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漫談で学ぶ「臨場感のあることば」―街裏ぴんく×中川真仁

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“大嘘つき漫談家”の街裏ぴんく氏と、自身も漫才コンビとして活動するコミュニケーションプランナーの中川真仁氏が、お笑いと広告の共通点を探りながら、「臨場感のあることば」についてトークセッションを行ないました。
※本記事は、2022年9月22日~25日に開催した「宣伝会議賞」60回記念したイベント「そのことばのある前と後 ~広告の中のことばたち~」で実施したトークイベントの一部を抜粋したものです。アーカイブ配信はこちら

漫談のネタづくりは、最初に「言葉」ありき。

漫談『結婚式場』でセッションが始まった。

中川:冒頭、自己紹介代わりに漫談ネタ『結婚式場』をやっていただきましたけれども。以前から、ぴんくさんの漫談って「SF」に近いものがあるな、と思っていたんですよ。そもそも、あの異世界に飛んでいくような作風は、どうやってつくっているんですか?

街裏:たとえば、街中で聞いた言葉をそのままスマホにメモしていて。ある時、電車の中で「まぁ、飼い主も寂しいわなぁ〜……」という言葉が聞こえてきたんですよ。それを聞いてグッときて。まずは、この言葉がどこで繰り広げられていたら一番面白いやろ?と考えてみる。そんなスタートが多いです。

中川:それはやっぱり、最初に言葉がある、ということですよね。

街裏:ホントそうですね。最初に引っかかった言葉をつかって、どんな世界にしたらゾクゾクするんやろ? ということをすごく考えますね。僕、実は「漫談で大事にしている5つのポイント」というのがあるんですよ。それが、

①自分の漫談を好きになってもらう
②共感してもらう
③「ウソや!」と思ってもらう
④むちゃくちゃなウソに乗っかってもらう
⑤ボケであるウソに突っ込んでもらう

というもので。実は、めちゃくちゃやることが多いんですが、これらをクリアしないと、やっぱり大爆笑にはつながらないな、と思ってますね。

妄想こそが、発想を“飛ばして”くれる。

中川:ぴんくさんて、子ども時代はあったんですっけ?

街裏:あるわい!(笑)

中川:いや、どんな子どもだったんかな、と思って(笑)

街裏:子どもの頃は、友だちがいなかったですね〜。幼稚園ではいじめられて、そのまま小学校4年生ぐらいまでずっとひとりで。仕方なく家の中でやっていたのが「人形遊び」でした。「キン肉マン消しゴム」みたいなのを大きいのと小さいのに分けて、ストーリーをつくって戦わせる、という。

中川:うーん!それはもう、その時から始まっていますよね。僕もひとりっ子だから、同じようなことをしてました。ビー玉を2種類に分けて、ぶつけ合うみたいな(笑)。だから、人形遊びの話はめちゃくちゃ共感しますよね。

クリエイティブな仕事をしている人間の中には、時事ニュースなどで事件や災害の映像を見ると、全く別の妄想を始めるタイプがいるらしいんですよ。多分、それがわれわれやな、と思いますね。

たとえば、過去の宣伝会議賞の大賞に「家に帰ったら、母が倒れていた。」という床暖房のコピーがあって。これだって、他にいろんな言い方ができるものを、あえて面白い方向に“飛ばして”いるわけです。ああいう発想こそが空想の産物だと思うんですよ。

街裏:たしかに。このコピーは最初に受ける印象と、後から伝わるリラックス感が真逆になっていますよね。かぁ〜!やられたなあ…。

会場では第1回から第59回までのグランプリ作品が展示された。「家に帰ったら、母が倒れていた。」は第33回の東京ガス/ガス温水床暖房システムNOOKのキャッチフレーズ。

言葉を2個足すと、新しいものが生まれる。

中川:ぴんくさんの漫談ネタって、キャッチーなタイトルがめちゃくちゃ出てきますよね。たとえば、僕が大好きな「親布(しんぷ)」っていうネタ。これは、オーダーメイドのスーツをデザインしてくれた人から、「初めて袖を通す前に、“親布”に挨拶しに言ったほうがいい」と言われる、というストーリーでしたよね?

街裏:そうですね。親の布だから「親布(しんぷ)」で、スーツの方は子どもだから「子布(こっぷ)」です。

中川:僕らが広告会社で、クリエイティブ職の人たちに言われるのが「言葉を2個足すと、新しいものが生まれる」という話なんですが。「親布」って言われた時の世界観の広がりがヤバいな、と思ったんですね。あのネタは、どうやってつくっているんですか?

