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博報堂DYグループがサービスとしての広告を提唱 産業そのもののDXを目指す「AaaS」とは何か?

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博報堂DYグループは2020年12月、広告メディアビジネスの次世代モデル「AaaS」の構想を発表した。サブスクリプションモデルが浸透するなど、製造業であってもサービス産業化していく今、クライアント企業においてはDXの推進でビジネスモデル自体が大きく変容している。それでは、ビジネスモデルの大変革の真っただ中にあるクライアント企業と相対する広告産業には、はたして変革は起きているのだろうか。
今こそ、広告という産業にイノベーションが必要とされている。「広告をサービスとして提供する」、「AaaS」の構想を推進する、博報堂・博報堂DYメディアパートナーズ常務執行役員の安藤元博氏がその全容を語る。

広告産業にも求められる「サービス化」という進化

デジタル技術の進歩は、情報の記録や加工、活用の精度や速度を飛躍的に向上させた。これにともない、あらゆる産業で従来の「モノ」から「サービス」への提供価値の転換が起きている。多くの企業が事業のデジタル・トランスフォーメーション(DX)に取り組み、既存モデルの変革に挑んでいる状況だ。

では多様な産業の企業に対してマーケティング活動を支援する広告産業ではどうだろうか。安藤氏は「自分たちが属する広告産業でDXは進んでいるのか、心許ないところがあった」と話す。広告投資のデジタルシフトは進んでいるが、それは産業としてのDXとは言えないのではないかとの疑問を抱いていたという。

そもそも広告ビジネスはサービス業ではないか。変革が必要なのか、という問いもあるだろう。しかし、この点についても安藤氏は「ビジネスの基盤は広告メディアの取引とそれにともなう手数料。『枠』そのものは『モノ』ではないが、決められた価格の枠を都度売り買いしていると考えると極めて『モノ』的である」と指摘する。

さらに「ユーザーが求めることを常時接続的なサービスによって実現し、より良い状態へ導くことこそがサービス化」と定義。広告産業も広告枠の売買ではなく、広告枠と関連する情報を活用した効果を提供する方向へ価値を転換する「サービス化」が必要と考えたのだという。

また、社会環境の変化やテクノロジーの進化により、広告主の効果に対する要求は加速している。テレビとデジタルを横断した効果の可視化、投資配分の最適化に対するニーズは高い。そうした広告主のニーズを受けて、広告運用やデータ分析などに関するソリューションが複数登場し、メディア別、目的別など領域単位の個別最適をうたっている。

しかし、カオス化したソリューション群の中から、広告主が必要なものを選び取るのは難しい。広告主が求めるのはマスやデジタルを統合した対応、さらにはマーケティング活動全体の事業成果に貢献する広告活用なのだ。

こうした広告主の変化、ソリューションツールの多様化、メディアの進化と統合マーケティングへのニーズを背景に、広告メディアビジネス全体が向かうべき方向を考え、誕生したのが広告メディアビジネスのDX、「AaaS(Advertising as a Service)」構想である。

独自のデータ基盤で「サービス」を提供するAaaS

昨今、広告の投資効果を可視化したいという広告主の声を受け、多様な指標やデータが提供されるようになっている。しかし、メディアごとに異なる取引や評価の指標が混在し、混乱に拍車をかけている状況だ。結果的に広告主側のマーケティング戦略上の目標及びその評価指標と、それに対するメディアの売買方法が乖離している状態が続いているのが現状だ。

そこで「AaaS」では、独自のデータウェアハウス(DWH)を構築。これを基盤として統合メディア運用を実現するサービスの提供を目指した【図表1】。

図表1 AaaSの目的

基盤となるDWHには、テレビ・デジタル媒体のデータや、それらを横断した調査データ、博報堂DYグループが蓄積してきた生活者データを、AIなどを活用したアルゴリズムによって統合。これを土台にプランニング、バイイング、モニタリングを連動させる統合メディア運用ダッシュボードを提供・活用することを基本のサービスとする。

さらに、基本サービスをもとにコンサルタントを加えることで広告主のKPIや事業のKGI実現を目指す付加価値サービスが構想の全容である。

AaaSが目指すところは、分断され可視化できていない要素が多かったために広告メディア活動に生じかねなかった「無駄」を、テクノロジーによって排除し「メディア投資効果」を最大化することで広告主の事業成長に貢献することにある。

これまでも、デジタルメディアに関しては、データドリブンマーケティングを実現できていた面もある。しかし、広告メディア全体をデジタル的に常時接続し運用・最適化することはできていなかった。

また、テレビを始めとするマス広告もデータドリブンでプランニングまではできるようにもなっているが、バイイング部分まで完全につなげることは難しかった。一方のメディア側も、テレビは日々刻々と変化する状況に即時的な対応ができないなど固有の事情もあった。

安藤氏は「こうした環境を接続し、統合的に運用することができれば、広告主にはより有効で価値のある媒体の利用を勧めることができる。実現には媒体側の協力も不可欠だが、ともにこうした構想を進めていくことが、ひいては媒体各社の価値をより大きくすることにつながると考えている」と話す。

広告産業は変われるか?関わる全ての業種に価値を提供

AaaS構想は、次の3つの要素で構成される。

まずは業界で他社に先駆けて構築済みのデータ基盤。次にメディアデータと博報堂DYグループが保有するデータを連携させて開発を続けているアルゴリズム。3つ目が広告主の成果創出にコミットする専門コンサルティング集団とダッシュボードだ。この3要素によって業界最速、常時接続型のサービスを実現する。AaaSを導入することで広告主も、テレビとデジタルなど、社内で別々になっている組織を統合し「ワンチーム」で運用することの有効性が生まれる。「AaaSは広告主となる企業の組織のあり方や働き方を変革するきっかけにもなる」と安藤氏は話す。

AaaS構想は博報堂DYグループのみならず、広告産業とその周辺の全ての業種に関わる。安藤氏は「Advertising as a Serviceと広く言っているのは、広告産業全体がそのように変わっていかないといけないと思っているから」だと話す。

広告は、生活者と広告主との間で新しい価値を創造していくためにある。広告事業者は価値創造に対して真摯に向き合い、常にダイナミックに取り組み、発展を遂げてきた。今、考えなければならないのは、デジタル技術が発展を続ける世界で、これまでと同様もしくはこれまで以上に価値創造に貢献するために何をするべきなのかということだ。この問いに対する博報堂DYグループのひとつの提案がAaaSなのである

博報堂
博報堂DYメディアパートナーズ
常務執行役員
安藤元博氏

1988年博報堂入社。以来、数多くの企業の事業/商品開発、統合コミュニケーション開発、グローバルブランディングに従事。現在、博報堂DYグループの“生活者データ・ドリブン”マーケティングの中核推進組織を率いるとともに、広告メディアビジネスの次世代型モデルAaaS(Advertising as a Service)の推進責任者をつとめる。受賞歴:ACC(グランプリ)、Asian Marketing Effctivenss(Best Integrated Marketing Campaign)他。著書『マーケティング立国ニッポンへ-デジタル時代、再生のカギはCMO機能』『デジタルで変わる 広報コミュニケーション基礎』(ともに共著)他。


お問い合わせ
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ 広報室

TEL:03-6441-9347
MAIL:mp.webmaster@hakuhodody-media.co.jp
URL:https://www.hakuhodody-media.co.jp/aaas/