体験価値をスコア化する新調査がリリース CX推進のカギは体験価値の「定量化」にあり

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商品やサービスの機能性による差別化が難しくなっているいま、顧客を掴むための施策として、カスタマーエクスペリエンス(以下、CX)の向上が叫ばれている。しかし、実践に際しては部門最適に終始してしまい、CXの全体像が見えない、取り組みの成果を定量化できていないといった課題を抱える企業は多い。CX戦略の課題を解決するサービス「エクスペリエンス価値調査」をリリースしたトライベック・ストラテジーに、CX推進のポイントを聞く。

(写真右)トライベック・ストラテジー デジタルマーケティング支援事業統括 小林剛氏
(写真左)キャップジェミニ シニアマネージャー 水田英樹氏

企業のCXをスコア化する新調査

Web戦略の立案やWebサイトの構築、UI/UXの改善といったデジタルマーケティング支援を主な事業内容とするトライベック・ストラテジー。同社ではトライベックブランド戦略研究所という調査機関を擁し、そこでの調査結果をWeb戦略やUI/UXの設計に役立てている。

その同社が2020年3月にリリースしたのが、カスタマーエクスペリエンス(以下、CX)を客観的に評価するサービス「エクスペリエンス価値調査」だ。このサービスは金融業界の企業を対象にした調査で、同業界のコンサルティング実績が豊富なキャップジェミニと連携して行われるもの。対象企業のサービスを利用した経験のあるユーザーへのアンケート調査を通じて、デジタルとリアルにわたる各チャネルや各フェーズの顧客接点における体験価値をスコア化することができる。調査に留まらず、トライベック・ストラテジーは調査結果に基づいたCXのコンサルティングも同時に展開していく。

一方のキャップジェミニは金融業界を中心に事業を展開し、金融機関のデジタルトランスフォーメーションやグローバリゼーションを手掛ける企業として知られる。今回トライベック・ストラテジーの調査に協力するのは同社のデジタルサービス部門で、金融機関におけるUI設計やCXに関する組織の運営サポートなどを行っているUI/UXチームだ。

両社は調査だけでなく、CX向上のコンサルティング領域においても協業体制を敷く。トライベック・ストラテジーはWebサイトの構築やリニューアルを、キャップジェミニは組織が抱える根本的な課題の解決を担うことでCXの向上を図る。最終的には、クライアント企業が自走してCXを向上できる組織へと変革する後押しを進めていく方針だ。

金融業界45社を体験価値によってランキング化

初の「エクスペリエンス価値調査」となる今回は、金融業界の45社を対象に、全国20歳以上のサービス利用経験のあるユーザーにアンケートを実施。デジタルチャネルとリアルチャネルそれぞれについて、日常接触時、契約・購入時、サポート利用時という3つの接触フェーズでの体験を尋ねた。具体的な調査内容は、各チャネルの利用状況・参考度、利用時の印象や体験、他者への推奨意向、継続意向、好感度などだ。

その結果から各接触フェーズでの体験をチャネルごとに11段階で最高100点として評価。そこに各チャネルの参考度を掛け合わせることで、接触フェーズごとの体験価値のスコアを計算。そして各フェーズのスコアを平均した上で総合的なエクスペリエンス価値スコアとして算出し、金融業界45社をランキング形式で並べた。

エクスペリエンス価値スコアの特徴は、①ユーザー視点から体験価値そのものをスコア化していること、②リアルとデジタルの両方を評価していること、の2点。さらにトライベック・ストラテジー デジタルマーケティング支援事業統括の小林剛氏は、「エクスペリエンス価値スコアは、NPS®や継続意向、企業イメージなどとの相関性も見ることができる」と付け加える。アンケートでは同時にフリーコメントも集めているため、スコアの裏側にあるユーザーの評価理由も見えてくるという。

またランキングは、業界における自社のポジションを相対的に把握することにつながる。キャップジェミニ シニアマネージャーの水田英樹氏は、「金融業界のランキング結果から、良質な体験は企業の信頼性や規模の大きさ、リアル主体やネット主体に関わらず提供することができるという可能性を感じた」と話す。

