TikTokで21年上半期最多投稿の資生堂ブランドエフェクト その発想法は

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資生堂「ANESSA(アネッサ)」が2021年夏に実施した「#アネッサおうちで夏フォトチャレンジ」は、同年上半期において「TikTok」で最も投稿された施策となった。同キャンペーンについて、クリエイティブディレクターを務めたSIXの斉藤迅氏に舞台裏を聞いた。

女優・モデルの池田エライザさんによる「#アネッサおうちで夏フォトチャレンジ」のお手本動画

強い体験を残すUGC

資生堂の日焼け止めブランド「アネッサ」が「TikTok」上で実施したキャンペーン「#アネッサおうちで夏フォトチャレンジ」は、TikTokユーザーがブランドエフェクトを使用して投稿した動画の投稿数が7600回以上となった。これは2021年上半期で最も多い数値だ。また、再生回数も約2億5200万回に到達した。

施策の目的は、肌を美しく見せる「トーンアップ機能」を備えた新商品の知名度を高めること。さらに「アネッサ」が、日常生活にも適した日焼け止めであることを伝えることだった。

実施期間は21年6月21日〜8月15日。訴求した商品は、6月21日発売の薬用美白UVジェル「アネッサ ブライトニングUV ジェル」だ。従来のUVカットと、薬用有効成分に加えて、くすみをカバーし、ツヤと血色感を高めて肌を自然な明るさに仕上げる「トーンアップ機能」が追加されている。

「#アネッサおうちで夏フォトチャレンジ」の主眼は、「アネッサ」のポスターのモデルになりきって、音楽とカウントに合わせてポーズを決める動画を撮影できるコンテンツ。撮影したユーザーの肌は商品同様に自然な明るさとなり、「トーンアップ機能」を疑似体験できるようになっている。

「企画時に提示された課題は、海やプールなど行楽に出かける際だけではなく、日常生活で常に使ってもらいたい、というものでした」と話すのは、「#アネッサおうちで夏フォトチャレンジ」のクリエイティブディレクターを務めたSIXの斉藤迅氏だ。

「『アネッサ』自体のブランド認知度は十分に高いのですが、日焼け予防だけでなく、肌を美しく見せてくれるというのはある種のニュース。驚きをもって体感してもらうことが、商品の魅力を伝えるコミュニケーションで重要だと考えました」(斉藤氏)

「#アネッサおうちで夏フォトチャレンジ」のクリエイティブディレクターを務めたSIXの斉藤迅氏

ユーザーが制作、発信するコンテンツ、いわゆる「UGC(User Generated Contents)」は2000年代後半から広まり始めたが、いまさらにその価値を高めようとしている。

「ひとつには、ただ動画を見るだけよりも一層強い体験として、インパクトを残せるためだと考えられます。特に『TikTok』は、ユーザーが参加しやすい、コンテンツ体験をしやすいプラットフォームだと思います。動画制作機能が優れていることに加え、集まるユーザーに、発信に対するポジティブな姿勢が伺えます」(斉藤氏)

参加したくなるUGCとは

「UGCをブランドコミュニケーションで用いる上で、大きく2つのポイントがある」と齊藤氏は話す。

「ひとつ目のポイントは、どれだけブランドの伝えたい内容を的確に伝えるかということ。今回は、アネッサによるトーンアップという新機能を楽しみながら体感してもらうことを目指しました。そのため、TikTokの中で肌が自分の肌がトーンアップされる、という疑似体験を驚きと楽しさを持って体験してもらうことを中心に組み立てています」(斉藤氏)

そして、二つ目のポイントは、それをたくさんの人が楽しく参加できる仕掛けを用意すること。

「企業の伝えたいことを単に伝えるだけでなく、ユーザーが参加しやすくするため、さまざまなインサイトに対する仕掛けを複合的に盛り込んでいきました」(斉藤氏)

TikTokクリエイターによるPR動画も。写真は湯上響花さん。実際の動画はこちら(外部サイトが開きます)

しかし、UGC企画を打てば何でもユーザーが参加したくなるわけではない。では、「#アネッサおうちで夏フォトチャレンジ」は、なぜ多くの人が参加をしたのか。斉藤氏はユーザーインサイトが重要だと指摘する。

