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社内の広報施策を改善する、5つのステップとは/産業編集センター

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自分が所属する組織と自分の仕事に熱意を持って自発的に貢献しようとする従業員の意欲「従業員エンゲージメント」。その向上のために広報は何ができるのか?

「従業員エンゲージメント向上プロジェクト」第6回では、16社20名の広報担当者と専門家が集まり意見交換を行いました。

従業員エンゲージメント向上プロジェクト第6回は、アドビ、大橋運輸、オムロン、ゴールドウイン、ジャパネットホールディングス、スープストックトーキョー、スクウェア・エニックス・ホールディングス、セコム、タカラベルモント、東急建設、パーソルホールディングス、ハピネット、ファクトリージャパングループ、堀場製作所、三井住友DSアセットマネジメント、ゆうちょ銀行(五十音順)の広報関連部門の担当者が集まり議論。

ボードメンバーとして、インターナルコミュニケーションに特化した制作・コンサルティングを行う産業編集センター、動画の活用で企業のDX推進を支援するエビリーが参加しました。

グループディスカッションでは、自社で共感が集まりやすいメッセージや、有効な社内広報ツールなどについて意見交換した

今回のテーマは「従業員エンゲージメント向上に向け、自社の課題に合った打ち手を見つける方法」。産業編集センター はたらくよろこび研究所 相山大輔氏は、インターナルコミュニケーションが上手い企業の共通点を抽出し、❶インサイト ❷運用設計 ❸接点開発 ❹クリエイティブ ❺効果測定の5ステップで解説しました。

そのアンケート結果、本音?

ステップ❶はインサイト。施策設計に入る前に、トップや従業員の本音をつかみます。「例えば、エンゲージメントの源泉となる、グループ会社共通の理念について、ウェブ社内報で理解を促したい場合。

まずは社内のインタビューで『そもそもグループの一員である自覚はありますか』『普段パソコンを見られる環境ですか』などと本音を探ります。社内報上でアンケートをとっても、読んでいない人の意見は分かりませんので、本音を集めにいきます。仮説が立てられたら、今度はアンケートも活用しながら、『グループ会社としてここは誇りを持っている』といった共通で響く切り口、メッセージや、社内で有効な情報伝達ツールは何かも洗い出していきます」と相山氏。

誤解を取り除け

ステップ❷は運用設計。他部門から「社内広報ツールを使いたい」「広報部門と連携したい」と情報が入ってくるような体制、仕組みづくりです。

「最近、ジョブ型雇用が注目されていますが、こうした人事制度は、従業員エンゲージメントの土台となるもの。しかし新たな制度や方針には少なからず反発が起きます。誤解なく伝え、企業文化を保つには、広報部門と人事部門の連携が欠かせません。上手な企業は、こうした時、人事から広報に相談があったり、定期的な会議を設けていて連携ができています。例えば、紙の社内報で、なぜ新制度を導入するに至ったのか、従業員のメリットは何か、制度の背景を伝える。さらに社内の動画配信で、人事部長が従業員の疑問を受け付け、誤解を解消する場を設ける。そうすると、伝わり方が変わります」。

年間プランを立てていますか

ステップ❸は接点開発。従業員に「動画を見て」と強制するのではなく、自然と目に入ってくるような接点を見つけていきます。例えばパソコンのログイン画面に理念が書かれている、など細かく接点を集めます。そして、社内広報ツールの種類、対象者(アルバイトは視聴できるかなど)、メリット・デメリット(コストなど)を書き出し、どのメディアを選べばいいかを分かるように整理します(図1)。

図1 社内の情報接点の一覧(例)

加えて、相山氏が勧めるのは、誰に対してどの時期に何を使ってどういう内容を伝えるか、カレンダーのようにまとめたプランシートづくりです(図2)。「経営企画の発表、社内行事、人事表彰のタイミング、営業キャンペーンなど、各部署が全従業員に対してどのようなコミュニケーションをしようとしているのか、リサーチしながらまとめます。すると、『この人事制度の伝え方だと、先月のCEOの発言と矛盾するから、このままではだめだ』といった矛盾点も見つけやすくなります」。

図2 コミュニケーションプランシート(例)
出所/産業編集センター

エンゲージメントに階層あり

従業員のエンゲージメント調査をすると、組織の中に階層があることが分かります。会社の理念や人事制度といったエンゲージメントを高める情報に納得し、行動に移している共感層もあれば、認知はしていても「自分は違う考え方を持っている」と批判的な層、皆がやるならそれに続くフォロワー層もあります。

「ただ批判は、組織に愛着があるからこそ生まれるもの。批判層は、エバンジェリスト予備軍なのです。メリットが見えていないだけ、どう行動すればいいか分かっていないだけ、ということがあります。そこをしっかり埋めるコミュニケーションを設計していきます」と相山氏。

