【週刊】中国から配信! 新型コロナ、マーケティングへの影響(2月25日更新)

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刻一刻と変わる、新型コロナウイルスにかかわる社会状況。
神谷製作所の神谷準一氏が、中国・上海にある同社の支社からの情報をもとに週刊で現在の新型コロナウイルスに関する情報環境、さらに日本でマーケティング実務に携わる人に役立つよう、その情報を読み解いてレポートします。

クリエイティブPRを手掛ける神谷製作所の上海支社「GoodNewsFactory Shanghai Co., Ltd.」では、新型コロナウイルスによって大きく中国の生活が変わる中、「中国における生活者の行動・習慣・価値観」の変化から、新しく生まれる社会のニーズを捉え、それに応えることが社会貢献のひとつであると考えています。

また国内で新型コロナウイルスによる感染者が増え続ける中で、「中国の変化や対策が日本においても役立つのではないか。いち早く中国での先例を、経済的な打撃を受けつつある日本のマーケティングでも役立ててもらえたら」という想いも込め、『社会サキヨミレポート:新型肺炎に関する中国国内動向とマーケティング活動への示唆』を作成し、 2020年2月3日より中国に所在する日系企業や、日本企業のマーケティング部に対し定期的にレポート配信を行っています。

本レポートは、中国における情報環境や市場動向・生活者ニーズに精通する「GoodNewsFactory Shanghai」のスタッフが現地で収集した情報をもとに、過去の類似事例のスタディから、1カ月先、2カ月先、さらには2020年通年での「生活の景色の変化」を予測したものです。本記事では、このレポートのサマリーをお届けします。

【KEY TOPICS】

〇武漢での「重症」診断率が22%に低下(2/16)
〇「日本における新型肺炎流行」が全国規模で話題に(2/16)
〇科学技術省が抗マラリア薬が新型肺炎に有効と発表(2/17)
〇Didiが一億元を投入、車両への車内防護幕を整備(2/18)
〇新型肺炎患者の初の解剖が行われる(2/19)
〇日本から新型肺炎検査キットの送付が発表される(2/20)
〇山東省の刑務所で200名の集団感染が発覚(2/21)

上海市内でパジャマ姿でリモートワークしている人々、噂では上半身はバシッと、下半身はパジャマ姿という人もいるとか。出社する人は医療用マスクなどで完全防備。
上海地下鉄2号線内の様子。少しずつ戻ってきている地下鉄乗客ですが、公共交通の利用を禁止している企業もあり、まだまだ上海市民の公共交通利用は限定的。上から2月10日~、2月17日~の様子。

〇上海では一般企業においては徐々に在宅勤務などで活動が再開。2月17日からは多くの学校でもオンライン授業を取り入れており、「リモート」が一気に生活に普及。

「地方から戻ってこられない」「14日間の外出制限に該当」の社員も多い中、徐々に「在宅勤務」での活動が普及し、Alibabaの「釘釘」・Tencentの「企業微信」のDL数が急増。「釘釘」はいち早く「Online School」機能を無料化し、学校ではほぼデフォルトユースの状態になってます。

〇一部エリアでは感染者の発生件数が「ピークアウトした」との認識が出ており、警戒態勢は維持しつつも、安心感を取り戻す風景も見られている。

2月21日には、「14の省/自治区で前日の発症者がゼロ」、他各都市でも「前日比で減少」などの報道が出ており、生活者も「ピークを越えた可能性」を感じ始めている。ただし、同日夕刻には山東省の刑務所での200名の集団感染が発覚するなど、依然として「2月末までが見極めに必要」という論調が多い。

〇日本への「感謝」が高まり、生活者の対日感情はかつてないほど良好化。

日本からの支援物資や寄付へのSNSでの感謝が高まり、2/16には外務省局長が異例の日本語での感謝の意を表明するまでに。一方で、同日にクルーズ船での感染者が285人と発表され、「日本で新型肺炎が流行」とする記事や投稿、SNS上の反応が一気に急増。2月20日に新浪で「リアルタイム日本感染マップ」が公開され、話題に。そんな中でも検査キットの支援が発表(2月20日)されることなどから、日本への感謝や敬意の念が肌感覚でも感じられる。

【中期的な中国の意識変化・マーケティング予測】

〇2月末にかけては「今日どうするか・明日どうすればよいか」が生活者の関心事だが、3月以降、「来週・来月・再来月」に関心の対象がシフトしていく可能性。

2月半ばまでの新型肺炎流行期間は、いわば「春節中・春節直後」という特殊期間であり、「非日常の中での非日常」。それが、企業活動が再開し、学校が始まり、「日常への影響」を実感し始めているのがこの2月下旬というタイミング。

徐々に「(新型肺炎の)情報疲れ」が起き始める頃であると同時に、続々と3~4月のイベントの中止・延期が発表され、「4月以降、週末や夏休みが登校日になる」と教育部が告知する省も出てくることで、関心の対象が「今をどうするか」から、「来月、再来月どうするか」と、少し先の未来にシフトしていく。

〇「网络谣言(Fake News)」の影響から「データ」重視の意識が増加。IT企業がそれに応える情報環境を整えていることで、生活レベルでの「データ活用」行動が強まっていく。

度重なる「デマ」報道、それに振り回される実感を経て、「情報」への視線に変化が起きつつある。今、新型肺炎関連の情報で生活者が注目しているのは、これまで以上に、「データ(数据)」。「〇〇が予防に効くらしい」「郊外の〇〇区で感染者が出ているらしい」という不確定な情報よりも、「〇〇件の症例のうち〇〇件で治癒」「〇〇区では〇〇人の感染者と〇〇人の感染疑惑者」というデータを信用するようになっている。

