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黒須美彦氏×倉光徹治氏 CMを企画するときどんなことを考えていますか?

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3月20日(土)に開講する「CMプランニング講座特別編 黒須美彦的 広告とCMのやり口集」に向けて、講師を務める黒須美彦氏と、親交のある倉光徹治氏の対談が実現。これまでに数多くの人気CMを手掛けてきたお二人に、CMプランナーの仕事や、実際どのようにプランニングしているのか、話を聞きました。

—黒須さんが講師を務めるCMプランニングの特別講座が3月20日からスタートします。まずは、黒須さんと倉光さん、お二人の出会いや、ご関係を教えてください。

黒須:今から20年前かな。倉光くんが博報堂に入った頃に、僕はクリエイティブに配属が決まった新入社員にCM制作の研修をしていたんです。新人が10人くらいいて、きわめて優秀な代でしたが、その中でも倉光くんの企画は、シャープで、キレキレな感じでした。

僕と倉光くんには“共通項”があって、二人とも理系で、建築志望だったんです。その後の倉光くんの仕事を見ていると、俯瞰して見る引き絵が多くて、物事の骨格を見るところがクールで好きだなと思っていました。それから、僕はシンガタに、倉光くんはタグボート3に入り、僕が岡康道くんに「倉光くん優秀だよね」と言ったら、「一緒にやってよ」と言われて、それからしばらくずっと仕事を一緒にやってきました。

倉光:博報堂の新人研修の多くは、コピーをどう書くか、という“修練”に近いものが多かったのですが、黒須さんの講義だけが構造的で、フレームやブランディングの話があり、主に欧米などでずっと培われてきた映像の手法を体系化されていました。おおげさに言うと、1つの学問でしたね。200ページぐらいの冊子に体系化されていて、そこにあるものの多くが今でも広告の世界で当たり前に使われていますし、参考になります。

こう話すと、「構造的で、数学的で、システマチックなことに長けている」という印象になってしまいますが、黒須さんの本質は、そうではなくて、今、失われつつある、文学的なるものや、言葉の裏側にあるインスピレーション、映像になったときの発露する感情をビビッドに伝えるようにする、というところを大事にされていますよね。そこは僕も大切にしているところです。

—お二人が考える“CMプランナーの仕事像”を教えてください。

黒須:CMプランナーという職種は日本や韓国とかだけらしいんです。海外では、基本、CDとコピーライター、AD、そしてフィルムディレクターとで作ると。CMプランナー自体が独特なものらしくて。それはそれで良いなぁと思っています。

CMプランナーは、コピーだけではなく、考え方とか全体の骨格を俯瞰して、コピーも映像も考えて、掛け算していく総合的な仕事です。その中でも一番大事なのは時間軸で考えることです。映像というのは、15秒や60秒で、始まってから終わりがある。その流れを構成するというか、推敲するというか、そこが違う。総合的な視野が必要な仕事です。

倉光:“時間軸”に関しては同じ見解で、CMプランナーは「立体的に考える」ことが職能だと思います。15秒、30秒という映像の時間軸と同時に、そのCMを連ねていったときの、1年後、3年後、5年後に、ブランドにどういう作用があるか、というところまで考えながら、目の前の15秒、30秒を考えていく必要があります。

そのため、15秒が連なっていくべき道筋を考えたときに、最も効果的に連なるドット、その一次元はどういう15秒か、というところを複合的、立体的に考える力が必要かなと思います。

—企画の発想段階ではどんなことを考えますか?クライアントからのオリエン以降、何からはじめますか?

黒須:コピーライターがコピーを書く場合は、商品のコンセプトや世の中の様子を煮詰めていって言葉に収斂するので、そこを集中的に考えると思います。

一方で、CMプランナーは、もうちょっと幅があって緩い感じの考え方をしたり、どこから入るかも、あれこれ考えます。というのは、コンセプト表現だけに集中しすぎると、話が小さくなっちゃったり、商品のことしか言わなくなってしまうことになるからです。

CMプランナーには“泳がせる時間”てのが、結構大事で、世の中が何を欲しているのか、感じているのか、その匂いや雰囲気などを、漠然と感じるようにしていたいですね。何も企画しないで、お煎餅食べたりしている時間を大事にしたり。その中で、こんな感じのアニメーションいいな、そういう渋い笑いもいいなとか、感じたりするわけです。

最初から字コンテで骨格的に考える人が多いけど、くだらない画とかささやかな気持ちとかで企画が成り立つこともあるから、泳がせは最後の最後までやりますね。僕は。

倉光:僕は歳を重ねてからですけど、この世界や時代、空気感、リアルタイムな状況と、広告を打ちたいと言っているブランドや商品の人格、その双方を考えて、距離を測るというか、お互いの言い分に耳を澄ますことに注意を払うようになりました。

特に今は、短期的な売上を求められたり、調査上のスコアを求められますが、距離を測ってみると、その商品やブランドが発したいと言っているメッセージと距離感がズレてることが多々あるんです。測ってみると、一見正解に見えているものより、もっと良いやり方があるなと見つかることがありますね。

—CMは言葉と映像のバランスが大切だと思います。いかにしてコピーライターとADとの関係を保ちながら良い企画にすればいいのでしょうか?