全社一斉のコミュニケーションでは響きが悪いものについては、「部門長だけに方針を渡し、部署ごとに『方針に対して、あなたは今月どんなアクションをするか』を書き込むワークショップを部門長が主導。アルバイトには、動画でトップメッセージを見てもらい、店舗をトップが回って問題点を聞くといった方法もあります。エンゲージメントの階層を意識して、施策を組み合わせていくのがお勧めです」。

従業員自ら表現できる場を持つ

ステップ❹はクリエイティブ。会社からの情報に当事者意識を持てるような仕掛けです。

「自社ブランドを再定義してエンゲージメントを高めたいなら、自社らしさとはこういうもの、とインプットするだけでなく、従業員に『お客様からこんなことを言われた』といったエピソードを書きこんでもらったり、投票してもらったり、自ら表現者になれる仕組みがあると当事者意識が増します。また、会社への求心力を高めるには、社会的な存在価値を示すことも有効。自社の存在意義を象徴するグッとくる話をオウンドメディアで公開し、従業員の家族や求職者などに見てもらうのもいいですね」。

実益効果を診る

ステップ❺は効果測定。ウェブ社内報を見た人は企業理念に対する共感度が高いのか、キックオフミーティングに参加した人はどうか。社内報アンケートやアクセスログ情報、人事が持つパルス調査やエンゲージメント調査などをクロス集計して、広報媒体ごとに分析していきます。「この部署のエンゲージメントが低い、このイベントに参加した人はエンゲージメントが上がっている、といったことが見えてくれば、効果があったこのイベントは来年も予算内で実施しよう、といった打ち手が考えられます」と相山氏。

例えば、アルバイト向けにウェブ社内報でクイズを出し、正解率が低い店舗は、トレーニングの部署に再コミュニケーションを依頼する、といったことも考えられます。「コミュニケーションが活性化している店舗は、売上も高いとなれば、コミュニケーションがセールスに影響しているということも割り出せ、投資もしやすくなります」。自社ならこういう伝え方は効果が高い、といった要点を5ステップで整理すると、今後の打ち手が見いだしやすくなります。

各社の取り組み

プロジェクトでは、各社がどのような社内広報ツールを活用しているのか、意見交換しました。一部を紹介します。

トラック運輸会社の大橋運輸は、健康経営や、働き方改革、ダイバーシティ経営に取り組み、従業員の比率は女性2割、高齢者1割、外国人1割、障害者4%と多様になっています。社内の管理栄養士が毎週LINEで健康情報を流し、食事に関することだけでなく、職場や健康における課題についてもLINEを通じてアドバイス。健康経営施策を通じた社内のコミュニケーションが生まれています。

ジャパネットホールディングスでは、クレドを全従業員が携帯、迷ったら立ち返るものと位置づけています。そこには「今を生きる楽しさ」を!という理念や、「見つける、磨く、伝える」といった大切にしている考え方が書かれています。社内SNSでは、トップからの発信に従業員がコメントを返せるようにし、月1〜2回社長との座談会も開催しています。また飲み会ならぬ「お菓子会」でコミュニケーションを図る工夫もしています。

理美容椅子の製造販売などをしているタカラベルモントは、2021年に創業100周年を迎えました。それに合わせ従業員の有志で「美しい人生を、かなえよう。」というパーパスを制定。しかし理解浸透には課題もありました。そこで周年イヤーでは、パーパスを映像化した動画コンテンツを制作。加えてトップが従業員へメッセージを動画や社内報の特別記念号で発信。パーパスへの理解も深まってきています。

各社の取り組み

 

大橋運輸

管理栄養士と従業員のLINEを通じたコミュニケーションは、食以外の課題についても気軽に相談できる場に発展。健康支援策を通じて、社内のコミュニケーションが強化されている
 

ジャパネットホールディングス

大切にしている言葉や考え方をクレドにまとめ、従業員が携帯し、すぐ立ち返ることができるようにしている。また経営陣らが考えを直接話す場も重視する
 

タカラベルモント

「美しい人生を、かなえよう。」というパーパスを映像化。事業を通じ「お客様の希望の光」であり続けたいという想いを込め、顧客と各現場の“朝のはじまり”を映像化し、パーパスへの理解向上に貢献した

さらなる打ち手を見つける

意見交換の場では、社内施策の効果測定にも話が及びました。アンケート調査時には、従業員の心理的安全性に配慮する、アンケート疲れが起きないように目的を伝える、結果が出たらすぐに改善に活かしフィードバックを行う、他部署の調査と掛け合わせて分析するなど。こうした振り返り、分析が、より良い施策を見つけるためには、必要になっています。誌面では今後も議論を続けていきます。
 


従業員エンゲージメント向上プロジェクト
事務局(運営・メディア協力):宣伝会議

ボードメンバー:


プロジェクト参加希望の方はこちらから
従業員エンゲージメント 向上プロジェクト事務局(株式会社宣伝会議)
houjin@sendenkaigi.co.jp


今回はスペシャルパートナーとして産業編集センターが入っています
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株式会社産業編集センター
https://www.shc.co.jp/