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サイカとカゼプロが提携で新サービス「ROIは禁句」だったクリエイティブが「狙って業績を上げる」武器になる!

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テクノロジーの進化が著しい広告業界において、いまだ「経験と勘」に頼る部分が大きいのがクリエイティブだ。テレビCM分析において140社以上の実績があり、国内No.1の評価(2019年/ショッパーズアイ調査)を受けるサイカは、クリエイティブ・エージェンシーkazepro(カゼプロ)との提携を発表し、クリエイティブの分析・制作サービスを開始した。そのサービスとは「ADVA CREATOR」。広告のPDCA全てをデータサイエンスの技術で最適化し、企業の広告ROIを最大化するサービス群「ADVA」のひとつを構成する。米国の脳科学マーケティング企業であるSpark Neuro Japanと連携した脳波解析に加え、実制作の部分でこの度、カゼプロとの連携を発表。「狙って業績を上げる」クリエイティブ制作を実現する鍵は何か。サイカ、カゼプロの両代表に話を聞いた。

左から、サイカ 平尾喜昭氏、カゼプロ 戸練直木氏。

「ROIは禁句」から脱し、売れるクリエイティブを

—テレビを始めとするオフラインの広告でも、クリエイティブの効果測定を求める声は大きくなっています。クリエイティブ・エージェンシーkazepro(以下、カゼプロ)を立ち上げ、一流クリエイターとのプロジェクトを数多く手がけてきた戸練さんは、こうした潮流をどう捉えていますか。

戸練:当然ながら、広告の目的は広告主の課題を解決することなので、クリエイティブも企業の業績に貢献できたか否かで評価されるべきです。ところが長く広告業界では、「好感度の高さ」などの指標で評価され、端的に言えば“芸術的にいい作品”をつくることが優先されがちでした。まず前提として「売れるクリエイティブ」を目指すべきで、効果測定を求める声が大きくなっているのは、そうした広告クリエイティブの本質的な役割に対する広告主の意識が高まっているということだと思います。

以前、ソーシャルゲーム事業を行う企業のテレビCMを制作したときのこと。広告主は、「これまで様々に趣向を凝らしたクリエイティブに挑戦してきたが、なかなか登録者数が増えない」という悩みを抱えていました。そこで、私たちは実際にゲームをプレイしている画面を15秒、ただただ映すCMを提案しました。工夫のないクリエイティブだと思われるかもしれませんが、放送後、登録者が一気に増加。売れるクリエイティブを追求したからこそ得られた成果ですね。今はさらにコミュニケーション環境が複雑化しているから、何に、どう貢献するのかは、もっとシビアに追求しないといけなくなっています。

平尾:「業績への貢献で評価されるべき」という意見について、まったく同じ思いです。私たちも、広告主の「テレビCMは事業成果に対する貢献度が定量化できない」といった声をよく聞いてきました。「事業成果への貢献の定量化」という、オンライン広告なら当たり前に実現されていることが、テレビCMではできていない。この課題に応えるため、サイカが提供する「ADVA」では、テレビCMの出稿プロセスすべてにデータサイエンスを実装することで、定量的な判断にもとづいてROI最大化を図れるようにしました。

まだリリースから半年程度ですが、すでにROIの大幅改善の実績も出ていて、テレビCM出稿において、定量化により得られる成果は大きいと感じています。「ADVA」では広告全体の予算配分から、テレビCMのプランニング・バイイングまでをデータ分析にもとづき行いますが、広告主が不確実な投資を強いられている領域を減らすためには、クリエイティブ制作の領域まで分析を拡張すべきだと考えました。

データサイエンスにもとづくマーケティング最適化ソリューション「ADVA」。「ADVA MAGELLAN」でオンライン広告・オフライン広告を統合的に分析し、マーケティング戦略全体の最適な予算配分をシミュレーション。「ADVA PLANNER」でテレビCMのメディアプランニングの最適化を行い、「ADVA BUYER」でプランニングに沿って成果報酬型で買い付けを行う。2020年12月にサービス開始した「ADVA CREATOR」で、クリエイティブの制作まで一気通貫で担うサービスになった。

戸練:いま「ROI」という言葉が出ましたが、広告クリエイティブの現場ではROIという言葉は、ある種“禁句”のようになっていました。それは事業成果とクリエイティブとの関係があまりにもブラックボックスだったから。でも、本当はクリエイター自身も「事業に貢献したい」「制作した広告がどれだけ事業に貢献したか知りたい」と思っているはずです。これが見えるようになると、クリエイティブのつくり方も変わるのではないかと思います。

