今メーカーに求められるマーケティング施策とは デロンギ・ジャパンのDXの鍵は「LTV」の向上

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デジタルマーケティング支援などを行うSmash。同社エヴァンジェリスト 佐野敏哉氏は、従来の顧客獲得における刈り取りメインのやり方には限界がきていて、LTVを重視した戦略への変革が求められていると訴える。連載企画第一弾の今回は、2020年11月にサブスク事業をスタートした、デロンギ・ジャパンのマーケティング部 デジタル・マーケティング シニアマネージャー 井上創介氏と対談。同社が取り組むデジタルマーケティングについて話を聞いた。

 

(写真左)
井上 創介
デロンギ・ジャパン マーケティング部デジタルマーケティング シニアマネージャー

マーケティング部において、デジタル技術を活用したプロジェクトを推進。主な領域は広告コミュニケーションの刷新、ソーシャルメディア活用・EC活用推進、社内インキュベーションプロジェクトなど。

 

(写真右)
佐野 敏哉
株式会社Smash

ブライトコーブ株式会社にてSaaS型の動画配信サービスをテレビ局や大手企業100社以上に導入。その後、サブスクリプションモデルへのビジネスチェンジに見事に成功したアドビ システムズ株式会社にて、デジタルマーケティングや広告配信の業務を5年にわたりサポート。サブスクリプションの黎明期より、ビジネス、システムの両面に知見を持つ。2018年9月より株式会社Macbee Planetに参画。解約防止ツールのプロダクト責任者として従事。2021年3月31日より解約防止ツールの事業部が株式会社Smashとして独立。取締役就任。

 

メーカーの「残念なDX事例」にならないために

—それぞれ自己紹介をお願いいたします。

佐野:私は、Smashが新たに取り組んでいるリテンションマーケティング領域の事業責任者を務めています。当社は新規顧客獲得の領域でサービスを提供してきましたが、近年のマーケットの変化によってデジタルマーケティング支援にも力を入れています。「解約」に視点を置いてVOC(Voice of the Customer)を吸い上げ、解約理由を分析して改善につなげるというソリューションを提供しているんです。

井上:私はデロンギ・ジャパンで、デジタルを活用したマーケティング施策の統括として、マーケティング戦略の企画・立案と遂行を担当しています。担当領域は、自社メディア・広告・Eコマースプラットフォームの活用、になります。また、社内のインキュベーション施策の推進もミッションのひとつで、デロンギの価値観や製品を新しいマーケティング施策や協働を通じてお客さまに届ける取り組みも行っています。

—デロンギのマーケティング戦略と課題について詳しく教えてください。

井上:昨今はコロナ禍で人々の行動様式が大きく変わりましたよね。自宅で過ごす時間が増えたことで、キッチン家電への需要も大きく伸長しました。ただ、当社のことを知っている方は限られていて、電気ケトルやコンベクションオーブン、全自動コーヒーマシンといった製品の特長を理解していただいている方となるとより限定されている、といった課題がありました。

例えば、当社の全自動コーヒーマシンのエントリーモデルの販売価格は5万4780円(税込)と、一見とても高いように見えます。ただ、お好みのコーヒー豆を買ってきてマシンに投入するだけで、レギュラーコーヒーはもちろん、エスプレッソやカプチーノ、カフェラテやアメリカンコーヒーなど、様々なメニューをボタンひとつで楽しむことができ、お手入れも非常に簡単にできるように工夫が凝らされている製品です。本格コーヒーを提供するバリスタを一人雇ったと考えたら、値段に見合う価値があると感じていただけると思います。

消費者の方がこうした製品の特長を理解するためには、店頭で店員に聞く、カタログで調べる、インターネットで調べる、といった選択肢があります。特に利便性の高いのはインターネットですが、調べた時にすぐに欲しい情報が見つかるか、というと、そうではないことも多いと思います。

そこで私達は、そのギャップを埋めるために様々な取り組みを行っています。自社サイトやECサイト内で提供する情報を拡充したり、商品の特徴が理解できる動画を制作しています。また、ポップアップ型の対話ツールによるコンテンツ誘導やチャットツールによるオンラインでのサポートを開始し、サイト訪問した方に必要な情報を届ける仕組み作りを心掛けています。

コロナ禍という大きな環境の変化の中で、消費者にどのような価値を提供することができるか、それをどんな形でお届けすると最も伝わるのか、を考えて施策を遂行しているのです。

