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日常と距離を置き身を委ねる体験空間「BRIAN ENO AMBIENT KYOTO」

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アンビエントミュージックの創始者として知られるミュージシャン/ビジュアルアーティスト、ブライアン・イーノの個展が、9月3日まで「京都中央信用金庫 旧厚生センター」で開催されている。「心地よさ」や「没入感」が好評を博し、当初の会期から延長となった本企画。統括プロデューサーの一人で、プロダクションをリードしたテー・オー・ダブリューの竹下弘基さんに話を聞いた。
(本記事の続きは月刊『ブレーン』2022年10月号「滞在の『体験』価値をどう生み出す?クリエイターの提案」特集に掲載しています)。

「アンビエント」な街、京都で

「BRIAN ENO AMBIENT KYOTO」の会場は京都駅から徒歩約5分の「京都中央信用金庫旧厚生センター」。築90年の歴史を持つ建築物だ。

ブライアン・イーノは、1972 年にデビューした英国のロックバンド「ロキシー・ミュージック」のメンバーとして活躍後、プロデューサーとしてデヴィッド・ボウイやコールドプレイなどを手がけた。音楽活動と並行してビジュアル・アートの創作にも力を入れ、音と光が合わさりながら自動生成し続ける「ジェネレーティブ・アート」を提唱。これまで世界中で展覧会を開催しており、今回の展覧会では4 つの「ジェネレーティブ・アート」作品を展示している。

そんなイーノが今、日本の京都で展覧会を実施することになった経緯を、テー・オー・ダブリュー 執行役員/プロデューサーの竹下弘基さんはこう話す。「始まりは、もう1 人の統括プロデューサーでもあるTraffic の代表 中村周市さんが2016 年頃から京都でのイーノのアートイベントを企画し、17 年に京都出身でイーノ好きの私が意気投合したことから。以降一緒に企画・制作に取り組んできました。『AMBIENT KYOTO』はコロナ禍を経て改めてイーノにアプローチをして実現したものです」。

そこで以前から竹下さんが親交のあった盆栽研究家の川﨑仁美さん、CCC アートラボの磯谷香代子さんに声をかけ、4 人のコアメンバーでインスタレーションを中心とした展覧会を提案することになった。

「京都を提案したのは、アンビエントミュージックとの親和性が高いと考えたことも一因です。アンビエントとは『環境の』『周囲の』といった意味合いを持ち、アンビエントミュージックはその場の空気に漂うような音楽を指すと理解していますが、京都にも目に見えないけど漂う京都ならではの何か、がある。ちょうどその頃、会場となる『京都中央信用金庫 旧厚生センター』とのご縁もあり、着々と準備が進んでいきました」(竹下さん)。何度もイーノ側への提案や調整を重ね、無事展覧会の開催が決まったのは21 年11月ごろのことだった。

没入感を高める体験づくり

「ありきたりな日常を手放し、別の世界に身を委ねることで、自分の想像力を自由に発揮することができるのです」⸺本展においてイーノが掲げたのはこんな言葉だった。

これを竹下さんは、次のように読み解いたという。「イーノはこれまでも、アンビエントミュージックを『意識して聴かなくてもいいが、興味深い音楽』と話しています。今回の展覧会では、そんな音楽に囲まれることで日常の文脈を手放してもらい、豊かに想像を膨らませられるような場にしようと考えました。昨今の展覧会を含む体験は、スマホでフォトジェニックなシーンを撮って終了、となってしまうことが少なくないですが、そこから想像の余白や思考のプロセスは生まれません。ここでは自然とスマホから手を離し、意図的に意識をオフにする瞬間を創出するような空間・体験づくりを意識しました」。

もうひとつ、イーノからチームに伝えられたテーマは「PLAYFUL」。体験を通じて明るく楽しい、前向きな気持ちになってもらうことが求められた。

実際の展示内容を見ていこう。会場は1~3階から成る。フラッシュなしの撮影は可能だが、入口では無音のスマホカメラの使用を推奨している。入場後は3 階から順に回っていく流れ。ビジュアルが無い音声を中心とした作品から徐々にビジュアルの要素が強い作品、という順になっている。

3階に設けられたのが「The Ship」だ。タイタニック号の沈没や第一次世界大戦、人間の傲慢さといったものをコンセプトに制作された作品。真っ暗な部屋の四方八方に、15 台のスピーカーが配されている。各スピーカーからは個別の音が鳴り、靴を脱いで会場に入った来場者を全方位からのみ込む。

3 階の「The Ship」は、タイタニック号の沈没、第一次世界大戦、そして傲慢さとパラノイアの間を揺れ動き続ける人間をコンセプトの出発点とした作品。

「この作品を暗闇で展示するのは世界初です。入場時は緊張感を感じると思いますが、次第に音と闇にのみ込まれる感覚が味わえます。イーノはよく『音や空間に身を委ねる』という意味で『surrender』という言葉を使いますが、まさにその状態。会場では皆さん極力スマホを触らず会話もせずに、ただ座って身を委ねている印象ですね。ポイントのひとつは、靴を脱いで入る場にしたこと。その所作を挟むことで、自然と心が解放されるようにと考えてのことです」と竹下さん。

(……この続きは月刊『ブレーン』2022年10月号に掲載しています)。

本記事のこの後のTOPIC
・想像を膨らませる「余白」がレビューにつながった

月刊『ブレーン』2022年10月号

【特集 滞在の「体験」価値をどう生み出す?クリエイターの提案】
・コスモスイニシア、コスモスホテルマネジメント
「MIMARU 大阪 難波STATION」
・沿線まるごと
「沿線まるごとホテル」
・インザパーク「INN THE PARK」
・レッドテック「茶室ryokan asakusa」「茶室ニゴウ」
・「BRIAN ENO AMBIENT KYOTO」
・ロッテ「おかしの学校」
・トイエイトホールディングス「TOY8 Playground」

 

【TCC賞2022】
・審査委員講評

 

【SPECIAL】
・CAREER NAVI/ADK Wonder Records
・BRAINクリエイティブパートナーズ
・コピーライター養成講座/課題制作レポート

 

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