—両社の協業は、広告クリエイティブの効果分析にとどまらず、企業の枠組みを越えてクリエイターをアサインし、分析起点で制作まで担う、広告業界においても類を見ない取り組みですね。

戸練:業績を上げるクリエイティブにするためには、「効果の定量化」とともに「いかに案件ごとに適切なクリエイターをアサインするか」も大事です。しかし従来は、広告会社側の「社内クリエイターに依頼しなければならない」といった事情が優先されるケースも多々ありました。

平尾:一口に「広告クリエイティブ」と言っても、料理に「和食」「フレンチ」「イタリアン」など異なる分野が存在するように、広告クリエイティブも案件によって大きく特性が異なります。和食をつくりたい時にフレンチのシェフに頼むのはおかしいですよね。しかし実態として、クリエイティブ制作ではそうした状況が起きてしまっている。そこで、限られたクリエイターに縛られず、案件に合わせて外部のクリエイターによる制作チームの編成をプロデュースできるカゼプロさんとの協業に至ったわけです。

効果の可視化だけでなく成果につながる要素を特定する

—テレビCMクリエイティブの分析・制作を行うサービス「ADVA CREATOR」がスタートしました。これは従来のA/Bテストといったクリエイティブ調査と何が違うのでしょうか。

平尾:「ADVA CREATOR」の分析では、脳波解析とデータサイエンスの技術を用いることで、「成果につながるクリエイティブの要素」を特定します。例えば「女性の著名人を起用することで、購買意欲の向上につながる」「CMの前半で商品名を提示することで、記憶の定着につながる」のような、細かな構成・演出の粒度でクリエイティブの改善点を見つけられます。

これまでもA/Bテストや脳波検査などのクリエイティブ効果測定の手法はそれぞれ存在していましたが、「どのクリエイティブの成果が高いか」「クリエイティブに視聴者がどう反応するか」は明らかにできても、「どのようにクリエイティブを改善すれば成果が得られるか」まではわからず、具体的なクリエイティブ制作のアクションまで落とし込めていませんでした。私たちは分析によって特定した「事業成果に貢献するクリエイティブの構成や演出」を「クリエイティブ・レシピ」と呼んでいます。

従来のクリエイティブ効果測定手法では「どのような要素が作用して、良い成果につながったのか」がわからず、クリエイティブ制作の再現性が課題になっていた。「ADVA CREATOR」では、脳波解析とデータサイエンスの技術を掛け合わせることで、テレビCMクリエイティブの効果を可視化し、成果につながった点や改善すべき点を導き出す。分析には脳波データやアンケートデータを用い、これらの関連性をデータサイエンスの技術で明らかにしていく。まず、広告の成果に関するアンケートデータと、脳波データとを関連づけて、成果につながる反応(脳波の特徴)を特定する〈分析1〉。次に脳波データを、クリエイティブの要素に関するアンケートデータと関連づけることで、該当の反応(脳波の特徴)を引き起こすクリエイティブ要素を特定する〈分析2〉。この2段階の分析によって、細かな演出・構成といった粒度で、「成果につながるクリエイティブの要素」の特定を可能にした。

戸練:つまり分析結果から、制作上の「与件」が得られるわけですね。たとえば、与件の提供でとどめずに「分析して、自動で最適なクリエイティブをつくります」と言ったほうが、ひょっとしたら価値としてはわかりやすいかもしれませんが、サイカさんはあえて「レシピの提供」にとどめられたのですよね。

平尾:事業成果を最大化するクリエイティブ分析を追求した結果、そうしました。実は、「分析結果に基づき、AIで広告シナリオを自動生成する」ことは、技術的には可能です。しかし、これでは成功例をもとにした「見たことのあるCM」になってしまうのです。人は飽きる生き物なので、非連続な成果を勝ち取るためには、最後の最後で「クリエイティブジャンプ」、過去からの逸脱が必要。

なので「自動で料理して提供します」ではなく、分析で「レシピ」をつくった上で、創造性にあふれる「シェフ」に調理してもらうのがもっとも良い形だと考えました。カゼプロさんは、さまざまなジャンルの“一流シェフ”とのネットワークを持っていらっしゃるようなもの。レシピをお渡しして、適した人選で調理をしていただくことで、非連続な成果をもたらすクリエイティブ制作が実現されます。