街裏:ずっと一人遊びをしてきたせいで、頭の中で新しい漢字をつくるのが好きなんです。例えば、子どもが凧揚げをしているのを見て、「ああ、空にタコを揚げている。これはもう、タコの空揚げ(からあげ)だな。」とほくそ笑む、みたいな(笑)。そういう習慣が、いつの間にかいろんなネタに広がっていくんですよ。これはもう、ネタづくりと言うよりは趣味みたいなものですね。

街裏さんの漫談には、独特な言葉が出てくることが多い。

「リアリティ」を生むためにしていること

中川:漫談ネタを言葉にする時は、キッチリ決め込んでからつくるんですか?

街裏:僕、一言一句を全部ノートに書くんですよ。だから、中身は決まっているんだけど、書きながら喋ることが練習がわりになっていて。全部書き終えたら、頭の中に「絵」で入るので、練習はあまりしないようにしてますね。

中川:絵で入っちゃうんですか?!練習しないのは、ネタの鮮度のため、ということですか?

街裏:そうです。「自分は、本当にこういう経験をしたんだ」と思い込まないと、ウケないんですよ。だから、アドリブが出てくる隙間を残すために、あえて練習し過ぎないようにしてます。

中川:たとえば、いい小説はウソやのに、めちゃくちゃ臨場感がありますよね。描写も多すぎず、少なすぎずで。そういう、臨場感を生むために意識していることって、何かありますか?

街裏:昔、漫才師の上岡龍太郎さんが「僕は、キッチリした喋り方だからダメなんです。」と言っていて、「なるほど!」と思いましたね。確かに、さんまさんや鶴瓶師匠みたいに、あっちこっちに寄り道しながら話す方が、話にリアル感が出るな、とは思いますね。

中川:たしかに、リアリティがないと「本当のウソ」になっちゃうんですよね。CM制作でもよく「リアルにして」って言われるんですよ。
元々、広告自体がウソなわけだから、いいことばかり言おうとしてもダメなんだと。そこは、お金をいくらかけたか、じゃないんですよね。

街裏:中川さんがつくったCMで、梅沢富美男さんがレモンを被りながらレモンサワーをつくるものがありますよね(編集部注:「こだわり酒場のレモンサワー」シリーズ/サントリー)。そんな非日常的な世界で、最後にひとこと「つくる時間もおいしい」と。あの言葉は、リアリティがあってすごくいいなと思いますね。

中川:ありがとうございます。今度ぴんくさんと一緒に、CMつくりましょうかね?(笑)

広告と漫談の「リアリティ」とは何かを考える。

ことばとは、「そいつ」である。

中川:最後に、「わたしにとって、ことばとは」というお題が出ているんですけれども。まずは、僕からいきますね。ことばとは、「そいつである」。どういう意味かと言えば、言葉って結局は、「そいつ」の経験や想像からしか出てこないものなんだ、ということですね。

街裏:ぼくもね〜、実は、中川さんとほぼ一緒なんですよ。はい!ことばとは、「気」である。

これは気持ち的な話なんですけど、魂がこもっているかどうかが大事だろう、と。そういう意味では言葉って確かに「そいつ」そのものなんですよね。

中川:なるほど〜!やっぱりひとりっ子って、こういう結論に行き着くものなのかな?(笑)

街裏:はい!僕は中川さんと、とても気が合います!(笑)

―イベントの様子は、こちらからご覧ください。
 

トゥインクル・コーポレーション
街裏ぴんく氏

自作の架空話を、本当にあったかのように熱量を込めて展開する“大嘘つき漫談家”。2022年11月12日(土)18:00より、渋谷区文化総合センター大和田6F 伝承ホールにて漫談独演会『東幻京』を開催。

 

電通
ビジネストランスフォーメーション クリエーティブセンター
コミュニケーションプランナー
中川真仁氏

大阪に生を受け、吉本新喜劇、4時ですよ~だ、爆笑BOOING、すんげ~ベスト10、ごっつええ感じ、オールザッツ漫才等に浸かった後、コピーライターに。今は広告や広告以外のものを作っています。世界がもっとアホな広告であふれますように。
宣伝会議賞のベストスコアは学生の時の一次通過。 漫才コンビ「ハコグミ」としても活動。

 

第60回「宣伝会議賞」応募のご案内

「宣伝会議賞」は、宣伝会議賞は、月刊「宣伝会議」が主催する広告表現のアイデアをキャッチフレーズまたは絵コンテ・字コンテという形で応募いただく公募広告賞です。
一般部門・中高生部門で作品を募集しています。

【応募期間】
2022年9月1日(木)10:00~2022年11月1日(火)13:00

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