データの主導権は消費者の手に委ねられる時代 — 信頼される企業に必要なプライバシーテック戦略とは?

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個人情報保護法の改正も見据え、国内でも企業によるパーソナルデータの利活用に関心が集まっている。こうしたニーズを踏まえ、ベクトルとインティメート・マージャー(以下、IM)は2020年3月、新会社Priv Tech(プライブテック)を立ち上げた。同社にとって第1弾となるサービスは、データ等の利用同意管理プラットフォーム「Trust 360」。すでに電通デジタルとの販売におけるパートナーシップ契約を締結している。
両社が手を組んだ理由、さらにいま、企業に求められるデータ利活用、マーケティングの転換について話を聞いた。

左)株式会社電通デジタル デジタルトランスフォーメーション部門 部門長補佐 魚住高志氏
現在、電通から電通デジタルに出向中。電通入社後、一貫してクライアントのデジタルマーケティング支援に従事。特にビッグデータとクラウドの可能性に早期から着目し、それらを活用したソリューション開発やコンサルティング、関連する記事執筆や講演も多数。「顧客との関係を維持し続ける仕組みづくり」のコンサルティングやソリューション提供を中心に活動中。
 
右)Priv Tech株式会社 代表取締役 兼 株式会社ベクトル Chief Privacy Officer 中道大輔氏
ソフトバンクや、ヤフーを経て、現職。キャリアを通じて、データビジネス関連事業のビジネス・ディベロップメントに従事。現在は、ベクトルの子会社PrivTechにて、プライバシー・ファーストなデジタル社会を目指し、事業を展開。また、6月からベクトルグループのCPO(Chief Privacy Officer)に就任し、ユーザーのプライバシーを守る組織作りをグループ横断で行う。

GDPRにCCPA…「データ利活用の主導権は、個人の意思に」が世界の潮流

—国内外でパーソナルデータの利活用について企業の関心が高まっています。そのニーズを捉え今回、“プライバシーテック”という新しい事業を立ち上げたそうですね。

中道:欧州のGDPR、米国・カリフォルニア州のCCPAなど、近年、パーソナルデータの取り扱いに関する法規制が強化される流れがあります。日本においても個人情報保護法の改正が予定され、Cookie利用を規制する動きが本格化する中、企業がユーザー個人のデータの主導権を握るのではなく、個人が自身のデータの主導権を握る時代へと変わりつつあります。

データ利活用における“主語”を変えるためには、個人の情報を守るためのテクノロジー、プライバシーテックが必要。そう考え「個人のプライバシーの尊重」と「企業のデータの利活用」を両立できる新しいサービスを提供しようと、Priv Techの設立に至りました。

第1弾として提供を開始した、パーソナルデータ等の利用同意管理プラットフォーム「Trust 360」は、パーソナルデータ関連の法律に準拠し、個人の同意に基づいて企業がデータの利活用を進めるためのソリューションです。

■「Trust 360」のサービス概要

個人情報に関する法規制は国ごとに異なる。日本で開発された「Trust 360」は、日本の法規制の変更にも柔軟に対応できる点が魅力だ。

魅力的な顧客体験を提供するためには、顧客からのデータ提供が不可欠

—「Trust 360」の販売について、電通デジタルとパートナー契約を締結したそうですね。なぜ、両社はタッグを組むことになったのでしょうか。

魚住:近年、クライアント企業のニーズが新規の顧客開拓だけでなく、既存顧客を対象としたマーケティング活動の支援へと広がりつつあります。既存顧客をよく知り、より良い関係を築いていくためには、データの利活用が必要。しかし法規制によって、より明確に個人から同意を得てデータ取得をすることが求められるようになってきました。

つまりは「顧客と企業の信頼関係と、データによる顧客体験の向上」という、この双方が揃って初めて、企業はデータを利活用できる状況になっていると言えます。そうした点から、Priv Techの事業に大きな可能性を感じました。

