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ユーザーと共創して発信 シャープによる「RoomClip」活用の舞台裏

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SNSを単なる“暇つぶし”ではなく、情報源として能動的に接触する人が増えつつある。インテリアに特化した写真SNS「RoomClip(ルームクリップ)」もその一つだ。この短期集中連載では、「RoomClip」をどうマーケティングに生かすかについて、活用事例やインタビューを3回にわたって伝えていく。

左:シャープマーケティングジャパン デジタルマーケティング部 岩田洋子氏
右:ルームクリップ 執行役員 川本太朗氏

店頭からも喜ばれる

知りたいことができたとき、ネット検索に次いで頼りとするのが、ソーシャルメディアだ。何でも投稿できるSNSだけでなく、分野を限った専門的なSNSもその対象となっている。企業にとっては、商品を認知してもらったり、検討段階の人にくわしい情報を届けたりと、マーケティングのツールの一つとして、活用が期待される。

住まいやインテリアに特化した写真SNS「RoomClip(ルームクリップ)」では、投稿される家電や家具、雑貨、家の内装などのようすを参考にしながら、買うべきものの見当を付けたり、しぼりこんだりする人が増えつつある。ことし8月時点で月間アクティブユーザー数は600万人、投稿された写真は500万枚に上る。

シャープは「RoomClip」を活用する一社だ。2020年、2021年の2年連続で、「RoomClip」上でモニター企画を実施した。モニターとなった「RoomClip」ユーザーの声や投稿写真は販促ツールとしても活用。シャープマーケティングジャパン デジタルマーケティング部の岩田洋子氏は、「使用実感は、本質的で、何ものにも代えられないリアリティがあります」と話す。

「だからこそ、『家電量販店などの店頭でとても接客がしやすくなった』と、セールス担当からも喜ばれています。真実なので自信を持ってお伝えできる。販促ツールの社内表彰でも上期で1位となりました」(岩田氏)

福岡支店では記事広告を店頭POPとして活用

ルームクリップ社の川本太郎・執行役員によると、「『RoomClip』に閉じた発信ではなく、POPやカタログなどでユーザーの方々の活用状況を伝えるなど、立体的に施策に生かしていただくことは多い」という。

「『とても武器になる』というお声を頂戴することも少なくありません」(川本氏)

消費者自身の〈消費者視点〉

洗濯機や冷蔵庫といった大型家電は、一般的に検討期間が長く、さらにEC化率も比較的低い。ある程度の情報収集を経て、店頭へ行き、実際の印象を確かめたり、比較したりして購入に至る。そこでの課題について、岩田氏はこう話す。

「今回モニター企画を実施した冷蔵庫『SJ-MF46H』の最大のポイントは、業界最薄(註1)であることです。奥行きで言えば63cmとなっています。しかし、それをどのように伝えるか。それが争点でした」(岩田氏)

「63cm」と文字で読んでも、ぱっと正確に、どれくらいの奥行きなのかを把握できる人はほぼいない。店頭であれば他社製品との数センチメートルの差を見ることはできるが、比較したい点はほかにもある。特に価格については最も目が向きやすい。こうした課題をクリアするために、特設Webサイトで写真を見せたり、図示したり、さまざまな工夫を凝らすのが通例だ。

しかし、と岩田氏は言葉をつなぐ。

「もうひとつの課題は、こうした発信を企業から一方的に行っても、なかなか振り向いてもらいづらいということです。そこで、お客さまの生の声、ユーザーの皆さんが実際に暮らす中で、どう活用しているのか。バリエーション豊かなユーザーの皆さまによる発信を見るほうが、購入を検討されている方にはリアリティがあり、より身近に感じていただきやすいのではないか、と考えました」(岩田氏)

モニター企画で集まった写真の一部

店頭に並んでいる状態では、自宅に置いたときの光景はなかなか想像しづらい。ハウススタジオなどで撮影した素材もなかなか数を用意することは厳しく、どうしても“理想的な絵”、有り体に言えば「どうせ広告でしょ」と思われてしまいがちだ。

「2020年に洗濯機で『RoomClip』のモニター企画を実施し、とても多彩な写真をいただくことができました。特に洗濯機周辺は生活感が出やすいのですが、当社の製品であれば、見た目も美しく、気分が高まった状態で家事ができる――そう思っていただけそうなものが集まったんです。実際にWebサイトの滞在時間も平均で3分〜4分と長く、きちんとご覧いただけていることも伺えました。当時も量販店さまなどからの反響はとてもよかったです」(岩田氏)

冷蔵庫に至っても、キッチン周りがどれくらいスッキリするのか、シンクなどの脇に置いたときに冷蔵庫がでっぱらず、スムーズに行き来できる。薄さに対してどれくらい収納することができるのか、など消費者自身による、〈消費者視点〉で、購入の参考になる情報を集めることができたのだ。

記事広告をユーザーレポートとして店頭ツールに活用

モニター企画での思わぬ収穫

モニター企画では、製品を対象者の自宅へ搬入、実際に設置して使用感を写真などで伝えてもらうことになる。その過程で岩田氏は、思わぬ副産物を手にすることにもなった。

「さきほどお話ししたことを実現するには、製品がきちんと価値を発揮できるシチュエーションで試用、体験いただく必要があります。そこでモニターへの応募時に、現在の冷蔵庫の設置状況を撮影して送っていただきました」(岩田氏)

モニターの応募者の現状を事前に把握できる応募投稿

応募投稿で集まった写真は、約2600枚。冷蔵庫の購入を検討している人の参考となる〈情報〉にする上でのバリエーションや、使用感を発信してもらう上でどれくらいの人に到達(リーチ)するか、といった点を加味しながら、モニターを選び出していった。

この点が、インテリアに専門特化したSNSとしての強みだ。川本氏 は「発信の量だけに着眼したインフルエンサーマーケティングにはない、『質』の部分で、消費者と共創したコミュニケーションが図れる」と話す。

「発信力の強さだけでなく、生活実態として商品が見合うかがとても重要です。その商品がもたらせる価値とモニターの需要が見合ってこそ、発信内容にも説得力が生まれますし、それを見た方は商品の検討材料として生かすことができます。実の伴わない内容になってしまうと、それは共創ではなく、結局のところ売り手都合のメッセージの代弁者になってしまうわけです」(川本氏)

また、ふだんからインテリアについての発信をしているため、「いつもと言っていることが違う」といったこともない。何より、インテリア好きだからこそ、発信内容にはとても積極的な関与もあった。

「大型家電は搬入や設置工事があるので、モニターに当選した方とは、期間前後にやり取りが発生します。その際に驚いたのは、『こういう使い方はどうでしょうか』『子どものいい動画が撮れたので、送りますね』といった、本当に真摯なご連絡をいただいたことです」と岩田氏は明かす。

「やはりメーカーですから、自社の製品が役に立つのは本当に嬉しいですし、実際にどう活用できるかという事実については、すべてお聞きしたいわけです。こういった内容も社内で共有したところ、非常に喜ばれました。そういった社内からの反応をまた、感謝とともにお伝えすると、モニターの皆さんも嬉しく思っていただけたようでした。こういったコミュニケーションは、やはり単に宣伝してくれ、という組み方では発生しえないのではないかと思います」(岩田氏)
 



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