これは「情報への不信感」とも、「データ情報環境の広がりとデータリテラシーの向上」とも取ることは出来るが、いずれにおいても、2020年の生活者の情報意識へ影響を与える要素として捉えるべきといえる。

〇中長期で注目される「新たな市場の芽」、“リモートエコノミー”

在宅勤務/オンラインスクールは、新型肺炎流行の収束後は。利用率は減っていくものの、既に必要なアプリや環境を整えた生活者が多く、「習慣」としてこれまでよりも根付いていくことが予想される。

日常の行動の多くを占める「学校」「会社」の位置づけの変化は、単にビジネスチャットアプリ市場だけでなく、他の多くの市場に影響を与える可能性が高い。例えば、「職場としての自宅」となった場合、求められる家電の機能が変わる。自動車の存在意義が変わる。スキンケアやメイクの使われ方が変わっていく。

また中国において、ホワイトカラー層で7割超が経験者とも言われる「副業」(実態としては「信頼できる関係性の中での業務シェアリング」と言える)も、休業中の会社が多いことから更に水面下で浸透しており、特に専門技能を持つホワイトカラー層の「人間関係」へのインサイトも変化していく。

技術進化により、「リモート」が実現可能だったことに気が付いた社会/生活者の、新しい行動に注目。

【その他の注目の話題】

〇「テック/AI」での課題解決が進展、急速に実装化(「AI戦疫」)。

感染者データのAI分析による新型肺炎の検出システム試運転(清華大学)、地下鉄乗車履歴の収集による「感染者候補の洗い出し」(深圳市)、「マスク非着用者検出技術」「AI体温測定」(云天励飛)など、この2週間ほどで「テック/AI活用での感染対策」の社会実装が政府/民間を問わず進展。微博での反応は「良い試み」「早く自分の市でも導入してほしい」と好意的であり、これを機にテックの更なる浸透が進む様相。

〇新型肺炎流行後初となる大型ECキャンペーンに5万社が参加。

TMallが17日からスタートした新型肺炎流行後の初の大型ECキャンペーンとなる「暖春战疫」に、5万の企業が参加(双11は約100万社参加)。大きく「爱心助农农产品」「健康防护」「应季百货」の3つに分けられており、特に「爱心助农农产品」は通常のEC価格の6割引とされており、ハッシュタグ「#爱心助农#」は21日時点で2861万の閲覧数となっている。

〇武漢市民への「精神的なサポート」が民間主導で立ち上がる。

独自コンテンツで人気の制作会社「新世相」と媒体社「中国日報」が共同で「#晚安短信湖北计划#」を発表。湖北省居住者が、24日以降毎晩10時に全国から投稿された応援メッセージを短信で受け取れる。湖北省出身の芸能人「朱一龙」「袁姗姗」「贾玲这」も「晩安大使」としてメッセージを送信。物理的な対策/支援から、精神面での支援の始まりの一歩。

〇「漢方」への注目の増大。

広東省で開発・実験されていた漢方薬「肺炎一号方」が「成功」し、17日までに「221人の患者を救った」とされ、漢方への注目が集まっている。「湖北省では漢方利用率が75%に急上昇」などの話題も見られており、科学的根拠は不明だが、中高年齢層で「漢方薬」「漢方系サプリ」への信頼性が高まっている様子が感じ取れ、今後の市場の拡大も期待されている。

〇「自己犠牲」「貢献」の表現方法に疑問の声。

2月12日に微博にアップされ話題となった、河南省から武漢に入った4名の(勤務に集中するための)「坊主頭」の女性看護師。当初はこの行動への称賛が多かったが、今週に入り、「女性の身体を宣伝ツールにするな」「なぜ女性だけ坊主にしている」などの批判が急増。17日に当事者たちがインタビューで「自ら行ったこと」と主張したことで批判は収まったものの、「報道の正しさ」、また、「貢献の宣伝」への批判的な向きが出始めていると言える。

※本レポートの次回、公開は3月3日(火)を予定しています。

著者プロフィール

神谷製作所
代表取締役
神谷 準一

2004年博報堂PR戦略局、博報堂ケトルを経て、2016年クリエイティブPRの会社「神谷製作所」を設立。広告クリエイティブ×PRを掛け合わせたキャンペーンを得意とする。国内外の広告賞受賞多数。

 

清水 誉

慶応義塾大学法学部法律学科卒業、関西学院大学大学院経済学研究科前期博士課程修了。専門は東アジア経済、中国労働経済。1988年ブリヂストン入社、広州事務所代表、北京事務所代表、1999年博報堂入社、広東省広博報堂広告有限公司総経理を歴任。現在上海在住、GoodNewsFactoryShanghaiビジネスデベロップメントマネジャー。中国ビジネスのスペシャリスト。

 

Macy Ishii

2018年までの約10年間、広告会社のストラテジックプラニング職として様々な業種の企業のマーケティングを支援。うち5年間は上海に駐在し、リージョナルヘッドクオーターの立ち上げ/グループ会社の経営管理/支援を行うとともに、現地での生活者トレンドの研究組織の設立/推進を行う。2019年から神谷製作所中国事業顧問。

 

張 暁暁

中国生まれ、中国育ちの中国人。デジタルマーケティング会社で日系企業向けインバウンド/アウトバンド⽀援を行う中、より広い領域で広告を学びたいと言う思いから上海博報堂に転職し、中国系自動車メーカーや飲料メーカー、日系タイヤメーカーなどを担当。2018年11月から神谷製作所の一員に。日・中の言語とカルチャーを巧みに操るボーダレスPRディレクター。

 

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