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ライトな解約防ぎ真のニーズ探る 顧客と対話するチャットボット

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『パーソル パ・リーグTV』では、試合映像以外にも多くの動画を配信している

パシフィックリーグマーケティングはこのほど、同社によるパ・リーグ公式動画配信サービス『パーソル パ・リーグTV』に、解約時に利用者と対話するチャットボット「Smash」を導入した。リテンション(顧客の維持)ボットを標榜し、定額制サービスなどを解約する際、対話形式で個々の利用者と自動でコミュニケーションを図るサービスだ。開発・運営はSmash(東京・渋谷)。

パシフィックリーグマーケティングの荒井勇気・メディア事業部長は「Smash」を導入した狙いについて、「『パーソル パ・リーグTV』利用者の真の要望をつかみ、新しいファンの獲得に生かすこと」と話す。

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Smash石山真也社長の「人と直に話しているかのような感覚のボット」という言葉に共感したという、パシフィックリーグマーケティングの荒井勇気・メディア事業部長

「解約時のコミュニケーションと、新たなファンを増やすこと、これらは一見無関係のように見えるが、根底は同じだと考えている。いま視聴いただいている方が実際のところ、どのようなものを求めていたのかがわからないまま、新たなユーザーを増やすことは難しい」(荒井氏)

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、一部の都府県では2020年〜2021年にかけ、無観客試合がたびたび開催された。1試合あたり数万人の観戦がなくなってしまうため、足元の収入以上に、中長期的な野球全体のファン形成という面でもコロナ禍は濃い影を落とす。球場へ足を運べない中、『パーソル パ・リーグTV』はリーグにとって重要なファンとの接点になっている。

『パーソル パ・リーグTV』では、パ・リーグ6球団の一軍や二軍の試合をはじめ、春季キャンプ、ファン感謝イベント、入団会見などを配信し、さまざまな角度からパ・リーグの魅力を伝えている。サービスの解約を検討している人が、こうしたコンテンツがあることをそもそも知らなかった、ということもあり得る。サービス内容の理解不足による解約の抑止も、「Smash」導入の目的のひとつだ。

「アンケートでは見えない顧客の真意は、会話の中に隠されている」と話すSmashの石山真也社長

利用者の人となりを明らかに

では、ユーザーの理解度や真の要望をどのように把握するのか。Smashの石山真也社長は、サービスの特徴を、「お客さま一人ひとりとの会話データを分析して、解約理由に応じたコミュニケーションを図れること」と説明する。

「〈解約〉という接点だからこそ、サービスの改善ポイントや、期待していたが叶わなかった事柄、求めていたことがわかる。こうしたことを適切に引き出していくためにリテンションボット『Smash』では、個々の利用者の人物像、タイプを、会話データに基づいて明らかにしていく。場合によっては1000件〜2000件でも一定程度の有意差がわかってくる」(石山氏)

「Smash」のイメージ(画面右側)。単にテキストでユーザーとやり取りするだけでなく、会話の間を図ったり、表情を変えたりと、存在感のある対話ができる

「Smash」が目指すのは「人間と直に話しているような感覚を覚える、相手の空気を読むチャットボット」。

「たとえば反応速度。ボットがある質問を投げかけたとき、ユーザーがどれくらいの時間をかけて回答を入力するかによって、再びボットがメッセージを出すスピードを変える。コールセンターでも相手の話すスピードにある程度合わせるほうが、心を開いてくれるという結果が出ている。また、同じメッセージを出すにしても、ユーザーから入力された言葉が、ポジティブか、ネガティブかによって、ボットの表情を変えることもできる。単なる対話型のアンケートではなく、ユーザーにとって自然な会話であることが理想」(石山氏)

『パーソル パ・リーグTV』では、ボットを開いた人の7〜8割が、そのまま会話に入っていったという。荒井氏は、「まだ導入から短い期間ながら一定程度の実態が見えてきており、質的な改善がしやすいツールなのではないかとも思う」と述べる。

そのほかの手法と〈リテンションボット〉の比較。インタビューを基に編集部作成

ひとくちに〈ファン〉と言っても、その熱狂度合いは人によってさまざまだ。その心理は杓子定規のアンケートでは測れないし、ましてや、動線を複雑にして解約を防ごうとするなら、失うもののほうが大きい。

パシフィックリーグマーケティングのミッションは、プロ野球の新しいファンを生み出すことにある。その主戦場はWebだ。「個々の球団のマーケティングは本拠地に根ざすものがメインとなるが、Webならエリアに関係なく、プロ野球全体のファン獲得に向けて動ける。共同事業会社としての当社の意義は、まさにそこにある」と荒井氏は言う。

「(その重要な接点である)『パーソル パ・リーグTV』のサービスがファンの皆さまにどのように映っていたのか。それを見つけることが、新たなファンを得ていくための第一歩。ユーザーが〈解約を検討する〉タイミングを起点として、ユーザーと始まる対話を分析して、ファンの拡大に生かしていきたい」(荒井氏)

 

(写真右)
荒井 勇気氏
パシフィックリーグマーケティング メディア事業本部 メディア事業部長 兼 IT統括部長

楽天を経て、2015年4月、パシフィックリーグマーケティングへ入社。パーソル パ・リーグTVやパ・リーグ.comなどのメディア事業および6球団公式サイトなどのIT事業を担当。

 

(写真左)
石山 真也氏
Smash 代表取締役CEO

東京大学文学部卒業後、2020年4月、Macbee Planetに入社。リテンションマーケティングのサポートを行う部署に配属後、解約抑止の分析から解約時のオペレーターと顧客の会話データの解析といった幅広い業務に携わる。2021年3月31日、事業部が「株式会社Smash」としてスピンオフし、同日、代表取締役CEOに就任。

 



株式会社Smash
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