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SNSの「話題」から読み解く最新トレンド Vol.2 星野源&新垣結衣結婚で「神対応」した「どん兵衛」は、以前から話題化のエキスパートだった(後編)

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【前回】「SNSの「話題」から読み解く最新トレンド Vol.2 星野源&新垣結衣結婚で「神対応」した「どん兵衛」は、以前から話題化のエキスパートだった(前編)」はこちら

桜美林大学准教授/マーケティング・コンサルタント
西山 守

商品、映画、広告キャンペーンなど、さまざまな領域で生まれるヒット。その背景には、SNSや多種多様なメディアから情報が拡がり、話題が伝搬していくことでブーム化していく、近年はそんな現象が見られるようになっています。こうした話題になった事例を分析、そのしくみを解説した書籍『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』の著者である西山守さんが、最近話題になった事象について読み解きます。

前回に論じた、「どん兵衛」の話題に関して、より詳しく見ていきたいと思います。

下図は、2019年以降の「どん兵衛」に関するTwitter上の話題量(ツイート数)です。

直近の星野源と新垣結衣の結婚報道に関する(5月19日~)話題意以外にも過去に何度も話題化していることがわかります。

図 「どん兵衛」に関するTwitterの話題量(「どんぎつね」等の広告関連の話題も含む;2019年1月1日~2021年6月14日;週別)
BuzzSpreader Powered by クチコミ@係長のデータから推計
出所/著者

話題を生み出す「しくみ」のつくり方 
著:西山守
編集協力:濱窪大洋
定価:1980円(本体価格+税10%)
ISBN: 978-488335-508-2

その多くは、「どん兵衛」公式Twitterアカウントから発信されたものですが、当アカウントのフォロワー数は17万件ですが、大手企業の有名ブランドの中では、際立って多いわけではありません(低価格の商品であるから、やむを得ないところはありますが)。

ただ、前回も述べた、星野源と新垣結衣の結婚に関する投稿は、16.1万件の「いいね」を集めています。つまり「どん兵衛」のアカウントから発信された情報は、フォロワーに限定されない、強い「拡散力」を備えているのです。

実際、「どん兵衛」の公式アカウントからのツイートは、2021年の「ヒートテックどん兵衛」の発売告知、マヂカルラブリーのM-1グランプリ優勝記念像のレプリカプレゼントキャンペーンの告知、2020年の「転生したらスライムだった件」とのコラボの「転生したらどん兵衛天ぷらそばだった件」の動画の配信、アニメ「結城友奈は勇者である」とのコラボキャンペーン2019年のアニメ「ケムリクサ」とのコラボ動画の配信等があります。

これらを見ていくと、「どん兵衛」は、アニメコラボをはじめとして、様々な「面白ネタ」を継続的に提供しており、それが都度話題化していることがわかります。

また、「どん兵衛」の商品は、「12万食に1個よりもう少し高い確率」(日清食品の担当者による)で、「ハート形のおあげ」が挿入されているそうですが、購入者から、それを「発見した!」という投稿が画像とともになされたりもしています。

これらの投稿に限らず、「どん兵衛」は、カップ麺カテゴリーの中でも、消費者から話題にされやすいブランドで、ネタがなくとも、継続的に話題が発生しています。

他の情報源として、カップヌードル公式アカウントからの投稿や、ローソンとのコラボキャンペーンなど、多種多様なソースから情報が発信され、さらにそれらも大きく拡散しています。

「どん兵衛」が継続的に話題化するのは、様々な話題化施策を連続的に展開しているということももちろんありますが、そのような施策の蓄積によって、「どん兵衛」が、顧客やSNSユーザーから「面白いことをやってくれる、親しみのあるブランド」というパーセプションを獲得しているという点も忘れてはなりません。

つまり、「どん兵衛」は、日々流れていてく「ネタ」(=フロー)を継続的に提供していくことによって、「面白く、親しみやすいブランド」というストックを獲得しているのです。

「どん兵衛」に限らず、日清食品のブランド(「カップヌードル」、「チキンラーメン」等)は、歴史ある定番でありつつも、SNSで継続的に話題にされるような、親しみのあるパーソナリティを築いていますが、それは「話題化」をうまく活用して、顧客、SNSユーザーとともに構築されたものと言えるでしょう。

同社の広告、マーケティング・コミュニケーションの手法は、短期的な話題化施策のみでなく、現代におけるブランド構築のあり方についても、学ぶところは大きいのです。

西山守(にしやま・まもる)
マーケティングコンサルタント/桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

1998年3月、東京大学大学院理学系研究科修士課程修了(物理学専攻)、同年4月電通総研入社。2016年12月電通を退社、2017年5月西山コミュニケーション研究所代表。2021年4月に桜美林大学 ビジネスマネジメント学群 准教授就任(主に、広告・マーケティングを教える)。

電通総研においては、主に、情報メディア関連、地域開発関連のリサーチ、コンサルティング業務に従事。電通では、主にマーケティングメソッド、ツールの開発やソーシャルメディアマーケティング、特にソーシャルリスニングの業務に従事。ソーシャルメディア、戦略PR等を活用した、リスクマネジメント、レピュテーションマネジメントに多数の実績あり。大手企業のソーシャルリスニング、およびマーケティング支援業務、官公庁や大手メディア等のリスクモニタリング、リスクコンサルティング実績もあり。

独立後は、電通グループを中心に、ソーシャルリスニングやSNSマーケティングをはじめとするコンサルティング業務や人材育成を行う。

これまでの著書(共著含む)に、『情報メディア白書』(ダイヤモンド社)の企画・編集・執筆、『クロスイッチ -電通式クロスメディアコミュニケーションのつくりかた-』(ダイヤモンド社)の企画・執筆、『リッスンファースト!』(翔泳社)の翻訳出版を監修、『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(フィギュール彩)の執筆(共著)。