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「興味からズドン」とCookieレスの先へ TikTokの現在の姿

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150以上の国と地域で利用され、2017年のサービス開始からわずか4年間でいまや世界30億ダウンロードに上る「TikTok」。最新の動向を正しく掴むことが、マーケティングでの活用の第一歩だ。TikTokに特化したエージェンシーであるNatee営業執行役員の朝戸太將氏が解説する。

3分でたどる「TikTok」のこれまで

「TikTok」は2017年にサービスを開始したショートムービープラットフォームだ。YouTubeで流された、ダンスの広告動画を覚えている人も少なくないだろう。

国内でも2018年にかけ順調にユーザーを拡大していくが、「いわゆるキャズムにぶつかるのがこのころ」と、TikTokに特化したエージェンシーであるNatee営業執行役員の朝戸太將氏は語る。

Natee 営業執行役員 TikTok事業部部長 朝戸太將/東京大学を卒業後、リクルートキャリアを経てNateeに創業メンバーとしてジョイン。創業期よりTikTok事業の統括を務め、広告主の認知や購買促進など多様なニーズに対してTikTokを軸としたソリューションを提供。2020年末には「TikTok For Business Award」でブロンズ賞を受賞するなど、Nateeの事業成長を牽引している。

「企業にとっても、ティーンに対してメッセージを発信するなら『TikTok』と考えられていたが、ダンスというイメージも強く、そうしたコンテンツが目立っていた。踊ってもらって何になるのか、と考えるマーケティング担当者も少なくなかったのではないか。若年層ではやっているらしいが、どう活用すればいいか……と、マーケティング活用という文脈では踊り場にさしかかる」(Natee 朝戸氏)

しかし、2019年ごろになると、実は投稿されるコンテンツの趣が変わってくる。ライフハックや教育系、グルメ、旅行など、自己表現の場へ移りはじめたのだ。それに伴って、ユーザーの幅も広がってくる。

ここまでが「TikTok」内の変化だとすれば、2020年から起きたのが「TikTok」を取り巻く環境の変化だ。特に記憶に新しいのは、米トランプ大統領の動向だ。「微信(WeChat)」など8つの中国製アプリと共に、米国内での使用を禁ずる大統領令を発出した。

しかしその大統領令は、米バイデン政権に移った後、2021年6月に撤回される。「TikTok」と「WeChat」については、米連邦地裁が米国憲法で定められた表現の自由などを害するとして、一時差し止め命令を出してもいた。

「大統領選でトランプ氏は、再選のために支持を集めたいという意向が強く、保守層で年齢の高い人々をターゲットに、いわば米中貿易戦争といった文脈で、中国製アプリを槍玉に挙げた。大統領令もしかめつらしい字面だが、大統領のサインで発行できてしまうもの」(Natee 朝戸氏)

そしてバイデン政権に移行し、既述のとおりとなった。

Z世代を重視する日米、背景の差

すでに単なる“若者だけのアプリ”ではなくなっている「TikTok」だが、いわゆるデジタルネイティブ(1980年代〜90年代生まれのミレニアル世代やその次の世代であるZ世代)に親和性が高いのはたしかだ。

「日米両国で注目されている世代だが、実はその背景、なぜ重要とされているかは異なる」と朝戸氏。

「米国では1980年代〜90年代生まれのミレニアル世代とその次のZ世代のボリューム自体が多く、経済の中心を担いつつある層。2030年頃にはさらに重要なセグメントとなる。一方、日本においては、人口動態だけで見れば、現時点で40歳代以上がボリュームゾーン。むろん若い層の獲得は重要ではあるが、ミレニアルが重要、Z世代が重要、といってもその文脈が日米では違う」(Natee 朝戸氏)

では、日本において、こうした層を重視する理由は一体何か。

消費者の変化を導く旗手

「日本で、デジタルネイティブ、とりわけZ世代を重視する理由は、消費者の変化を体現している層であるため」――それが朝戸氏の答えだ。

「生まれたときからデジタルテクノロジーにふれ続け、その担い手であるZ世代は、それ以前の消費者と比べても、生産者、発信者、拡散者といった性格が強い。単に受け取ったものを消費するだけではなく、それをもとに新たな行動を起こすということが常識化している」(Natee 朝戸氏)