「太陽の下で、自由に輝きたい、という人々の思いに答えるのが『アネッサ』。それに対して、去年は、そういった太陽のもとで遊んだり、可愛い写真をとったりすることが難しい世の中だったと思います。そういった中で、『アネッサ』がせめてデジタル上だけでも、そのような体験をユーザーに提供したい。これがブランドとユーザーのエンゲージメントという側面で、この企画の根幹にあります。その上で、ユーザーが抱えているさまざまなインサイトや実現されていない思いを想像し、『アネッサ』というブランド資産を生かして、それらを叶えることを目指しました」(斉藤氏)

斉藤氏らが企画時、『TikTok』上で実際に発見したのは、過去の夏に撮影した写真を投稿するユーザーが多くいたこと。燦々と照る太陽の下で、遊びに行きたい。笑顔で写真を撮りたい。しかし、この夏はそういったことも難しい。そこには、消費者の満たされない思いが伺える。そういった思いを叶えるという点も、このチャレンジの立案の起点だった。

その他、「アネッサ」のポスター風の写真が撮れることも、インサイトから立脚している。

「ちょっとかわいくする、であるとか、ポーズを取るといったことについて、『やってみたいけれど、恥ずかしい』とためらう人は少なくないと思います。でも、『ポスター撮影』というエクスキューズがあれば、やりやすくなる」(斉藤氏)

また、楽曲は、2006年ごろに『アネッサ』のテレビCMで使用された楽曲『A Perfect Sky』が使われているが、これも『アネッサ』のCMになりきってみる、という楽しさを提供する狙い。同時に近年の2000年代カルチャーをかわいいととらえる風潮に沿ったものだ。

「ブランド体験を丁寧に伝えつつ、ユーザーのインサイトを満たす仕掛けを多数用意する。この両輪を満たすことで、より多くの人々にブランデッドUGCを体験してもらう」というのが斉藤氏の考えだった。

「重要なのは、ブランドの知名度に限らず、ブランド資産やブランドパーパスと、ユーザーインサイトに橋を架けることです。ブランドの存在理由、目的に基づく商品価値を、消費者にとって参加しやすい形で伝えるのは、どんなブランドであっても可能なことです」(斉藤氏)

なぜいまUGCなのか

「統合マーケティングコミュニケーションにおいて、UGCは極めて大きなパートになりつつあります」と語る斉藤氏が、UGCにいま着目する背景には、コンテンツが〈無限にある〉と言っても過言でない現代の、メディア環境の変化がある。

「テレビCMなどの広告コミュニケーションも、ほかのコンテンツと同じ土俵で接触し、評価される時代です。星の数ほどあるコンテンツの中で、どれが見るに値するのかを判断する消費者の視座に立つとき、〈祭り〉になっているかは見逃せないポイント。面白いかどうかだけでなく、ほかの多くの人が参加していて、自分もそれに参加したい、というのが、視聴するコンテンツを選ぶ条件になっています」(斉藤氏)

そのとき、二次創作、三次創作の数はすなわち〈祭り〉の規模。中身だけでなく、どれだけ大きな〈祭り〉にするかという情報設計も重要となる。コンテンツを消費するだけでなく、生産することがもはや当たり前になったいま、表現したいことを形にしやすい「ツール」としての側面が「TikTok」にはある。

「ブランドからのコミュニケーションを、二次〜n次創作として生み出していく。それを実現できるプラットフォーム、あえて言えばユーザーのための映像制作ツール、音楽制作ツールとして、『TikTok』は非常に有用だと思います。今後もマスコミュニケーションと、『TikTok』などでのUGCをより強く連動させたキャンペーンを実施していきたいとも思います」(斉藤氏)

斉藤迅 氏

SIX共同執行責任者/クリエイティブディレクター。統合的なブランディングを主とし、近年は日本企業のグローバル展開や、中国企業の日本への進出支援など、国際的なブランディングも手がける。これまでにDouble A x OK Goでカンヌ Gold、Lyric SpeakerでACC Goldなど多数受賞。その他、ブルーノート東京でライブを行うなど、アーティストとしても活動。

 



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