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思わず聴きたくなる“ことば”と広告―秀島史香×堀内有為子

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多くのラジオ番組で活躍する「トークのプロ」である秀島史香さんと、宣伝会議賞の審査員も務める「ことばのプロ」、東急エージェンシーのコピーライター 堀内有為子さん。お2人が「聴きたくなることばと広告」をテーマに語り合いました。
※本記事は、2022年9月22日~25日に開催した「宣伝会議賞」60回記念したイベント「そのことばのある前と後~広告の中のことばたち~」で実施したトークイベントの一部を抜粋したものです。アーカイブ配信はこちら
※第60回「宣伝会議賞」の応募受付は2022年11月1日までです。

ラジオDJ/ナレーター
秀島史香氏

神奈川県茅ヶ崎市出身。慶応義塾大学法学部政治学科卒業。現在FMヨコハマ「SHONAN by the Sea」、JFN系列「Please テルミー!マニアックさん。いらっしゃ~い!」、NHK「ニュースで学ぶ現代英語」などに出演。DJ、テレビ・CMのナレーション、機内放送、執筆活動などで活躍中。2019年度文化庁芸術祭放送個人賞受賞。

 

東急エージェンシー
クリエイティブディレクター/コピーライター
堀内有為子氏

最近の仕事は、マンナンライフ「ゼリーに蒟蒻、隠してます」、渋谷ヒカリエ「Find your Favoriteクリスマス」、アイシア「キミがそばにいると」、フジパン・ネオバターロール「おいしく今日をはじめよう」、東急SDGsトレイン。ACC賞ブロンズ、New York Festivalsファイナリスト、TCC新人賞など。

 

視聴者の「邪魔」にならずに染み込むものを

秀島:ラジオDJの秀島史香です。堀内さん、私の本を読んでくださったとお伺いしたのですが。ありがとうございます!

堀内:はい、『なぜか聴きたくなる人の話し方』(朝日新聞出版)、拝読しました!私は東急エージェンシーでコピーライターをしているのですが、この本で書かれていることは、すごくコピーと近いところがあるな、と感じました。この本を出されたきっかけは、何だったのですか?

秀島:仕事柄、さまざまな相談を受けるのですが「どうしたら人とうまく打ち解けられますか」とか「初対面で緊張する」といった悩みが多かったんですね。そんなご質問に答えているうちに、「すべての答えはラジオにある」という気がして。めちゃくちゃ手前味噌なんですけれども(笑)。

堀内:ラジオって、声だけで映像の助けがあるわけではないので、凄くソリッドでシンプルなコミュニケーションですよね。その分、参考になる部分がとても多いな、と感じます。中でも特に気になったのが、「話し始めは、とにかく短く」という章。広告でも一番最初にキャッチコピーをつけるわけですが、それと同じだなと思いまして。

秀島:ラジオというのは、何かをしながら聴いていただくことがすごく多いメディアなんですね。ですから、話し始めが長いと、そもそも聞いてもらえません。何かをしている最中に、ポーンと耳に飛び込んできて染み込んでいく。そうなるためには何をすればいいのかな、と常に考えますね。

堀内:そこも広告と近いですよね。そもそも、テレビを見ている時に「ちょっと邪魔だな」と思われがちなのが広告というものなので(笑)。

秀島:同じかもしれません(笑)。聞き手にあまり負担をかけないという意味でも、なるべく「スパッと切れ味良く」ということは意識していますね。

それでは、わたしたちが好きなコピーをお互いに発表していきたいと思います。まずは私から行かせていただきますね。

「NO MUSIC, NO LIFE.」(タワーレコード)

これ、大好きなんですけど、本当に名作コピーですよね。調べてみたら、これはグローバル展開されてはいるものの日本発のコピーだったんですね。もう、このまんまの切れ味といいますか。短ければスパッとハマる、すごく素敵な例だと思いますね。
この潔さに加えて、同時にすごいなと思うのは、この「MUSIC」の部分に「自分なら何を当てはめようか?」という余白を残してくれていることですね。

堀内:わかります。流行りましたよね!ここに何でも入れちゃう、みたいな(笑)。
私が選んだコピーは、こちらです。

「昨日まで世界になかったものを。」(旭化成)

旭化成さんは、社員の3分の1が海外にいる、という凄くグローバルな企業なんですね。ただ、そこに向けて発信するコピーが弱かった。今でこそSDGsという指針がありますけど、当時はあまりエコという概念がなかった時代。その中で、企業が世界の未来に挑んでいく姿勢を打ち出したことに感銘を受けたコピーですね。

クライアントの本音を聞き出すには?