たとえばAIでクリエイティブを自動生成したとすると、表現が過去の焼き増しになってしまう。「ADVA CREATOR」では、制作のフェーズでは“人”の創造性が欠かせないと考え、さまざまな一流クリエイターとのネットワークを持つクリエイティブ・エージェンシー、カゼプロと協業。分析結果を起点に、制作をクリエイターが担う。分析で「売れる要素」を押さえた上で、人による表現で非連続な成果を追求できる体制を実現した。

戸練:制作の現場では与件が曖昧なことが原因で、行き違いやトラブルがたびたび生じます。「なんとなくいい」「宣伝部長がこれは違うと言っている」ではなく、データとして目に見える形で与件が示されるようになれば、クリエイターにとっても、どこで力を発揮すべきかが明確になる利点があります。これまでは、有名な賞を取ることを意識して制作に臨むクリエイターもいたと思いますが、「求められた与件をクリアして、過去にはない新たな表現を生み出すことで事業に貢献する」という明確なゴールが見えれば、取り組み方も自ずと変わってくるのではないかと思います。

平尾:さらに今後は、分析の精度アップでもカゼプロさんと連携していきたいです。クリエイター視点で「クリエイティブの要素」をいかに分解して検証するか、ご意見をいただきたいと思っています。成果につながる要素を絞りこむことで、シェフが腕をふるいやすい環境をつくっていきたいですね。

—両社のパートナーシップは、広告主やクリエイターにどのような影響を与えるでしょうか。

戸練:ADK時代から長く広告業界にいますが今後、広告が急速に変わっていく予感がしています。効果が可視化できるオンライン広告の到来で、広告主の戦略策定の考えも変わってきている。「売上の何%は広告費に回しておこう」といった考え方ではなく、ROIのような指標も広告業界に自然と持ち込まれていく。この動きを前にして、クリエイターは怖気づく必要はないし、むしろ仕事がやりやすくなるのではないでしょうか。

私としては、この仕組みを活用して、優秀なクリエイターにどんどん技術を発揮してもらえるようなチームを組んでいきたい。クリエイティブが「売上に貢献している」としっかり裏付けられていくことで、新たな挑戦もできるのではないかと思います。

平尾:このパートナーシップを通じて実現したいことは、「広告主の広告ROIを最大化したい」の一言に尽きます。広告の予算配分やテレビCMのプランニング・バイイングは、データサイエンスで確実にROI改善できることが、すでに「ADVA」の実績からも明らかになっています。その上で、最後の砦であり、非連続な成果アップが見込めるクリエイティブ制作の部分でも、カゼプロさんと「狙って効果を出す」ことを可能にしていきます。

—「業界」という広い視野で見るとどのような影響があるでしょうか。

平尾:2つあります。ひとつは、従来テレビCMにおいてはPDCAのC、効果検証の部分でスタックしてしまい、なかなかPDCAを回せないジレンマがありました。これを解決することで、テレビCMは「狙って、事業成果につなげられる」という新しい時代をつくりたいです。もうひとつは、その結果として、広告費が適切に支払われ、メディアの価値が上がっていく良いループをつくりたい。

今は、テレビCMにおいて「効果がわからないから広告主が広告費を割けない」→「広告費が減るのでメディア側のコンテンツ制作費が少なくなる」→「制作費不足で良いコンテンツがつくれない」→「メディアの価値が下がり、広告価値も下がる」……といった悪循環が生まれても仕方がない状況です。その原因は「広告による事業貢献度が明確にわからないこと」に尽きます。テレビCMが「狙って、事業成果につなげられるもの」になることで、広告主だけでなく、メディア、視聴者までもがハッピーになるはず。そんな世界観を実現させていきます。

あえて“レシピ”までしか提供しないことに意味があります。

サイカ 代表取締役CEO 平尾喜昭氏
2012年慶應義塾大学総合政策学部卒業。父親の勤務先の倒産にまつわる体験をしたこと、また大学在学中に統計分析を学んだことを契機に、統計分析という手法に経営支援の可能性を見出し、2012年2月にサイカを設立。設立以来、各種ツール開発におけるプロダクトオーナーを歴任してきた。

 

“レシピは重要”クリエイターは与件を必要としていたんです。

カゼプロ 代表取締役 戸練直木氏
1986 年第一企画(現・ADK)に入社。2004年10月に退社し、同年11月、リアルタイムクリエイティブエージェンシー、風とバラッドの設立に参加。2006年12月「kazepro」を設立。プロデュース主体の会社として、トップクリエイターとのネットワークを武器に、クオリティの高い広告作品を手掛ける。

 



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