ハウス食品、パナソニック、ライオンが考える イマドキ共働き家族のインサイトとは?

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女性の就業率の高まりにともない、共働き世帯が増加を続けている。労働環境の変化や価値観の多様化とも重なり、現代を生きる家族、特に子育て中の家族については、従来的な価値観、消費傾向で捉えることはできなくなっている。ジェイアール東日本企画の「イマドキファミリー研究プロジェクト」がその研究成果を紹介しながら、消費者に届くコミュニケーションのヒントを探った。

(左から)ジェイアール東日本企画 コミュニケーション・プランニング局 シニア・ストラテジック・プランナー イマドキファミリー研究プロジェクト プロジェクトリーダーの高野裕美氏、ライオン コミュニケーションデザイン部 CXプランニング室長 兼 デジタルコミュニケーション開発室長の大村和顕氏、パナソニック コンシューマーマーケティングジャパン本部 コミュニケーション部 担当課長の高須泰行氏、ハウス食品 事業戦略本部 食品事業二部長の宮戸洋之氏。

利便性や機能性の一歩先を意識した価値訴求が重要に

9月25日、宣伝会議セミナールームにてジェイアール東日本企画(jeki)が「イマドキの共働き家族の実態・インサイトを捉える-届くコミュニケーションの発見・創造のヒント」を開催した。イベント前半では、jekiの「イマドキファミリー研究プロジェクト」でプロジェクトリーダーを務める高野裕美氏が登壇し「共働き子育て家族の生活戦略 〜イマドキママパパの実態・価値観〜」と題する講演を行った。

ジェイアール東日本企画 高野 裕美 氏

高野氏は、イマドキの共働き家族の実情について、専業主婦世帯との比較をした調査を紹介。同プロジェクトの研究成果は、jekiのオウンドメディアである「恵比寿発、」内の連載「イマファミ通信」でも掲載されている。

高野氏は、「夫婦でオールシェア」「スキマ時間は自分でつくる」「思考のアウトソーシング」などのキーワードとともに、家族の生活を分析。こうした調査や研究の結果を踏まえ、現代の家族のインサイトを捉えるためのヒントとして、いくつかのポイントをあげた。

そのひとつが、「身体的時間短縮から頭脳的時間短縮へ」。子育て家族にとって「時短」は普遍的なテーマとしてあるが、作業時間の短縮だけでなく、夕食のメニューを考える時間などを短縮する“思考のアウトソーシング”もニーズが高いのだという。また、これまではレトルト食品をはじめ、調理をせずにそのまま食べられる食品を食卓へ出すことは「手抜き」と捉えられることもあった。

しかし、現代はその部分の「罪悪感」は希薄化してきていることから、高野氏は「罪悪感の払拭という考え方のコミュニケーションはイマドキではない。利便性や機能性の一歩先を意識した価値の訴求が必要」と話した。

“簡単・便利”は基本的条件、成熟市場で求められるのは“感動”

満員となったセミナー当日の様子

イベント後半では、「イマドキの共働き子育て家族の実態・インサイトを捉える-届くコミュニケーションの発見・創造のヒント」と題したパネルディスカッションが行われた。パネリストとしてライオンの大村和顕氏、ハウス食品の宮戸洋之氏、パナソニックの高須泰行氏に、jekiの高野氏を加えた4名が登壇した。

冒頭では、各社がイマドキ家族を意識して取り組んでいる事例を紹介。ライオンの大村氏は時短を意識したコミュニケーションとして、食器用洗剤「CHARMY Magica(チャーミーマジカ)」と圧力調理が手軽にできる「リード プチ圧力調理バッグ」の事例について解説。また主婦が苦労する献立決めをサポートするために、同社が提供しているチャットボットのサービスについても触れた。

ハウス食品 宮戸 洋之 氏

食事に関する「時短」では、ハウス食品の宮戸氏がダウントレンドにあったシチュー市場の活性化に寄与した商品「シチューオンライス」の事例を紹介。この企画は、シチューの売上の低迷という課題に直面したことから生まれたもの。当時、消費者を対象に調査をしたところ、クリームシチューはご飯のおかずという位置づけではなく、シチューを食卓に出す場合にはもう1品、おかずをつくらなければいけないというインサイトがあることを発見。そこで1品で完結する「シチューオンライス」というメニュー提案を行うに至った。