堀内:秀島さんに是非うかがいたかったのですが、コピーライターという仕事は言葉をつくるだけではなくて、「その企業がどこに向かおうとしているのか?」を聞き出す作業が基盤になるんですね。そこを聞き出すのって結構むずかしい、と思っていまして。「本音を聞き出す術」みたいなものってあるんでしょうか?

秀島:まずはこちら側から「開く」ということが大事だと思いますね。聞き出すだけだと相手ばかりが話すことになってしまって、気持ち的に「ちょっとしんどいな。」と感じられるかもしれませんよね。
ですから、「私も、本音としてはこういうことってできるのかな、という不安がありまして……。」みたいにちょっと胸襟を開いてみる、といいますか。それに対して「個人として、あなたはどう思っていらっしゃいますか?」みたいなことでもいいと思うんですよね。

堀内:「この人」に対して応えたい、と思えるような空間をつくるということですね!勉強になります。

秀島:ひとりの人間の「日々の暮らし」に落とし込んだ上で、話を振ってみると、相手も「自分ごと」として頭が回り始めるのではないか、と思いますね。そのためには、相手に100を話してもらって自分は0ではなく、自分の側でも30とか40ぐらいは提供できる情報を用意しておくことが大事だと思いますね。

堀内:たしかに、コピーを書くのはひとりの時が多いので、「0:100」の状態になりやすいんですね。ちゃんと相手と対話をしながら考える姿勢が大切なんですね。

秀島:続いて、私が選んだコピーはこちらです。

「努力か、才能か、いや体調だ。」(大塚製薬「ボディメンテ」)

これを見た時にビックリしてしまって。私たちって、つい「努力すればなんとかなる」とか、「成果と才能は結びついている」と考えがちなんですけれども、いやいや、それよりも大事なのは「体調」でしょう、と。こういう、当たり前のように思っていたものに「コロンブスの卵」的な気づきを与えてくれたので、すごく共感してしまったんですね。

堀内:本当に。その気づきがしっかりと商品に落ちていて、すごく上手ですよね!

次に私は、すこし大きめなコピーを。

「一瞬も 一生も 美しく」(資生堂)

これは、本当に資生堂さんらしいコピーで、正統派ですよね。その時々を輝かせようとする企業姿勢を表しながらも、それを「人生の美しさ」みたいなものと対比させている。凛とした雰囲気を持ったコピーですね。
たった9文字でこれほど企業と人生の本質を言い当てられるとは、まだまだコピーには無限の可能性が残されているな、と思わせられましたね。

「ことばという贈り物」をどんどん掘り起こす

堀内:最後に、「私にとってことばとは」ですね。絵で描いてみたんですけど、私にとっての言葉は「スコップ」です。言葉がないと絶対に見つからないものがあるな、と思ったので、何かを見つけるための道具、スコップとかシャベルみたいなものじゃないかな、と思っています。

秀島:たしかにそうですね!私にとっての言葉とは「贈り物」です。誰かが投げかけてくれた言葉ひとつで、私たちのテンションってそれこそピュ~って上がったり下がったりしますよね。だからこそ、できれば優しい言葉を掛け合っていきたいな、と。
素敵だな、と思ったものに「素敵ね」と口にするだけでも、その人への贈り物になる。それなら出し惜しまずにバンバン使っていきませんか?という。そんな思いなんですよね。

堀内:本当ですね。ことばは無限につくり出せるものですもんね。

秀島:そういうことですよね。もう、スコップで掘れば掘るほど、ですから(笑)

 

 

―イベントの様子は、こちらからご覧ください。

第60回「宣伝会議賞」応募のご案内

「宣伝会議賞」は、宣伝会議賞は、月刊「宣伝会議」が主催する広告表現のアイデアをキャッチフレーズまたは絵コンテ・字コンテという形で応募いただく公募広告賞です。
一般部門・中高生部門で作品を募集しています。

【応募期間】
2022年9月1日(木)10:00~2022年11月1日(火)13:00

第60回宣伝会議賞公式サイト:https://senden.co
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