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小説と広告には共通の魅力がある―中村航×岩崎亜矢

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小説『広告の会社、作りました』(ポプラ社刊)の著者である中村航氏と、開高健氏らが立ち上げた広告会社、「サン・アド」のコピーライターである岩崎亜矢氏。小説と広告にゆかりの深い2人が、両者に共通する「伝え方」について語りました。
※本記事は、2022年9月22日~25日に開催した「宣伝会議賞」60回記念したイベント「そのことばのある前と後~広告の中のことばたち~」で実施したトークイベントの一部を抜粋したものです。アーカイブ配信はこちら
※第60回「宣伝会議賞」の応募受付は2022年11月1日までです。

小説家
中村航氏

2002年『リレキショ』にて第39回文藝賞を受賞しデビュー。続く『夏休み』、『ぐるぐるまわるすべり台』は芥川賞候補となる。ベストセラーとなった『100回泣くこと』ほか、『デビクロくんの恋と魔法』、『トリガール!』等、映像化作品多数。アプリゲームがユーザー数全世界2000万人を突破したメディアミックスプロジェクト『BanG Dream!』のストーリー原案・作詞等幅広く手掛けており、若者への影響力も大きい。

 

サン・アド
コピーライター/クリエイティブディレクター
岩崎亜矢氏

主な仕事に、GINZA SIXネーミング、JINS「私は、軽い女/男です」他、TOTO「止まるなTOTO」、ツインバード「ぜんぶはない。だから、ある。」、村田製作所「この奥さんは、介護ロボットかもしれません」他、ハンバートハンバートのクリエイティブディレクションなど。『心ゆさぶる広告コピー』、『僕はウォーホル』、『僕はダリ』(すべてパイインターナショナル)など様々な書籍も手がける。TCC会員。

 

読み手の「脳」にある、体験や言葉と勝負する

岩崎:「宣伝会議賞」には毎年すごい数の応募があるんですね。ここでグランプリを獲ると、今は全然違う仕事をしている方でも、学生さんでもコピー1本で認められる、という稀有な立ち位置の賞です。普通なら、実績を積まないと賞レースには参加できないものなので、ありがたいですよね。

中村:歴代の大賞受賞作を見ていくと、なんだか短歌とか俳句を読んでいるような気分になりました。自分とすごくしっくりくる作品とそうじゃないものがあって、コピーも共感のジャンルなのかな、と思いましたね。

岩崎:まさにそうだと思います。突拍子もないことを言っても、読んだ人が「あるある!」と思えば、それが心に残ったり、購買というアクションを生みますからね。ただ、「面白いだけ」とか「共感できるだけ」ではコピーにはならないんですね。そこがコピーの面白さであり、難しさでもあると思います。

中村:つまり、個人の脳の中にある体験や言葉との勝負ですね。そういう意味では、小説もコピーと似ていると思います。例えば、空を見たことがない人の心に、「青空」という言葉だけでイメージを伝えることはできませんよね。そこで多くの「例え」を使って説明することになる。反対に、空を見たことがある人には「青空」と書けば、それだけで伝わってしまう。そんなふうに、読者の頭の中に絵を描いたり、概念を届けるにはどんな言葉を使えばいいのだろう?と僕も常に考えていますね。

「未来が楽しみになった」といわれた名作コピー

岩崎:それでは、「好きなコピー 影響を受けたコピー」を発表していきたいと思います。まずは私からいきますね。

「美しい50歳がふえると、日本は変わると思う。」(資生堂)

これは、1990年代半ばに書かれた資生堂のコピーなのですが、実は私の父が書いたものなんですね。
70年代も80年代も、50歳以降の女性って、なんとなく「おばさん」とか「おばあちゃん」というカテゴリーに一緒くたに入れられていた気がします。そんな中、50歳以上の女性が輝くことを応援すれば、日本はもっともっといい場所になるはず。そんなメッセージをひとつの商品のCMで言ったことが新しかったのではないかと思います。

当時、40代だった私の先輩が「このコピーで凄く励まされたし、救われた。」とおっしゃっていました。「未来が楽しみになった、ありがたいコピーだった」という言葉が、今でも印象に残っています。

中村:僕のはコピーと言っていいのかわからないんですけど……。

「人間山脈」

ですね。昔、「アンドレ・ザ・ジャイアント」という身長2メートル20センチを超えるプロレスラーがいまして、彼の異名が「人間山脈」だった。僕は中学2年生ぐらいの頃、そういうのが大好きで、新しい異名が出てくるたびにノートに書いていたんですね。それがその後、小説を書くことになった原点なのかもしれない、と思います。

