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視聴者が最も多いのは幸手市? 「オモウマい店」ヒットの裏にある緻密データ戦略

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2021年4月にスタートした中京テレビ放送制作、日本テレビ系列で放送の「ヒューマングルメンタリー オモウマい店」(毎週火曜7時~放送)が2月1日の世帯平均視聴率は13・1%(ビデオリサーチ関東地区調べ)など、高視聴率をキープしている。
同番組の編成ならびにマーケティング&広報宣伝を統括する、中京テレビ放送の総合編成局 総合編成部 副部長の内藤庸介氏は「コアターゲットにリアルタイムで視聴をしてもらうための“エリアマーケティング”とZ世代に視聴してもらうためのSNSマーケティング戦略が奏功している」と話す。

営業、制作、東京支社での編成業務を担当し、現職に就いた内藤氏は「タイムテーブルは商品である」との考えを持つ。「系列の日本テレビでは13~49歳の男女をコアターゲットに設定しているので、まずはいかにしてこの層の生活者に視聴してもらえるかを考えて、タイムテーブル全体を設計。さらにこの全体設計に基づき、次に個々の番組のペルソナを設定し、獲得したい生活者が望む番組コンテンツを、データをもとに制作側に提案していく。もちろん、番組ごとのペルソナに合わせた広報・宣伝活動も同時に実施しています」(内藤氏)。

「ヒューマングルメンタリー オモウマい店」では、まずコアターゲットのリアルタイム視聴を増やすべく、インターネット結線されたテレビから取得できるデータを分析。「オモウマい店」の市区町村単位での視聴率は、北関東・埼玉が高い。さらに、2020年度の10月クール 火曜夜7時台の関東地区のライブ視聴率を分析すると、埼玉県の視聴率が高いことがわかったという。そこで制作側に、番組スタート前に「埼玉県のお店を取り上げてみては?」とアドバイス。結果、制作陣が北関東と埼玉を足しげくリサーチしたところ、オモウマい店がたくさんあり、放送にもつながった実績がある。

視聴データをもとに取材先エリアを選定

当初は『ウマい!安い!おもしろい!全日本びっくり仰店グランプリ』として放映されていた「オモウマい店」。前進となる番組で 幸手市の視聴者が多かったことから、「オモウマい店」の放送1回目では、制作陣が 幸手市を足しげくリサーチ。結果、魅力的なオモウマい店を見つけ出し、放送につなげた。

さらに広告宣伝担当として、テレビをリアルタイムで良く見るエリアへの折り込みチラシ、地元に根付いたタクシー会社とのSNS動画展開、北関東の新聞社への出稿など、エリアマーケティングも実践。視聴率を獲得しつつ、さらにコアターゲット、特にZ世代に視聴してもらうべく、SNSも活用。
TikTok、YouTube、Twitter、Instagramで情報も発信している。絶対値としての視聴率を獲得するエリアマーケティングと若年層と接点を持つSNSマーケティングの両輪を回すことで、広告主にとって安心して購入できるタイムテーブルづくりを目指してきた。
 


 

Z世代を対象にしたSNSマーケティング

TikTokについては、名古屋大学大学院の学生に動画制作を依頼。それぞれのプラットフォームの特性に合わせたコンテンツを発信している。

「結線されたテレビ受像機から得られるデータを見ると、受像機を見ていてもVODサービスやYouTube、HDMI端子を使っておそらくゲームをしているであろうという生活者の状況が見えてくる。ひとつの受像機の中でも、コンテンツ消費時間を争うライバルが出てきている中で、テレビ局にもこれまでにないようなマーケティングが必要」と語る内藤氏。
さらに「私は、“視聴者”という表現は使わないようにしています。テレビ以外にも余暇を楽しむコンテンツが増えている今、生活者にテレビ番組を見ていただくための提案が必要。常に生活者目線を大切にした編成、番組作り、マーケティングが必要だと考えています」と続ける。

中京テレビ放送 総合編成局 総合編成部 副部長の内藤庸介氏

「とにかく謙虚に生活者の方が見たいものを提案していく」と語る同氏の考えは、「オモウマい店」の制作スタッフとも共有されている。「生活者に対してだけでなく、取材をさせていただく先の方々に対しても、常に謙虚な姿勢で向き合うべき」との考えのもと、店舗紹介の後は、「取材のご協力ありがとうございました」のお礼の言葉がスーパーで入る。
「取材に行ったスタッフがお店の手伝いをしたり、逆にお店の方から差し入れをいただいたりといったことも多いのですが、これも謙虚な姿勢を徹底している表れ。単なるグルメ番組ではなく、ヒューマンドキュメンタリーであるからこそ、人に対する敬意と愛情が必要だと考えています」。

番組に取り上げられた後、店に客が殺到して、混乱が起きないよう「放送後は込み合うので日を空けて来店ください」という配慮のスーパーが入るのも、この番組ならでは。受像機の前にいるからと言って、テレビ番組を見てくれているとは限らない時代。視聴者を「生活者」として捉え、新たな提案をする放送局側の工夫も必要とされる時代になっている。