そしてこれは、単にZ世代だけに特有のものではなく、今後も浸透していく可能性がある。Z世代が消費の変化の道を拓き、あとに続く世代がどんどん出てくるということだ。

「重ねて言えば、ソーシャルネイティブ的、その辺縁にはむろん、年齢が上の方も出てきている。生まれながらの“母国語”ではないにせよ、ネイティブに近いレベルで操れる人たち。そうした人たちがTikTokには集まってきている。年齢をベースとしたターゲティングも重要で、それが効果を発揮するケースはある。ただし、情動や行動、思考が似通った人たち、というセグメントもできるはずだ」(Natee 朝戸氏)

興味からズドン

では、「TikTok」における情動や行動の特徴はどのようなものか。朝戸氏が指摘するのは「興味からズドン」。そしてユーザーの情動に応える「アルゴリズム」と、そこから導かれる「クリエイティブの重要さ」だ。

一般に、関心、興味、検討と購買意向の上昇、購買といった複数の段階で消費者の購買プロセスは表現される。しかし、「『TikTok』に特有なのは、コンテンツに接触してすぐに購買に移っていることが見て取れること」だと朝戸氏は話す。

たとえばNateeが手がけたシャンプーやトリートメントなどヘアケア商品では、10人ほどの「TikTokクリエイター」(≒動画投稿者)を用意。商品の使用感や、解決される課題、得られるベネフィットをベースに、それぞれのTikTokクリエイターならではの表現で動画にしたてた。結果、実施期間中のPOSデータはそれ以前に比べて150%〜200%という数値を叩き出した。

「ポイントとしては、TikTokユーザーの特徴として、ひとつだけの情報を信用しない。また、たとえば、20分に渡ってこんこんと説明されるのも重すぎる。自分がある程度信用しているTikTokクリエイターが何人もその商品を愛用している、となると〈興味からズドン〉で購入する」(朝戸氏)

別のヘアケア製品でも、「朝、出かける前の髪のセット」「合コンのときに席を立ってメイク直し」など、日常的に発生しうるさまざまなシーンで、商品のベネフィットを伝える動画をやはり10人弱のTikTokクリエイターを起用して配信。

「このときは、過去数年間いまひとつ伸び悩んでいた商品が、ドラッグストアで前月比2.5倍となった。さらにその実績を受け、陳列数が増えたり、発注量で言えば4倍になったりと、小売側の反響もよかった」(朝戸氏)

クリエイティブとレコメンドシステム

こうした購買行動を支えるのが、「TikTok」独自のレコメンドシステムだ。

「ユーザーが視聴した動画の種類や、その後の閲覧状況などを踏まえて、より興味、関心を持つ可能性の高いコンテンツをそのユーザーの目にふれるようにするレコメンドシステムが強力であることも『TikTok』の特徴」(朝戸氏)

もうひとつが、クリエイティブ優先であること。「TikTok」ではフォロワー以外にも前述のレコメンドシステムによって、関心のありそうな動画を見る機会がある。結果、仮に1ケタしかフォロワーのいない人でも、動画次第では一晩で数万人のフォロワーを獲得することがある。趣味嗜好が同じかどうかのほうが、フォロー/フォロワーよりも重要で、フォローされなければ誰にも見られないということがない。

「『TikTok』は、クリエイティブが極めて正当に評価されるプラットフォーム」と朝戸氏は話す。

「だからこそ、同じような興味関心、嗜好の人に動画を見てもらうということがしやすい。それが購買への後押しにもなっている。さらに言うなら、今後、サードパーティCookie忌避が本格化すると、デモグラフィック属性を基とした配信が難しくなる。一方、興味関心であれば、見たいものを見る、という行動と全く同じように、商品の情報を見てもらうことができる」(朝戸氏)

もし、「若者のダンスアプリ」というところから「TikTok」のイメージが変わっていなければ、いま一度活用できるかどうか検証してみる必要があるだろう。

朝戸氏は、「前述のとおり『TikTok』は、プラットフォームに根付く文化やユーザーの行動特性をきちんと捉えれば、売上や認知形成に大きなインパクトをもたらす可能性を秘めた有望なメディアだ」と話す。

「しかし『TikTok』は、ショートムービーというコミュニケーションフォーマットや独自のレコメンドシステムなど変数が多く、かつ複雑であることから、使いこなすことが難しいのもまた事実。Nateeでは案件ごとの仮説検証やリサーチを通して既に一定の必勝法を解明しつつあるが、今後は『ブランド強化』『話題創出』『売上貢献』の三位一体をTikTok上で同時に実現するようなコミュニケーションスキームの確立を目指していく」(朝戸氏)



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