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手段のデジタル化にとどまらない コミュニケーションの全体設計こそDX

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マーケティングDXの実現には、個々の手段だけでなくビジネスの構想全体に対する俯瞰の視座が必要となる。CRMシステムを提供し、ファンマーケティングへの注力を進めるシナジーマーケティングの杉山健太氏に考えを聞く。

月刊『宣伝会議』2022年11月号(9月30日発売)では、「生活者の変化に合わせて企業も変わる!マーケティングDX」と題し特集を組みました。
ここでは、本誌に掲載した記事の一部を公開します。

シナジーマーケティング
企画制作部部長 兼
DX BOOSTER事業責任者
杉山健太氏

2001年からITベンチャーにてコンテンツ事業に携わり2003年に起業。クロスメディアPFを立ち上げ事業化。2010年に現職、エージェント営業として大手・中小企業およそ100社のCRM課題解決を実行。営業マネージャー、事業部長を経て、現在はDX系サービス開発を担う企画制作部の部長を務める。

 

Q1. 「マーケティングDX」という言葉をどのようにとらえていますか。

A. 「部分最適」ではなく「全体最適」のためにデータを活用する。

当社では「マーケティングDX」を「デジタルデータに基づき顧客と顧客のニーズを知り、適切なコミュニケーションで企業の収益化に貢献できる状態」と定義しています。シンプルに言うと「マーケティングのデジタル化」です。

一方で類似ワードとして「デジタルマーケティング」という言葉があります。デジタルマーケティングは広告やSNSなどデジタル手段の活用にとどまるケースが多かったですが、近年のコロナ禍もあり、すべての業種業態において非対面、つまりオンラインのみで完結するコミュニケーションを推進せざるを得ない状況になりました。

それらを実現するためには今までのように手段のみをデジタル化するのではなく、データを活用して顧客を知り、ニーズを知り、そこからオンラインのコミュニケーション全体を設計する必要があります。部分最適のためではなく全体最適のためのデータ活用、それがデジタルマーケティングからマーケティングDXへのアップデートと考えています。

Q2. マーケティング部門で必要とされるDX人材のスキルとは?

A. 必須なのはデジタルの知識や技術ではなく「ビジネス思考」。

経済産業省の「デジタル人材育成プラットフォームの検討について」でも挙げられている通り、企業のマーケティング部門にデータを使って戦略を立てるビジネスパーソンが不足していることが、DX推進における課題となっています。このデータを使うビジネスパーソンとはIT技術者のことではなく、データに関する知識に加えビジネス思考を持ち合わせている人材です。

マーケティングを行う上で、物(サービス)を売るためにどうすべきかを考えられる思考がないと、いくらデジタルの知識や技術をインストールしても、求めている人材にはなり得ません。

デジタル面でのスキルは広告、分析、HTML、SNSなど幅広い知識が必要になるため、すべてを持ち合わせた人材を求めるのではなく、ビジネス思考を持ち合わせている人材に自社のマーケティング課題に対して必要なスキルをインストールし、施策を実行しながら、必要かつ最適なマーケティング人材を育成していくことが重要となります。

Q3. マーケティングDXを実現するための、最初の一歩となりうることとは?

A. まずは、「あるべき姿」に近づくための成功体験をひとつつくる。

マーケティングDXはオフラインのコミュニケーションと同じく、顧客を知り、そのニーズに応えていき、顧客との関係性を企業収益に変えていくことが目的であると考えます。その実現のためにも「As Is=顧客の現状」と「To Be=あるべき姿」を描き出し、それぞれの間にあるギャップを埋めるには何をすべきかを「To Be」から逆算し、実施ステップを描くことから始めるのをおすすめします。

そして、描いた実施ステップの中から一番簡単に実施できる施策を試し、ひとつの成功体験をつくるところまでを最初の一歩とします。その成功体験をいかに大きく膨らませていくのかを、全体最適思考をもって考えることが企業のマーケティングDXへの始まりになると考えています。