例えば、ある保険会社は健康診断のデータを送ると、内容に応じて保険料を割引するサービスを行っています。ヘルスケアデータは、パーソナルデータの中でも、かなり扱いに慎重にならなければいけないものです。しかし、そうした情報であっても、企業のパーソナルデータの取り扱い方に関する信頼、そして顧客に対するメリットがあれば、顧客はデータを企業に提供してくれる。

さらに、そのデータが、これまでにない顧客の体験価値を生むわけなので、企業が顧客から信頼を得られるか否かが、提供するサービスの質にも大きく影響してしまう。企業と個人間の同意と信頼を基盤にして、データ利活用を進めることが、DXの推進にもつながっていくと考えますし、その意味でPriv Techの事業に期待しています。

「守り」だけでなく「攻め」も必要、両者の視点を兼ね備えたPriv Tech

—お二人の考えるPriv Tech社の強みと、2社がタッグを組むことで新たに生まれる強みとは何でしょうか。

魚住:昨今の法規制の強化に従うだけだと、企業においては「守り」のデータ利活用になりかねない。しかし、マーケティング戦略においては常に「攻め」が必要です。消費者の同意を得た上で、顧客体験の向上や創造を目指す「攻め」の視点も必要で、中道さんはその2つの視点を持って、プライバシーテックのビジネスを牽引しているところが、唯一無二の存在だと考えています。

中道:PR会社として、様々なステークホルダーとの関係性をつくりながらイノベーションを起こそうとしてきたベクトルと、データ利活用の知見を持つIMから生まれた会社ということもあって、「守る」だけではなく、「ユーザーに還元していくためのデータ利活用」を推進していくべきだと考えています。

もう1点、我々の強みを挙げるとしたら、日本の個人情報保護法や、日本企業のカルチャーも熟知した上で、データ流通の仕組みをつくれること。国も「DFFT」(Data Free Flow with Trust:信頼ある自由なデータ流通)の方針を掲げていますが、海外企業が個人データを寡占している状況は、日本としてもリスクがある。日本で開発されたソリューションならではの強みがあると思います。

さらに、電通デジタルさんの力やノウハウを掛け合わせることで、我々のソリューションの使い方が広がっていくはず。デジタルマーケティングをネット広告の運用という狭い世界に閉じ込めず、データを基点とした、真の意味で顧客基点のマーケティングを実現したいですね。

魚住:パーソナルデータの取り扱いにおける変化は、マーケティング部門の中だけでは完結しないはずです。法務や情報システム部門など、社内の他部署とも連携していく必要があるでしょう。そうした他部門との調整は、第三者的な立場として我々がお手伝いしていける部分ではないかと思っています。

DXの一歩はここから始まる。企業と個人が対等な関係で「体験」の向上を目指す

—プライバシー保護が重要視されていく、これからの時代、企業のデータ利活用はどのように変化していくべきか、お考えをお聞かせください。

中道:今後は個人が主導して、パーソナルデータを企業に渡す・渡さない、の判断ができるようになるでしょう。Priv Techでも、個人がデータの主導権を持てる世界の実現を一番大きなミッションとして掲げています。

昨今、顧客視点のマーケティングの必要性は多くの企業が認識しているところだと思いますが、実はその第一歩となるのが、データの主導権が個人の手に委ねられた世界の実現。個人の手にデータが委ねられ、個人の信頼を得てデータを提供された企業が、そのデータをもとに顧客視点のマーケティングを実行していく。それはまた企業におけるデジタルトランスフォーメーションの実現にもなります。

魚住:デジタルマーケティングは昨今、過度な販促活動としての面が強すぎる傾向にありました。プライバシーが重視される時代への変革は、企業と個人の関係を再考し、双方が対等な関係をいかに築いていくか、を考える契機になるはずです。

特に今、コロナ禍で顧客と対面の接点を持つのが難しくなったことで、これまで「顧客を知る」方法として、対面でのやり取りに依存しすぎていたことが、問題視され始めています。Withコロナ、Afterコロナの時代に向けて、適切なプロセスを経て取得したデータで顧客を知り、顧客をフォローし続ける仕組みが一層求められていますし、そうした点からもPriv Techさんの事業のこれからに期待しています。

▶︎trust 360の詳細はこちら


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