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瞬発力と判断力が求められる、録音・MAの仕事の実情

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AdverTimes.や、月刊『ブレーン』のスタッフリストに多数名前が挙がるクリエイターたち。肩書きに聞き覚えはあっても、実際どのようなお仕事をされているのでしょうか。それぞれの職種のスペシャリストたちの、仕事の実像に迫ります。
(※本記事は9月30日発売の月刊「ブレーン」11月号「スペシャリストナビ」での記事内容に加筆したものです)。

 

清水天務仁さん(録音、MA+MIX)

新卒で入社したポストプロダクションから2020年に独立し、現在はフリーのミキサーとして、主にCMの現場で活躍する清水天務仁さん。撮影現場での録音とMAの両方を担っている。

撮影現場での清水さん。肩に抱えるのは風防のついたガンマイク。

MAとはマルチオーディオの略で、録音した声と、環境音、音楽、ナレーションなどを混ぜ合わせて、映像に適した納品物をつくる作業だ。

MA前の仕込み作業。画面はノイズ除去のソフト。

元は音楽のレコーディングエンジニアを志望していたが、ポストプロダクションへの入社後、映像と音の掛け合わせの意外な面白さに夢中になった。

「映像を見る時に、見たままを違和感なく受け取ってもらえるように。あるいはつくり手の意図が加わっていても、自然に受け入れてもらえるように。そんな誰にも気付かれないような音づくりをしたいと思うようになった」と話す。

録音という仕事をこう説明する。「何も生み出してはいない受け身の仕事。でも監督が想像する世界を、音の面で実現するために、カメラで切り取られた世界の音を考えて判断する瞬発力が求められる」。

そのためには、適した音を撮影現場で見極める必要がある。たとえば、住宅街での撮影。路上で話す役者の足元にマンホールがあり、下を水がチョロチョロ流れているとする。そんな時はマンホールの穴を塞いで音を消す。歩きながらのセリフや顔のクローズアップでは靴裏に柔らかい素材を貼って足音を消し、雨の日に晴れのシーンを撮影する時は、水音を消したりもする。

撮影スタジオでの録音部の席。

「撮影環境は千差万別で、ノイズが消せない時も。そんな時は、後でノイズ除去できるか、もしくは声だけ録り直すか、再撮影するべきなのか、瞬時に判断する必要があります。カットがかかってすぐに声を上げないと現場は次のシーンへと進んでしまいます」。また声だけを録り直す場合は、撮影直後に録るか、後日アフレコをした方が良いのかなどを考える。さらに録り直す際は立つか座るか、どちらを向くか、視線の先に何があるかなど、どうしたら役者が撮影時の感情に戻りやすいか、素人ならばリラックスした状態になれるかなどに気を遣う。

「しかし、何としても同録(同時録音)しなければならない撮影も多くあります。撮影現場にいる全員でつくり上げ、役者が練り上げた感情のその一瞬を、僕が録り逃すわけにはいかないと思っています。そのためにできることは全てやるべきだと思っていますし、全員が本番に集中している撮影現場の雰囲気は、とても好きです」(清水さん)。
 

しみず・てむじん

ESPミュージカルアカデミーで音楽のレコーディングを学んだのち、新卒でイメージスタジオ109 に入社。一度は仕事を辞めようと海外を旅するが、1年で仕事に復帰。登山の趣味と自然を愛する気持ちを身につけ戻ってくる。以降仕事への情熱と自然への愛情の間を行き来しつつミキサー業に邁進している。2020 年よりフリーランス。