池澤樹×篠原ともえによるアートと広告的思考の融合

share

10代で歌手としてデビューし、アーティストとしても活躍するなどマルチな才能を発揮する篠原ともえ氏。現在はアートディレクターで夫の池澤樹氏と共同でクリエイティブスタジオ「STUDEO」を立ち上げ、アートやデザインの領域でも活躍している。両氏にアート的感性や思考の観点による広告のあり方について聞いた。

※本記事は8月1日発売の、月刊『宣伝会議』2022年9月号掲載記事の一部を抜粋したものです。

 

池澤 樹氏

アートディレクター 、クリエイティブディレクター。1981年生まれ、武蔵野美術大学デザイン情報学科卒業。東急エージェンシー、博報堂を経て2020年独立。同年クリエイティブスタジオ「STUDEO」を設立。主な仕事に、トヨタ「GR」「86」、サントリー「伊右衛門プラス」「黒烏龍茶」「六 ROKU」、ロッテ「SWEETS DAYS乳菌ショコラ」など。主な受賞に、東京ADC賞、JAGDA新人賞、カンヌ国際広告祭 金賞、ONESHOW 金賞、ADFESTグランプリ、NY ADC銀賞、日本パッケージデザイン大賞 銀賞、ベストデビュタント賞ほか。

 

篠原 ともえ氏

デザイナー、アーティスト。1979年生まれ、文化女子大学短期大学部服装学科ファッションクリエイティブコース・デザイン専攻卒業。1995年ソニーレコードより歌手デビュー。歌手・ナレーター・俳優活動を経て、現在は衣装デザイナーとしても創作活動を続け、アーティストのステージ・ジャケット・番組衣装を手掛ける。2020年、夫でアートディレクターの池澤樹とクリエイティブスタジオ「STUDEO」を設立。同年開催の「SHIKAKU -シカクい生地と絵から生まれた服たち-」では、サステナビリティと向き合い廃棄となる余剰の生地を余すことなく使い切る衣装作品などを展観し、大きな話題を呼んだ。

 

ワンオペでのモノづくりの不安がチームを得て払拭された

― 経歴や視点の異なる2人が「STUDEO」を立ち上げ、運営することで、仕事や考え方に変化は生まれましたか。

池澤:もともと僕は広告会社でアートディレクターとして仕事をしてきましたが、40歳くらいで独立したいと考えていたんです。そんな時に仕事で篠原さんと知り合い、自身の作品レベルを上げたいと相談を受けました。お互いキャリアの転換期を迎えている中で、アーティスト、芸能界という道を歩んできた篠原さんと、広告会社で培ってきた僕の視点を掛け合わせることで新しいものが生み出せるのではないかと、会社の立ち上げに至りました。「STUDEO」で共に仕事をすることで、互いに良い影響を与えていると感じます。

僕としては、以前はCMやグラフィック広告など、いわゆる狭義の意味での広告の仕事がほとんどでしたが、携わる領域の幅が広がりました。
例えば当社では日本タンナーズ協会さんとの取り組みを2020年から行っており、2021年には革のアクセサリー「LEATHER-MADE JEWELRY」が、そして2022年に鹿革のきもの「THE LEATHER SCRAP KIMO NO」がニューヨークADC賞を受賞しました。

このような出会いは篠原さんと共同していたからこそだと思います。デザインの基本的な考え方は変わらないし、スキルは自分でも磨くことはできますが、領域の拡大や、新たな出会いを生み出すことは難しいですから。逆に篠原さんは、それまで完全にひとりで作品をつくっていたので、チームでモノづくりを始めたことは大きな変化だったのではないかと思います。

篠原:そうですね。芸能事務所にいたときは、プレゼンボードからデザイン画など何から何まで全部ひとりでつくっていました。しかし、いただく案件はとてもレベルが高いものなので、このままひとりで挑み続けることができるのだろうか?というプレッシャーが大きくなっていったんです。でも「STUDEO」を立ち上げ、池澤さんが広告会社で培ってきた知見から、モノづくりの流れを教えてもらいました。まずはコンセプトを決め、皆でアイデアを出し合ってプレゼンして…。チームで作品をつくることのメリットを知ってまさに求めていたのはこれだと。ひとりで作品をつくっていた時に感じていた不安やコンプレックスがなくなりました。

先ほど話にも出た、日本タンナーズ協会の革のアクセサリーデザインの案件を例に挙げると、この案件は当初、私が工場を巡りインフルエンサー的にコメントを届けるPRの仕事から始まりました。その時に池澤さんから、PRするだけでなく、何か力強いアートピースをつくってビジュアル化するところまで手掛けてはどうだろうというアイデアをもらい、それを先方に提案したところ、受け入れられて最終的に私が革アクセサリーのデザインを手掛けることになったんです。完成した作品をPRするためのグラフィックの撮影は池澤さん主導でチームを組み、作品をつくるだけではなく、発信することまで一貫して行いました。さらにその後、池澤さんからニューヨークADC賞にエントリーしてはと提案を受けて。応募したところ、メリット賞を受賞したんですね。

池澤:単にモノをつくってPRするだけではなく、広告賞を受賞することでそこにニュース性が加わるので、さらに話題が拡散されると考えたんです。

篠原:私と職人さんとの間にできた絆によってつくられた作品のプロセスを、グラフィックなどのビジュアルで可視化し、伝えることで人の心を動かすことができたという手応えを感じましたね。発信の仕方を学んだ案件でした。
 

広告制作のプロセスを取り入れた「OMO7大阪」のユニフォーム

―星野リゾートのホテルブランド「OMO7(おもせぶん)大阪 by 星野リゾート」のユニフォームデザインも手掛けられましたが、このプロジェクトはどのような点がポイントでしたか。

篠原:この案件は競合コンペだったのですが、最初のオリエンテーションでは「派手にテンション高く」というオーダーをいただきました。
 

この続きは月刊『宣伝会議』2022年9月号に掲載しています。

「宣伝会議デジタルマガジン」にも記事を掲載しています。全文をご覧いただくにはご購読の必要があります。
 

月刊『宣伝会議』9月号

 
【特集1】
デジタルだけで、
ブランドはつくれるか?
─コアファンから顧客を広げるその時、取るべき次の手とは?
 
【特集2】
マルチデバイス化にどう対応する?
マーケティングにおける動画活用
 
【シリーズ特集】
宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本
動画広告のクリエイティブ・ディレクション
 


Follow Us