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90%以上の広告会社・制作会社が新たな勤務制度を導入済、または検討中 — 月刊『ブレーン』調べ

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4月7日の緊急事態宣言の発令後、広告界の働き方が大きく変わろうとしている。外出自粛が要請されるいま、広告界の企業はどのように対応しているのか。

3月31日から4月10日にかけてアンケート調査を実施し、大手を中心に22の広告会社及び制作会社から回答を得た。

80%以上の広告会社・制作会社で、「担当するキャンペーン・イベントの延期・中止」

本調査によると、86.4%以上の広告会社・制作会社で「担当するキャンペーン・イベントの延期・中止」が発生。加えて、東京オリンピックが延期になり、それに伴う仕事が延期や取り消しになったという回答も複数ある。

これらの影響で、4月~6月の4半期の売り上げが、前年比を下回ると複数の企業が回答。前年比で50%、60%、80%という回答がそれぞれ2社ずつ、70%という回答が1社から得られた。

また、「担当する企画の内容(例:コピー・キャスト・ロケ地・表現など)の変更」があったとの回答は54.5%で、当初の企画を実施する場合も一部の修正を余儀なくされることも多いようだ。

現在、日本全国で外出自粛が要されているが、日本アド・コンテンツ制作協会は、「新型コロナウイルス感染拡大に伴うリスク対応について」という指針を発表している。同指針の[Ver.4]4月8日更新版では、「『命を守ること」が最重要であり、得意先から判断・指示を受けて、『リスクを伴う制作業務』を回避するべき段階です」と言及している。

東北新社は、本社および各事業所を閉館。AOI Pro.とティー・ワイ・オーは、「原則、撮影・編集等複数人での接触が必要な業務の延期をお願いする」など大手制作会社が一部業務を停止している。

80%以上の広告会社・制作会社が、新たにリモートワークを導入・推奨

時差出勤やリモートワークなどを新たに取り入れた割合がともに80%を超えている。以前から導入していた企業も合わせると90%以上が既に取り組んでいる。

また、「社内会議の制限・自粛」「社外会議・イベントへの参加の制限・自粛」など業務においても大きな影響を及ぼしたことがわかる。中には、原則出社禁止、全社員在宅勤務という措置をとった企業もあった。

また、「Web会議システム・クラウドシステムの導入」を68.2%の企業が実施。「VPNを経由し外部から社内サーバーアクセスへの許可」「MicrosoftTeamsの導入」「在宅勤務に伴うセキュリティ意識の啓蒙」を行ったという回答があり、働く場所が変わっても仕事ができるような環境の整備が進んでいる。中には「シッター料金の全額補助」を実施したという回答も寄せられている。

一方で、「元々出社義務がなく、遠隔地での在宅勤務社員もいたので、オンラインでのミーティングや自宅作業に慣れたスタッフが多いので、業務執行上の大きな影響は無い」という声もあり、業務が停滞した企業と通常通り進行できた企業で差があったようだ。

リモートワーク導入もコミュニケーションに課題あり

リモートワークなど新しい働き方を導入するにあたって、77.3%の企業で「Web会議への対応」が、59.1%の企業で「オフィスから持ち出すことのできない情報やファイルの取り扱い」が課題となっている。

特に、「Web会議で対面と同じように話すのは難しい」「指示が複雑な場合や感覚的なことを上手く伝えられない」「バイリンガル会議などでの、同時通訳者の手配・遠隔通訳の難しさ」など、コミュニケーションに関する言及が多い。

また、「労働時間の把握が難しい」「承認用ハンコを押すために会社に来ざるを得ない」など、現在の仕組みを変えなければ解決できない課題も挙げられた。

リモートワークに取り組む中で、課題を解決する糸口も見えてきた。

「Snap Cameraのフィルターやエフェクトを使うことで、コミュニケーションが円滑になる」、「メンバーの動きが見えないので、各自の仕事量/業務状況を見える化する」、「世界各地のオフィス合同で、現地のコロナウイルス、クライアント、オフィス、広告・クリエイティブ関連情報を掲載する社内情報共有プラットフォームを立ち上げた。情報共有によって混乱を防ぎ、公開CMなど制作物の共有で大多数の延期により混乱している現場にモチベーションをもたらした」など。

広告会社・制作会社の仕事の枠組みが変化する

90%以上の広告会社・制作会社が勤務制度の変更や新たな取り組みの開始を決定、もしくは検討中だ。

既に、電通が中期的に「持続可能なリモートワーク(在宅勤務または会社と自宅以外での勤務)」を推進することを発表。また、「特別新たな施策を検討・実施はしていないが、これまで限られた人だけがしていたテレワーク・オンラインミーティングをほぼ全社員が実施し、活用を拡大していくきっかけになった」という声もあり、働き方が変わりそうだ。

「これまでオフィス勤務前提だったが、リモートワークも考慮した評価制度への変更を検討している」企業もあり、リモートワークで個人の力量がはっきりし、成果主義が加速することが想定される。「今の仕事の枠組みに変化が出るとすればどう対応していくべきか」「社会全体の経済活動の冷え込みに広告界として対応できるのか」という回答が寄せられたが、広告界が変革する岐路に立っているのかもしれない。


5月1日発売の『ブレーン』6月号では、「#今できること 企業・クリエイターの次へとつなげるアクション」と題し、今だからこそ生まれたクリエイティブを紹介しています。ぜひお読みいただけますと幸いです。

調査概要

広告界の新型コロナウイルスによる影響に関するアンケート

調査方法:Webアンケート
対象:広告会社及び制作会社
調査期間:2020年3月31日から4月10日
有効回答数:22件
調査企業の従業員数:30人以下:6社、31人から100人:4社、101人から300人:4社、301人から500人:4社、500人以上:4社