名の学生が入選を果たしたのだ。グラフィックデザイン、プロダクトデザイン、空間デザイン、それぞれの授業の中で制作した作品を出品した。本公募のテーマには日本らしさが掲げられていたが、学生たちはそこについては特に意識はしていなかったものの、着想のユニークさと表現の繊細さが高く評価され、イタリアの審査員たちに選出されたという。今回選ばれたのは、3名の学生以外はすべてプロのデザイナーだったというから、そのレベルの高さが伺える。
グラフィックデザインコースを今年卒業した黒木渉さんは、「滅虫(Endangered Insects)」という絶滅危惧種昆虫に焦点を当てた9枚のポスターを制作。さらに、昆虫のデータも載せた730ページの本をまとめ上げた。
プロダクトデザインコースに在籍する松本陸さんは、草木の茂る緑に飛び込む行為をイメージした「bush」と言う名のソファを制作。このソファは座る姿勢に自由を与え、居心地の良さを探す、楽しさと実用性を兼ね備えている。松本さんは昨年、自分でサローネに足を運び、そこで得た大きな感動と憧れの思いを作品に込めたという。
空間デザインコースの内藤るなさんは「Exist Chair」と題し、錯覚の面白さを活かし、見る人を惹きつける椅子を制作した。ものが「ある」というよりも「いる」ような存在感を放つ作品である。
3月に大阪市役所での事前展示を行い、その後ミラノに行くまでの1ヶ月間は、学生たちにとって初の海外展示だったこともあり、苦労の連続だった。事前には主催者、現地展示会場との調整も複数あり、意思の疎通が難しかった上に、自身で準備するものも多数あったが、学生たちは大学側のサポートを受けながら会場で展示作品準備を進めた。またミラノでは自ら展示をした後、授賞式に参加。
会期中は作品の前に自ら立ち、慣れない英語で作品を説明するなど、これまで経験したことがないことに追われる毎日だったという。デザイン学科の道田健准教授は「学生たちにとっては準備などで大変だったけれど、刺激に溢れた時間を過ごすことができ、多くのものを得る機会になったと思います。帰国後の彼らは充実感に溢れ、頼もしさが増しました。一人でも多くの学生がこのような経験をしてもらえたらと思います」と話している。
編集協力/大阪芸術大学
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