シチューの新たな食シーンを開拓したことで消費者からも「救世主」という声が寄せられたと話し、宮戸氏は「簡単・便利は基本的条件。成熟した市場では感動や驚きが必要になる」と指摘した。

続いてパナソニックの高須氏は、同社において共働き夫婦のライフスタイルの調査を行っていることを紹介。高須氏は、2017年から行っている「家事シェア」キャンペーンなどの広告企画も、ライフスタイル調査の結果がアイデアの拠り所になっていると話し、「トレンドを追うのではなく、トレンドをつくるというスタンスがないと今の消費者には刺さらない」と述べた。

理想と現実を、どのようなバランスで表現するか

各社の事例から高野氏は、「CHARMY Magica 酵素+(プラス)」シリーズの“ほったらかし洗い”について、「夫婦で家事を共有する“オールシェア”というニーズはあるが、必ずしも食器洗いを男性に押し付けたいわけではない。時短やシェアを通じて目指しているのは家族の時間をつくることであり、イマドキ家族のインサイトを捉えている」と話し、それぞれがニーズに応じたコミュニケーションを実行していると話した。

パナソニック 高須 泰行 氏

共働き世帯の増加によって仕事・家事・育児など女性の負担が増え、女性が自分のために使うことができる時間は減少傾向にあると感じている大村氏は、商品開発やコミュニケーションにおいて、「効果的・効率的に家事を済ませ、家族の時間をつくることに対するニーズは高い。これは他社の商品や事例も含めて感じている」と話した。

こうした身体的時間短縮の事例に加えて、高須氏も高野氏があげたキーワード「思考のアウトソーシング」、すなわち頭脳的時間短縮の重要性を指摘した。同社の洗濯機においても洗剤自動投入型の商品の評価が高いことに触れながら、「いかに頭を使わずに、効率的に家事を楽しいことへシフトできるかという視点がカギになっている」と話した。

家族のスタイルが多様化する中、広告の中での家庭の描き方も難しくなっている。セッションの中では、コミュニケーションにおける工夫、配慮についても話が及んだ。

コミュニケーション上における男性の表現の仕方について大村氏は、「男性に理想を押し付けるのではなく、家事シェアの先には夫婦の自由な時間があることを伝えるコミュニケーションを意識している」と説明。「CHARMY Magica」のテレビCMでも、夫婦の現状をイメージとして見せることで、家事について一緒に考えたり話題にするきっかけづくりになることを期待しているという。

また男性が家事に参加することは、同時にこれまで女性が悩んでいた“家庭と仕事の両立”の問題に男性も直面する時代が来ることを意味している。「CHARMY Magica」のCMでは「どちらか一方ではなく、お2人のための商品です、ということを見せるようにしている」と大村氏が語るように、商品を主役にするのではなく、夫婦が会話するシーンを意識して描いている。

現実的すぎても理想を描きすぎてもNG 広告で描く男性と女性の家事分担の今

コミュニケーション表現について高野氏は、「実際はママがひとりで悪戦苦闘していたとしても、現実だけを広告で表現してしまっては身もふたもない。とはいえ理想を追求して、現実とかけ離れるのも意味がない。ちょうどよいバランスがどこにあるのかは、私たちも探っている」と、その難しさに触れた。

ライオン 大村 和顕 氏

今後の展開と課題について、大村氏は「インサイトは時代によって変化する。その変化を見誤れば、非常に大きな間違いにつながることもある」と指摘。ライオンでは広告配信の効率化ではなく、生活者インサイトの発見・理解のために、DMPへの投資も進めていると話した。

今回のパネルディスカッションに参加した3社は、いずれも100年以上の歴史を持つ企業。消費財、家電、食品と異なる業界で歴史を重ねながら、それぞれが各時代の生活者の課題に向き合い、それを解決する手段を提供してきた。

議論の中では、各社ともに現代の共働き世帯を意識したコミュニケーションを展開していることから、企業間でコラボレーションすることも有効なのではないかという話も出た。イマドキファミリー研究プロジェクトの研究結果や、当日の議論を通じ、参加者だけではなく登壇者にとっても実りのあるセミナーとなった。

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