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電通、カンヌライオンズで「2010年代のアジアのクリエイティブトップ」に

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電通は、6月26日までオンラインで開催されている「LIONS Live」において「Regional Agency of the Decade – Asia」を受賞した。

本賞は同賞の過去10年分の受賞作品データを独自に集計し、継続的に受賞してきたエージェンシーを表彰するもので、電通は10年分のポイント数がアジアでナンバーワンとなった。2位は博報堂、3位はオグルヴィー・バンコク。現在、「LIONS Live」のサイトでは、電通がこれまでカンヌライオンズで受賞した作品を振り返る受賞ビデオが公開されている。

https://lionslive.canneslions.com/winners/regional-agency-of-the-decade-asia-vod-e1-42009

今回の受賞にあたり、電通 シニア・プライム・エクゼクティブ・プロフェッショナル 古川裕也氏が、クリエイティブのこれからの10年を見据えたコメントを寄せてくれた。

これまでの10年とこれからの10年
Cannes Lions Regional Agency of the Decade – Asia受賞について

古川裕也
 

あたりまえですが、初めての受賞です。
Agency of the year、Network of the yearに比べて、ちょうど10倍うれしい。

個人的なことから言います。震災があった2011年、九州新幹線の仕事でいくつか受賞した次の年から、chief creative officer的に電通の海外広告賞全体を見るようになりました。今回Cannes Lions Liveに上げるための受賞ビデオを創るにあたって、この10年で受賞したみんなの仕事を見渡しました。よくもまあという神業がならんでいて、エージェンシー・クリエイティブの仕事は、ほんの少しの上澄みだけ取り出すと、他のどのクリエイティブ・ジャンルにも負けないとてつもないレベルだということを再認識しました。どれも美しく、どれも世のため人のためになる。柄にないこと言いますが、なかなか感慨深かった。

グランプリ含むゴールド以上の受賞作は、13のカテゴリーにまたがっています。この10年間僕たちがやってきたことは、クリエイティブの拡張ということ。言い換えると多様性とクオリティ。もう一度言い換えると、広さと高さと新しさの獲得ということになります。そういうデケイドでした。たぶん他の地域でも、それを成し遂げたエージェンシーがこのアワードを受賞しているはずです。
それはまた、クリエイティブの領域に、ゼロ年代まではいなかった種類の才能を招き入れるということでもありました。知らない人のいるチームによって、クリエイティブ的な獲得を拡張していくという、この刺激的な仕事のやり方は次の10年も続くでしょう。

20世紀は戦争の時代、21世紀はウイルスの時代と言われるように、僕たちはとても大きなできごとの渦中にいます。ペストがルネサンスを導き出したように、人類は疫病と戦争でしか大きく変われないのかもしれません。だとすると、この変化によって新しい何を生み出すかが、歴史が僕たちに与えた宿題だと思います。

次の10年は、クリエイティブがやるべきことが大きく変わるデケイドになります。
社会的な、知的な、倫理的な、身体的な共通感覚が劇的に変化しました。
最初にやるべきは、次の生き方、僕たちのあり方を考え、そこから新しい問いを立てていく仕事だと思います。

“Life”が、ひとつのキーワードになります。
日本語で言うと、生命・人生・生活です。
今までのように、businessのためだけでもなく、purposeのためだけでもなく、
Life、つまり、生きていくことそのものをどのように再構築するかに深く関与するべきです。
生き方の再構築、humanityの再構築に。
なぜなら、世界がもとに戻ることは、もう絶対にないから。
何より哲学が必要。
「哲学とは、おのれ自身の端緒が更新されていく経験のことである」
と、メルロ・ポンティが言うように。

それを提示できなければ、クリエイティブ産業たるエージェンシーの意味はありません。
この場面で問われているのは、アドバタイジング・インダストリー全体の存在意義だと思います。ひとつひとつの仕事の意義を明確にする。逆からいうと、意義のない仕事はしないほうがいい。
これは、僕たちの持っている能力をこれからどう使うべきかという問題です。

どこまで行っても、僕たちの武器は、creativityしかありません。
ただ、それを、何にどのように駆使するかは、つねにアクチュアルな課題です。
僕たちの仕事の進化とは、要は、自分たちのcreativityの使い方を更新していくことなのです。
こうなったとき、どうするか、という問題です。
今求められているのは、ひとびとを再起動させるための新しい哲学と新しい物語。
それも再び大きな物語というよりは、ひとりひとりが、ひとつひとつのコミュニティが、それぞれの企業が、自分たちにできることをつくり直していく。
ほんとうに必要なこと、ほんとうに大切なこと、今まで気がつかなかった重要な課題、ちょっと視界が開けるような仮説、経験したことないけれどやればきっと楽しいこと、などなど。
ちなみに、人を愛する能力の人類総和は、ここ数か月でずいぶん上がったと思います。

すべての企業に、存在意義を再構築するという仕事が発生しています。
おそらく、クライアントと僕たちの関係は、哲学と物語を共有する同志のような関係になっていくでしょう。

humanityを再構築すること、そのために哲学を更新すること、新しい物語を創ること。
そのためにこそ、creativityを駆使すべきです。
それが、next decadeの始まりになると考えています。