—SNSを使った顧客とのコミュニケーションも強化していますね。

井上:そうですね。2020年は公式InstagramやFacebookを通じての情報発信を強化しました。フォロワー獲得だけでなく、「お客さまとのエンゲージメント」と「お客さまの投稿内容を社内に共有して次の施策へつなげること」を目標に活動しています。

SNSの活用は今期の重点施策のひとつで、2021年12月から公式Twitterを、2022年2月から公式LINEをスタートさせています。こちらもお客さまのより近くで情報をお届けしたい、またお客さまのことをもっと知りたい、という目的で始めたものです。お客さまがどこで情報に触れているか、どのような気持ちで情報に接触しているかという点に気を付けて発信しています。

佐野:SNS施策は、LTVの向上にもつながるためとても重要だと思います。ほかにも、2020年11月に発表したサブスク「ミーオ!デロンギ(MIO! De’Longhi)」も、LTV向上につながる施策ですね。

井上:当社の全自動コーヒーマシン「マグニフィカS (ECAM22112)」を無料で貸与し、毎月もしくは隔月でコーヒー豆を届ける定額制サービスです。ひと月3900円からで、最低契約期間は2年間。契約満了後はコーヒーマシンの所有権がサブスク契約者に移るので、継続して使っていただきたい、という狙いがあります。

佐野:この 1年で在宅の時間が増えたことでサブスク人気が高まり、消費者はサブスクに対してかなり目が肥えてきたと思われます。そんな中でもこのサブスクは在庫がなくなるほど反響があったので、的確にニーズをとらえた事例だと思います。コーヒーは「飲む人は毎日飲む」もの。習慣化できるという点も、サブスクに非常に適していますね。

—佐野さんはエヴァンジェリストとして、マーケティング戦略における「LTV(Life Time Value/生涯顧客価値)」の重視性を啓蒙していらっしゃいますね。詳しく教えてください。

佐野:今は様々な企業がサブスクや定期販売に取り組もうとしていますが、中には、誰も得をしない構造のサービスも存在します。例えば、初回は無料、あるいは低価格で定期購入が始められるというサービスがあります。これは、初めて購入した人の約8割が1カ月で止めてしまううえに、その際に発生する企業側の損失は、サブスクを継続している人たちが負担する構造です。

本来、お客さまに喜んでもらうのであれば、同じサービスを使い続けるほどメリットがあるという構造にすべき。初めて購入した人も2年間継続購入をしている人も、同じ内容のサービスを受けるのはおかしいと思います。

このように、企業・消費者双方が損をしてしまうような構造を是正するためには、「LTV」に重きを置いて商品設計やサービス内容を見直していくことが必要です。サブスク自体が広がっていかない原因にもなります。企業には、お客さまが好んでお金を払ってくれる、長く使いたいと思ってもらえるサービスを提供してほしいと考えているんです。

解約分析を行い、負担のない習慣化をつくる

—企業がLTVを向上させていくためのポイントを教えてください。

佐野:サービスの継続率アップのための施策を戦略的に実施することです。

例えばデロンギさんのような、サブスクを導入している企業について。我々は定期通販の解約分析を行っていますが、解約の一番の理由は「使いきれずに余ってしまうこと」です。実に、解約者の35%がこの理由を述べています。この場合、次の月をスキップしたり、量を減らしたりできるようにすることで、解約を7割抑えることができます。

例えば夫婦で使っている場合、旦那さんが解約したいと考えても、奥さんが「使うから」と言えば解約には至らないわけです。そのため、なるべく家族用や来客用など、様々なライフパターンを提案していくことで、継続を促すことができます。デロンギさんも今後、利用者の方々をどのように定着させるのか、非常に楽しみですね。

井上:そうですね。2年後にマシンの所有権が渡った後も、豆の定期購入だけを継続するパターンや、もっと上位のモデルを勧めるパターンなど、いろいろ準備していきたいと考えています。

コーヒーを飲まれる方は基本的にはコーヒーがずっと生活の一部になっていくと思うので、ずっとデロンギを選んでいただける機会をつくっていければと思っています。


お問い合わせ
株式会社Smash

お問い合わせフォーム:https://www.robee.tech/contact
資料DLフォーム:https://www.robee.tech/ebook

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