黒須:そもそも、言葉がコピーライターで、映像がADと決める必要はありません。

たとえば、コピーライターが考えた短いフレーズが突き抜ける力をもっていて、キャンペーンを支配していて、それをCMでも使うのは良いことです。ただ、それをどの位置に置いて、どんな声の大きさにするかの判断を含めて、CMプランナーが考えます。映像は言葉が音になったときに、どうしたら一番響くかを考える必要があるので、プランナーが責任をもってやっていくことかなと思います。

絵と言葉のバランスという考え方はあまりしません。両方大事ですからね。どちらも強くなるといい。ただ、映像の引きだしというのはたくさん持っていた方がいい。かっこいい映像は録画したり、かわいいアートは切り抜いておいたり、昔の日本映画の映画的な文法は解析してみたり、それを広告の文脈の中でうまく応用できるといいなと思います。

倉光:言葉と絵の両方をCMプランナー1人でやってもいいし、コピーライターとADのどちらかのアイデア、または2人のアイデアが良ければ組み合わせてみてもいいと思います。なので、バランスはあまり考えなくてよくて、一人のクリエイターとして、最大パフォーマンスを出すための判断すればいいのかなと。

—最後に、この講座はどんな人達に受けてほしいですか?

倉光:今は映像媒体がものすごく増えているので、映像をプランニングしなければいけない仕事もかなり増えています。その中で、映像を専門的にプランニングして、映像に責任をもって、ベストと思われる映像をプランニングできる機会も増えています。

今、世の中に氾濫している映像を見たときに、「もうちょっときちんと映像をプランニングすればもっと良くなる」と思うものに出くわすことが多くなっているので、チャンスがたくさんある気がするんです。

映像をプランニングするスキルはベーシックなことをきちんと学べば学ぶほど、スキルとして仕事に反映されるものです。なので、黒須さんから学べる機会は、凄く現場での仕事、リアルな仕事でも、実践で効果が出ることが容易に想像できます。講座を受けることで、ガラッと変わると思いますね。

黒須:倉光くんが言う通り、CMプランナーの仕事は、今は15秒のCMの言葉と映像を考えるだけではありません。バンパー、タクシー動画、サイネージなどなど、いろいろな形式の広告的な映像があるので。それぞれの場面でどういう風に人の気を惹くか、が大事。

この講座の推薦文で博報堂の松井くんが「黒須さんは、広告はイタズラでしゅ、と言った」と書いてましたが。確かにそういうとこもある。なにか、映像やコトバで人の気を惹くというか、気持ちに作用したい、という。そんな、人の気持ちとかに関心のある人、いたずらゴコロのある人、とかにもいいのかなと。ま、もちろん、基本は広告関係や映像関係の方向けなんでしょうけどね。プッシュ型、プル型だけでなく、いまや、コミュニケーションの方法論が山のようにあるなかで、なにか、新しいことを発見してもらえたらいいなと。

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黒須 美彦氏
クロロス クリエイティブディレクター

1975年慶應義塾大学工学部卒業後、博報堂入社。プレイステーション・ローソン・資生堂等数々のCM仕事を経て、2003年に電通佐々木宏氏らのシンガタに参加。2018年独立してCD&プランナー黒須美彦のひとり会社「クロロス」設立。サントリー金麦(檀れい→木村拓哉→石原さとみ)・金麦のオフ(戸田恵梨香)・ストロングゼロ(天海祐希)・明光義塾「YDK」・ドコモダケ・シンギング♫イオン(山口智子)・イオン感謝デー(武井咲)・イオンカード(蒼井優)・日テレちん・いい大人のモバゲー・いいものゴロゴロWOWOW・森永ダース・inゼリー等などを手がける。カンヌ銀賞ほか受賞多数。

 

倉光 徹治氏
TUGBOAT3 クリエイティブディレクター/CMプランナー/コピーライター

早稲田大学理工学部建築学科卒業後、博報堂にてCMプランナーを経たのち、クリエーティブエージェンシーTUGBOATに参画。2009年TUGBOAT3を設立。映像を主体に、様々な企業・組織のブランディング及びキャンペーンを手掛ける。近年の主な仕事「キユーピー ドレッシング」「ハーゲンダッツ」「サントリー メーカーズマーク」「サントリー ジムビーム」「カシヤマ」「アルコン 生感覚レンズ」「ダイハツ トール」「ブリヂストン」「キリン 午後の紅茶」「ロト」など。国内外の受賞多数。規格住宅ブランド「LIFE LABEL」、住宅エンターテインメントメディア「Dolive」の展開に携わる。