大貫卓也デザイン、ARを活用した「ヒロシマ・アピールズ」のポスターが公開

日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)と広島国際文化財団、ヒロシマ平和創造基金の3団体の主催による「ヒロシマ・アピールズ」ポスターが公開された。

JAGDA、広島国際文化財団、ヒロシマ平和創造基金が主催・実施している「ヒロシマ・アピールズ」は、1983年にスタート。言葉を超えて“ヒロシマの心”を訴えるポスターを共同制作し、国内外に向けて平和を呼びかけるキャンペーンだ。第1回作品として、当時JAGDA会長の故・亀倉雄策氏による「燃え落ちる蝶」を発表。その後、毎年JAGDAの会員1名がボランティアで1点ずつ新しいポスターを制作している。

ポスターは毎年、広島市長に贈呈、広島市内の各施設や市立中学・高校に配布される他、国内外での展示、平和市長会議の加盟都市への寄贈などが行われている。2019年には、広島を訪問したローマ教皇へも寄贈された。

本年度デザインを手がけたのは、大貫卓也氏。1980年多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業後、博報堂に入社。1993年大貫デザイン設立し、これまでにとしまえん、日清食品カップヌードル、ラフォーレ原宿、新潮文庫Yonda?、ペプシコーラPepsiman、資生堂TSUBAKI、SoftBankなど、多くのブランドコミュニケーションを手がけている。

本年度のポスターに描かれたのは、平和の象徴である白い鳩が収められたスノードームである。大貫氏は今回、ポスターにAR(拡張現実)を活用。鑑賞者がアプリ(aug!)をダウンロードし、スマートフォンをかざすと、ポスターの中のスノードームが動きだす。

今回のポスターについて、大貫氏は次のようにコメントしている。

「長年、広告という多くの人へ伝えることを生業にしてきました。今日よりも、少しでも明るく楽しい未来を提示することが広告だと思っています。しかし今回、わたしは原子爆弾の脅威を今の若者へ歴史としてではなく、ライブ感をもって伝えることが、原爆という事実を風化させずに、心に刻むことになるのではないか、そのほうが希望のある未来に協力することになるのではないかと考えました。原爆を体験した語り部が減少していく現在、原子爆弾という存在をきちんと後世へ伝えていくヒロシマ・アピールズという活動に関わることは表現者として身の引き締まる思いです。

今回のポスターはAR(拡張現実)を使用したポスターです。スノードームには平和の象徴である白い鳩が入っています。そして、通常ならスノードームには白い粉が封入されているものですが、この作品には黒い粉が封入されています。携帯をこのポスターにかざすことで、このポスターは動き出します。それも、時間を巻き戻すように。やがて黒い粉がドームの中に充満し、平和が踏みにじられた様子、戦争、原子爆弾、黒い雨などが想起され、戦争をリアルに感じることとなり、胸をしめつけられるかもしれません。その黒い粉はやがてゆっくりと地上に落ちてゆき、そこに微動だにしない白い鳩があらわれます。スノードームとは本来、ゆっくりと雪が落ちてゆく様子を見ることで各々に自分なりのストーリーを想像させる、そんな装置でもあると思っています。この作品は、原子爆弾にリアリティーを持たなくなってしまった世代の若者へ、一瞬でも、考え、想像させる時間を持ってもらうための表現として考えています。さらに言えば、戦争や原爆についてガラス越しに俯瞰して眺めている人に対して気が付いてほしいこと。それは、ガラスに閉じ込められた白い鳩はまだ自由に飛び立ってはいないということ。白い鳩が、世界中で自由に飛び立つ日が来ることを願っています」

ポスターは、7月9日に広島市役所において、大貫氏から小池信之広島副市長に贈呈された。7月17日まで旧日本銀行広島支店で開催されている「ヒロシマ平和ポスター展 PIECES FOR PEACE 2021」で展示される他、広島市内のバス停に掲出されている。また、希望者には広島平和記念資料館、JAGDA事務局にて、1枚1100円(税込み)で販売(限定2000枚)もしている。

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