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コラボは150以上!「ハンコ=フォーマル」という固定観念を覆す新文化「痛印」

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ブランド・製品の顧客規模、顧客特性によって適切なコミュニケーション方法は異なり、広告宣伝による広範囲での認知獲得が必須ではないケースもあります。
アニメ、ゲームなどとのコラボレーションにより、新しいハンコ文化を創り出したTOSYOに話を聞きました。

※本記事は月刊『宣伝会議』11月号の内容を再編集しています。

[商品名]
痛印
[ブランド名]
痛印堂
[販売年月]
2012年6月
[ターゲット層]
20~40代男女

「痛印」という新ジャンルを確立

「誇れる日本企業を創造する」を経営理念に、世界に日本の伝統・文化・技術を伝えていくことを使命として、キャラクター雑貨製造・販売を行っているTOSYO。
同社が展開するオーダーメイド印鑑ブランド「痛印堂」は、アニメやゲームなどのキャラクターのイラストを、印鑑の印影に再現している。

©Magica Quartet /Aniplex・Madoka Movie Project Rebellion
『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』とコラボした痛印。

元々はキャラクターのイラストをゴム印にしたことが始まりであった「痛印堂」ブランドだが、すでに他社でもキャラクターのゴム印は製造されてた。
そこで、差別化を図るためにも、柘植(木材)を使用した本格的な印鑑の製造を試みたという。

「プレゼントとしてもゴム印よりも印鑑の方が、贈る側ももらう側も特別な思い出になるのではないかという考えもあり、『プレゼントとして喜ばれるもの』に視点を変えました」と代表取締役社長の中川貴文氏は話す。

ブランドが誕生した2012年当時、自動車×キャラクターの「痛車」や、全面をキャラクターの壁紙にする「痛部屋」などが登場し、「痛」をつけてキャラクターとアイテムに愛着を込める文化が広まっていたため、イラスト入り印鑑プロダクトとして「痛印(いたいん)」と名付けた。

ファンの心理をとらえた製品開発で記念の“印”に

「『痛印』では、1本の線でも彫り方に強弱をつけることによって、捺印した際の線の出方に特に気を配っています。そのため機械化は難しく、すべてデザイナーによる手描きで原画を作成しています」と製品へのこだわりを話すのは同社ライセンスチームのマネジャー、小川翔平氏。

現在、チタンや石、水晶など、柘植以外の素材を使用したワンランク上の「至高の痛印」とシリーズも展開し、「持っているとちょっと自慢したくなる」製品となっている。

また「痛印堂」では、アニメやゲームとコラボするにあたり、その作品のファンの心理をとらえた製品も多数販売。
2021年8月に発売した、テレビアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』とコラボした痛印では、“勿忘草”が作品のキーとなっていることから、本物の勿忘草を封入した印鑑をいちからつくることにチャレンジ。

©ANOHANA PROJECT
テレビアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』とコラボした痛印。

 
作品が10周年のタイミングであったこともあり、ファンにとって記念の“印”となる痛印となった。
SNS上では「綺麗!」「インテリアとして飾りたい」といった声がみられたという。

顧客と共に文化をつくり上げ、世界へ広める

「“ハンコ=フォーマル”なもの、書類に押すもの、という常識にとらわれていないのが、痛印を使って下さるお客さまです。贈り物として大変喜んでいただきご連絡をくださった方、ご自分の名刺に捺されている方、同じ作品を好きなお友だちへの手紙に捺されている方など、自由に使ってくださっています」(小川氏)。

最近では名前を彫るのではなく、「おはよう!」や「OK!」、キャラの台詞などを彫刻することも増えており、顧客のアイデアで生活に痛印が浸透しているのを感じるという。

「私たちは、『世界に日本の伝統・文化・技術を伝えていく』ということをポリシーとしていますが、文化とはお客さまとともにつくりあげていくものだと実感しています」と小川氏は話す。

今後も「痛印堂」は、日本のみならず世界中にある過去、現代、未来の様々なカルチャーをリスペクトし、モノやサービスにその思いを込めることで、長く愛されるものを生み出していくという。

 

月刊『宣伝会議』11月号(10月1日発売)

 
【特集1】
「国民的知名度は必要ない? 対象顧客に共感される企業・商品の広め方」

当然のことながら企業・商品それぞれのブランド別に、対象となる「顧客」がいます。
その「顧客規模」が50億人のブランドもあれば、500人のブランドもあります。
消費者の嗜好性の細分化に合わせて、ブランドごとのセグメントがより緻密になる中で、
国内市場におけるマーケティングでは、必ずしも「国民的知名度」が必須とはいえません。
自社商品の顧客規模に応じた、企業・商品を広める方法は、もっとあるのでは?
特集1では、デジマとマス広告の間、顧客規模に合った
「広告」以外で認知獲得に成功した18事例を紹介します。