「小説のタイトル」は、コピーそのもの

岩崎:次は、「自分たちが制作した“ことば”」についてのエピソードをご紹介したいと思います。まずは、中村さんの代表作ですね。

『100回泣くこと』(小学館)

中村:はい。今、話している途中で気づいたんですが、小説って完全に読者との「1:1」の世界なんですよね。どこかにいる「あなた」という読者に向けて書いているから、大勢に向けたものではない。でも、作品のタイトルにはコピーの要素があるから、「1:不特定多数」なんだな、と。

この『100回泣くこと』という本のタイトルは、最初『スケッチブック』としていたんです。心象風景のスケッチのような意味合いなんですが、これは「1:1」の“閉じた”タイトルですね。考えた末に今のタイトルにしたわけですが、そのおかげで「1:不特定多数」向けのものになりました。

岩崎:すごくわかります。もしもタイトルが『スケッチブック』だったら、ちょっと手に取らなかったかもしれない……(笑)。

私は、「ハンバート
ハンバート」というミュージシャンのお仕事を6年ぐらいやっておりまして、クリエイティブディレクションとコピーライターをやっています。毎回、彼らの新譜を通しで聴いて、コンセプトをコピーにするのですが、「家族」をテーマにしたアルバムには、

「愛は恋より腹が立つ。愛は恋より泣けてくる。」

というキャッチコピーをつけました。たとえば、友だちや恋人に言われてなんともないことでも、家族に言われると妙にムッとすることってありますよね。それって距離の近さゆえに立ち入る範囲が大きくなるからだし、絆や思いの深さゆえでもあるし。愛になると深くて重いから腹も立つし、そのぶん泣く場面もたくさんあって……。その対比を、一本のコピーに表してみました。

小説とボディコピーは似ている

岩崎:中村さんにうかがいたかったのですが、小説の書き出しって、どんな工夫をされているんですか?

中村:過去の名作にも、色々と有名な出だしがあると思うんですが、小説というのは書き直しながら進んでいくものなので、ひとつの文章が次の文章を生む、といった要素がありますね。

その中でも、特に書き出しの部分は一番書き直すので、理にもかなっているわけです。僕は「最後まで読んでもらえれば、それでいい」と考えているので、そういう意味でも最初のところでは絶対に逃さないぞ、と(笑)。
まずは単純に、読者を引き込むことですよね。そのために謎を含ませた文章を書いたり、いきなりインパクトのあるセリフから入ったりと、工夫を凝らしています。やっぱり、他の部分を書いているのとはちょっと意識が違いますね。

岩崎:よくわかります。書き出しで「何の話なんだろう?」と思わせて読ませちゃう、というのはボディコピーでもよくやる手法なんですが、最後まで読み続けてもらうには、また違うテクニックがいりますね。

最後に、「あなたにとっての、ことばとは」を、お互いに発表したいと思います。私にとってのことばとは、「反発と共感」です。
私は、共感を生むには反発が必要だ、と思っていて。 
クライアントワークをする時は、相手を100%受け入れる愛を持って臨むのですが、それだけでは「世の中に伝わる言葉」は生まれないんですね。疑問や反発さえも相手にぶつけ、そのブランドのために世の中の共感を生み出すこと。それが、私の仕事だと思っています。

中村:僕にとっての言葉とは「比喩」ですね。言葉というのは、比喩そのものだと思います。僕らは言葉で「例えられたもの」を、世の中にある現象や物体だと思っているわけですよね。かけ離れたもの同士を組み合わせて、新しい比喩をつくって、それが新しい概念になることもある。それが、小説やコピーに共通する魅力なのではないかな、と思います。

―イベントの様子は、こちらからご覧ください。

第60回「宣伝会議賞」応募のご案内

「宣伝会議賞」は、宣伝会議賞は、月刊「宣伝会議」が主催する広告表現のアイデアをキャッチフレーズまたは絵コンテ・字コンテという形で応募いただく公募広告賞です。
一般部門・中高生部門で作品を募集しています。

【応募期間】
2022年9月1日(木)10:00~2022年11月1日(火)13:00

第60回宣伝会議賞公式サイト:https://senden.co
公式Twitter:https://twitter.com/sdkgaward
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公式Facebookアカウント:https://facebook.com/sendenkaigiaward


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