JT（日本たばこ産業）は、たばこを吸う人と吸わない人が気持ちよく過ごせるちょうどよい距離を「スーシャルディスタンス」と表現。2020年11月にキャンペーンをスタートし、Webを中心にさまざまなコンテンツを発信している。

同社がこの企画を始めた背景にあるのは、2020年4月に施行された改正健康増進法。これにより屋内でのたばこに関するルールが大きく変化した。「たばこを吸わない人が、屋内で望まない煙の迷惑に遭う機会が減った一方で、屋外の喫煙所は、たばこを吸う人が吸わない人に配慮しマナーを守って喫煙するための貴重な場所となっている。喫煙環境が整備されていないことによって、たばこのポイ捨てや歩きたばこ、吸ってはいけない場所での喫煙などのマナー違反が生まれてしまう可能性もあるという。

「これまでもJTは、吸う人と吸わない人の共存に向けた啓発活動を行なってきましたが、あくまでも吸う人向けに“マナーを守りましょう”といった呼びかけが主体でした。しかし『改正健康増進法』下で、屋内禁煙になり、屋外で吸うことが増えるなか、吸う人だけでなく吸わない人にも喫煙所の役割を理解してもらいたいと考え、今回の企画にいたりました」と、同社は話す。

喫煙所の役割を理解してもらう活動には、吸う人・吸わない人の区別だけではなく、意識段階に応じた横にも縦にも多岐にわたるアプローチが必要だった。従来のようにテレビCMを通して伝えるという方法では単一のアプローチになってしまう。そのため、今回のキャンペーンではWebを主戦場に、表現的には関連性のない様々な映像施策を発信することに。

「そのときに、各施策をつなぐ言葉が必要だと思いましたが、発信フレームに名前をつけるよりも、この運動自体に名前をつけるべきと考えました。この運動は、吸う人と吸わない人の間に喫煙所を置くことで、適切な距離をつくること。そこで、“吸う”ソーシャルディスタンスだと思い、『スーシャルディスタンス』と名付けました」と、このキャンペーンを手がけたクリエイティブディレクター 横澤宏一郎さん。

たばこを吸う人にとってはマナーを守ってたばこを愉しむために、吸わない人にとっては望まない煙による迷惑を減らすために、スーシャルディスタンスを保つためには、喫煙所が役に立つということを、本キャンペーンではさまざまなコンテンツを通して伝えていく。

12月21日時点では、コンテンツの第三弾まで公開されている。

第一弾は、人気漫画『ベルサイユのばら』と『ゴルゴ13』とコラボレーションしたWeb動画『ス−シャルインタビュー』。「答えて！マリーさん」篇と「答えて！ゴルゴさん」篇では、たばこを吸う人と吸わない人の立場から「望まない煙」に対する双方の想いを代弁してもらい、吸う人と吸わない人が気持ちよく過ごせるちょうど良い距離を保つための解決策を導いている。

・スーシャルインタビュー「答えて！ゴルゴさん」篇

・スーシャルインタビュー「答えて！マリーさん」篇

キャンペーン第二弾『スーシャル選挙』では、選挙ラップショーWeb動画「スーシャル選挙」を全3話にわたり順次公開。たばこを吸わない奈緒さん率いる“スワン党”とたばこを吸うシソンヌさん率いる“スイマス党”の2大政党が相反する立場から、それぞれの想いを実現するために熱い選挙戦を繰り広げる。現在までに、第1話「スワン党とスイマス党」篇、第2話「すれ違う主張」篇が公開されている。映像のディレクションは、映画監督の山下敦弘さん。

・スーシャル選挙 第1話 「スワン党とスイマス党」篇

・スーシャル選挙 第2話 「すれ違う主張」篇

キャンペーン第三弾『スーシャルソング』では、“たばこを吸わない人と望まない煙の間に距離をとろう”というメッセージを届けることを企図し、「いらない」と「距離を保とうぜ」という2つのキーワードを軸に、世の中のあるあるネタを音楽にのせて展開。「もういらない♪」篇には今田美桜さん、「距離を保とうぜ」篇には千鳥・大悟さんを起用した。

・スーシャルソング「もういらない♪へんひへひない」篇

・スーシャルソング「もういらない♪誰得かわからない」篇

・スーシャルソング「もういらない♪社交辞令いらない」篇

・スーシャルソング「距離を保とうぜ♪とても気まずいぜ」篇

・スーシャルソング「距離を保とうぜ♪車間距離もだぜ」篇

・スーシャルソング「距離を保とうぜ♪時代は変わったぜ」篇

「こうしたテーマの表現はとかくまじめで堅いものになってしまい、それゆえ正しいけども流されやすいものになる傾向がありました。だからこそ“見てもらう”ために何をすべきか？を追求しました」（横澤さん）。そして、“見たくなる”ような面白さでまず視聴者の心を掴むこと。それから、本当に伝えたいメッセージを伝えるという二段階のやりかたにたどり着いたという。

CMも含め、現在までに本キャンペーンでは20近いコンテンツを公開。『スーシャルインタビュー』は長尺動画にも関わらずユーザーの約半数が、ラストのキーメッセージまで視聴している。『スーシャル選挙』では奈緒さんがラップに初挑戦し、人気急上昇中のシソンヌが出演、新作「スーシャルソング」では今田美桜さんと大悟さんが普段のイメージとは違う一面を見せるなど話題性も高く、SNSでは吸う人吸わない人ともに「気持ちを代弁してくれた」「広まってほしい」という声や、「面白い」という好意的な声が届いているという。