トライベック・ストラテジー 小林剛氏

CX推進の肝は、「定量化」の壁を打破すること

今回のサービスのリリースに至った背景としては、マーケターの間でCXについての課題意識が高まっていることがあげられる。デバイスやチャネルが多様化し、さまざまな顧客接点が生まれるなかで、それらを最適化しなければより良い顧客体験が提供できないといった意識が高まると同時に、生活者からも購買に関わるすべての体験に付加価値を求められるようになってきたためだ。

この変化について、小林氏は「昔は単にWebサイトを使いやすくしたいといった相談が多かったが、最近はデジタルとリアルを統合的に見たときに、CXをどう設計すべきか悩まれているクライアントが多い」と実感値を語った。

これまで金融業界は、リアル店舗を主軸としてきた大手都市銀行とオンラインを主軸に台頭してきたネット銀行といったように、リアルとオンラインの担い手が明確に分かれていた。しかし、近年は大手都市銀行がオンライン領域のサービスを拡充するなど、その境目がなくなってきた。加えてユーザー側も、金融サービスを必要なときに必要なチャネルで使いたいという感覚が当たり前になってきたことから、水田氏は、「他社と差別化するうえでも、チャネルをまたいだ体験設計が今まで以上に重要になってきている」と語る。

しかしCXを改善しようとしたときに、立ちはだかる壁はいくつもある。その最たる課題が、取り組みの成果が定量化しづらいこと。成果を定量的に把握できなければ、取り組みによって何が改善され、その結果、事業にどれほど貢献したのかが見えてこない。一般的にはCXの成果指標としてNPS®(顧客ロイヤリティを測る指標)をKPIとすることが多いが、「NPS®だと、商品やサービス自体の価値なども含まれてしまい、純粋に体験価値のみを評価することができない」と、小林氏は述べる。

また、チャネルをまたいだ体験設計を行うには全社的な取り組みが欠かせない。そのためにはCX全体のあるべき姿を定義する必要があるが、「Webサイトやアプリなどの分かりやすいところから手を付けがちで、結局は部分最適の施策に終わってしまう」と小林氏。この問題に対しても、体験価値を定量化すれば、全体的な視点から特に重要な課題がある部分が一目瞭然になるため具体的な施策に落とし込みやすくなるという。

さらには、体験価値を正しく測るKPIが設定できれば、他のKPIとの相関も見えるようになる。それにより売上に直結する施策ばかりを優先しがちな組織であっても、CX向上の施策に取り組む意義が感じられるようになる。

キャップジェミニ 水田英樹氏

「どのチャネル、どの顧客接点において、どのようなCX上の成果が出ているのか、あるいはどの接点においてCXを毀損しているかが容易に把握できるようになり、より効果的な施策立案と予算投下の判断材料にしていただくことができると思います。CX向上には、経営課題との紐づけのために経営層の理解を得ることが必要となります。また、部門横断での共通目標・指標に基づくCX改善への取り組みが欠かせません。そのための重要指標として活用いただくことを期待します」(小林氏)。

今後は、CXの現状把握や課題の抽出、改善策の立案などに「エクスペリエンス価値スコア」の活用を見込む。また、調査設計自体は金融業界に限らず応用可能なため、他業界への展開も予定している。「特に、オンラインとオフラインの融合や共存がテーマになっているような業界や、旧態依然とした縦割りの組織を抱えている企業には、CXへの取り組みを始めるきっかけとして参考にしていただきたいと考えています」(水田氏)。

NPS®(Net Promoter Score)…米国ロイヤリティ・マーケティングの権威であるベイン・アンド・カンパニー名誉ディレクターのフレッド・ライクヘルド氏が提唱した、顧客のロイヤリティを測るための指標。NPSは、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

お問い合わせ
トライベック・ブランド戦略研究所
担当:小林
TEL:03-5413-0177
FAX:03-5413-0178
MAIL:mail@brand.tribeck.jp

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