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シルバニアファミリーとの「再会」のストーリー「Forever Your Family」

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企業が映像と物語を通じて表現する「ブランデッドコンテンツ」に、近年、国内外で注目が集まります。ブレーン6月号では、「企業の意志を伝える ブランデッドコンテンツ」を特集。本記事ではその中からエポック社「シルバニアファミリー」の事例をご紹介します。

1985年に生まれたシルバニアファミリーは、2020年に35周年を迎えた。それを記念し、同11月にグローバルブランドムービー「Forever Your Family」を公開。シルバニアファミリーの世界に迷い込んだ女の子と、フレアという名のショコラウサギとの友情を描いた動画だ。

大人のファンの顕在化がきっかけに

女の子とフレアは、一緒にオムライスを食べたり、メイクをしておそろいのお花のブローチをつけてみたり、絵本を読んだりして楽しい時を過ごす。でも少しずつ年を重ねた女の子は、いつしか大人びた表情に。夕暮れの中、ついにフレアの元を去ってしまう……。時は経ち、またフレアの元を訪れる人が。それは笑みを浮かべる男の子だった。その後ろから現れたのは、お母さんと思しき女性。女性は、胸にあの日のブローチを飾って見せる——。シルバニアファミリーで遊んだ時間を思い出させる動画は、SNSを中心に大きな反響を呼んだ。

この動画のプロジェクトチームのひとり、エポック社 マーケティング部 小野百合子さんは、制作の背景をこう話す。

「元々子ども用のおもちゃとしての側面が強かったシルバニアファミリーですが、30周年を迎えた頃から徐々に、InstagramなどのSNSを中心に、大人のファンの方々が顕在化してきました。2018年3月から全国で開催している『シルバニアファミリー展』でも、親子連れだけではなく、若い女性の方々が増えてきて。昔遊んでくれていた方々に改めてシルバニアファミリーのことを思い出してもらいたい、そして改めてブランドの価値を訴求していきたいと考え、35周年の企画を大々的に実施することにしました」。

その一環で制作されたのが、今回のブランドムービーだ。「普段ブランドと接点のある人以外とも、出会いのきっかけを設けたい」と考え、SNS上で拡散される可能性の高い、ブランドムービーを制作することになった。

エポック社シルバニアファミリーのグローバルブランドムービー「Forever Your Family」。BGMは、なんとオーケストラ演奏。

ブランドの3つの価値を伝える

動画制作において注力したのは、シルバニアファミリーの3つの価値が伝わるものにすることだった。電通zeroのアートディレクター 塚本哲也さんは「思わず没入してしまうクオリティの高い『世界観』。大人になっても色あせないシルバニアとの関係の『永遠性』。世代や性別を超えて同じ体験を共有できる『継承性』。その3つを価値とし、動画を見た親子が同じような想いを共有できることにストーリーの重点をおきました」と説明する。

加えて、動画はどの国の人が見ても理解できるよう、言葉に頼らない表現に。世界70カ国で販売されているシルバニアファミリーならではの配慮がなされた。

女の子がフレアの家を訪れるシーンから始まる本作だが、シルバニアファミリーの世界に人間が登場するのは初めてのことだ。違和感が生じないよう、小林雅仁監督を中心に試行錯誤したという。

「たとえばコマ数。キャラクターはコマ撮りですが、人間は違います。両者の最適なコマ数と相性を検証しました。また“シルバニアファミリーが実際にできないことはさせない”というルールのもと制作しています。なので、話さないし笑わない、瞬きもしない。いつものまま、耳のちょっとした動き、アングル、ライティングなどディテールの積み重ねで、リアリティと想像力をかき立てる方法を模索しました」(塚本さん)。

また、最後のシーンで扉を開ける子どもを男の子にしたのには、ある想いが。「国や人種、ジェンダーや文化の垣根を超えた、シルバニアファミリーのあたたかい世界観を表現したかったためです。誰が遊んでもいい、誰にでも遊んでもらいたい、そんなブランドのメッセージを込めています」と小野さんは話す。

Vコンの段階でエポック社の社内でも共有したところ、「胸が熱くなった」というコメントや、子どものいる親からの共感の声が寄せられた。そして11月の動画を公開した後は、幼い頃にシルバニアファミリーで遊んでいた人々を中心に、「変わらずに待っていてくれたんだ」「実家のシルバニアに会いたくなった」など、多くの声が集まっている。

「動画自体のクオリティが高かったからこそ、動画を通じて伝えたいメッセージの方に注目してもらえたのだと思います。共感してもらうことで、ブランドへのロイヤルティも高まります。また今回動画を公開してみて、ブランドとしてのメッセージがこれまで十分に伝えられていなかったことが浮き彫りになり、今後どのような発信をしていくべきか指針ができました。ひとつメッセージを発信すると、今回のように反響をいただけるので、今度はそこにまた応えられるような取り組みをしていきたいと思っています」(小野さん)。

エポック社
マーケティング部
小野百合子さん

 

スタッフリスト

企画制作
電通+TYO MONSTER+xpd dwarf
CD
木村啓太
企画
太田久美子
C
小山孝
AD
塚本哲也
STPL
加藤倫子、関僚
CPr
押尾昌美
Pr
羽鳥貴晴、松本紀子、伊藤大樹
PM
濵谷仁美、平松桃
演出
小林雅仁
撮影
酒井潤
照明
新井朱句世
美術
鈴木千佳子
アニメ
垣内由加利
編集
雨宮信二(オフライン)、帆足誠(オンライン)
カラリスト
平田藍
音楽
藤井意弘
MA
鈴木博之
ST
下山さつき
HM
光野ひとみ
CAS
中村裕之、長谷川祐里
AE
田中隆一郎
出演
シー ビビアン、カーター ユキコ、伊藤リリー、リヤマ レオ、ティー ローサ

ECD:エグゼクティブクリエイティブディレクター/CD:クリエイティブディレクター/AD:アートディレクター/企画:プランナー/C:コピーライター/STPL:ストラテジックプランナー/D:デザイナー/I:イラストレーター/CPr:クリエイティブプロデューサー/Pr:プロデューサー/PM:プロダクションマネージャー/演出:ディレクター/TD:テクニカルディレクター/PGR:プログラマー/FE:フロントエンドエンジニア/SE:音響効果/ST:スタイリスト/HM:ヘアメイク/CRD:コーディネーター/CAS:キャスティング/AE:アカウントエグゼクティブ(営業)/NA:ナレーター

 

月刊『ブレーン』6月号

 

【特集】
企業の意志を伝える ブランデッドコンテンツ

・マンダム/ギャツビー「カッコいいは、変わる。」
・エポック社/シルバニアファミリー「Forever Your Family」
・ブラザー工業「ブラザーからくり」篇
・企業が考えるブランデッドコンテンツの定義と活用法
文:小助川雅人(資生堂)

【青山デザイン会議】
偏愛なるクリエイターたち

・イソガイヒトヒサ
・加藤優一・菅谷真央(銭湯ぐらし)
・岸本拓也