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カゴメ×有隣堂対談 事業成長に寄与する共感のつくりかた

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消費者からの「共感」を、企業がいかにして集めるのか?そうした視点は、事業成長を図る上で欠かせない時代になった。今、多くのファンを抱える企業はどのような点を意識しているのだろうか。カゴメの田口るみこ氏と、有隣堂の鈴木宏昭氏に話を聞いた。

※本記事は、2022年12月1日発売の月刊『宣伝会議』1月号の転載記事です。
 

カゴメ
マーケティング本部 広告部宣伝グループ
田口るみこ氏

2007年カゴメ入社。家庭用営業を担当後、他社でライター、HP制作に携わり、2018年カゴメに復職。広告部のCRM自社メディア戦略立案・推進担当としてファンサイト「&KAGOME」、食育プログラムに従事。

有隣堂
経営企画本部 広報・マーケティング部 課長
鈴木宏昭氏

大学卒業後、2006年有隣堂入社。書店員として複数の店舗で勤務後、本部での書籍の仕入れ担当などを経て現職。広報業務、YouTube運営の他、読書推進活動も行う。

「好き!」という気持ちにウソがない情報発信を

―2社ともに、ユーザーの共感を呼ぶメディア運営でファンをつくっています。SNS、オウンドメディアそれぞれの設立までの経緯について教えてください。

田口:ファンの皆さんとカゴメを結ぶコミュニティサイトである「&KAGOME(アンドカゴメ)」を開設したのは、2015年のこと。その少し前に売上が伸び悩んだ時期があり、ブランドごとのマーケティング施策だけではなく、カゴメ全体で顧客に向き合う必要性があると考えたことが開設のきっかけでした。

なぜファンとの関係性が重要だと考えたのか。それは顧客構造を分析した結果、購買金額の上位2.5%の顧客が、売上全体の30%を支えていたことが分かったからです。これは、他社と比べても高い水準であることが分かりました。事業を成長させ続けていくためには、この上位2.5%のお客さまとの関係性を強固にする必要がある。そうした発想から「&KAGOME」の立ち上げに至りました。

「&KAGOME」は、「ファンを知る」「ファンに伝える」「ファンと体験する」の3つを軸に取り組んでいます。そのため、私たちから情報を発信するだけではなく、ファンの方がレシピや商品レビューを投稿できたり、トマト苗を栽培している方がその様子を投稿し共有することで、活発なコミュニケーションが生まれている「トマコミ」があったりと、ファンの皆さん同士の交流の場にもなっています。

&KAGOME「トマコミ」の投稿ページ

鈴木:当社では元々、2013年ぐらいから『有隣堂Web』というYouTubeチャンネルを運営していました。そこでは主に、書店のイベントの様子などを発信していたのですが、2019年末に社長から「これからは、オウンドメディアに力を入れたい」という方針が示されて。有隣堂の事業は小売りと代理店で、自分たちで何かを生み出しているわけではない。そのため、stay uniqueを実現するには常に新しいものを探し続けなければいけません。また縮小する出版マーケットの中で書店が生き残るためには、「面白い場所」に変えていかなければいけないという思いがありました。そうして始まったのがYouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」です。このチャンネルは明確に“ファンづくり”を目的にしていました。

書店で扱う本や文房具は、全国どこで購入しても品質や価格は一緒。差別化できないことが課題でした。動画を通してファンになってもらうことで「どうせ買うなら、あの有隣堂で買おう」と思ってもらえることを目指して立ち上げ、その後連携する形でTwitterアカウントを開設しました。

―情報発信において、ユーザーの「共感」を得るために大切にしていることは何でしょうか?

田口:ファンサイトの運営で大切だと思うのは、まず自身がその企業のファンであることだと思います。商品はもちろん、この会社の「人」の想いや取り組みを伝えたい!皆さんと盛り上げたい!という熱量がサイト内やイベントでの対面時に表れるからです。また、書き込みや問い合わせに丁寧に対応するなど、安心して気軽に参加できる場を提供することを心がけています。さらに、企業側の押し付けにならないよう対応な目線で接するよう気を付けています。

鈴木:私たちが目指しているのは、ウソがない「素直な動画」です。動画の場合は、演者の表情や口調で、本当に好きでやっているかどうかが一目で分かってしまいます。実際、登場する社員は本音で話をしています。社長の発案で始まったオウンドメディアですが、社長が事前に動画をチェックするようなことはありません。「人権侵害、反社会的、誰かが傷つく、著しく品性を欠くこと以外、会社としてタブーはない」と言われており、動画の内容について、私たちに任せてくれているからこそ、現場の販売員の「好き!」という気持ちが素直に出た動画を配信できているのだと思います。

あとは、単なる販促動画にならないよう、「売りたい」より「語りたい」を重視するようにもしています。たとえ当社で扱っていないものであっても、愛着のある商品を紹介しようと。そういう私たち自身の熱量を大切にしています。

「有隣堂しか知らない世界」の人気シリーズより。

―現在のコミュニケーション活動における課題はありますか。

田口:共感には、大きく分けて商品への共感と企業への共感があると思います。「&KAGOME」では、商品や取り組みについてサイトの中で紹介したり、皆さんと楽しく体験できる場を提供したりすることで、この2つの共感を醸成できればよいな、と思いますね。

こうした方針で運営していくと多様なリソースが必要です。また、皆さんに自分ごととして感じてもらえる情報を、テーマが偏らないよう適切に発信していくことも大切。当社は畑で野菜が育つところから食卓でメニューや商品が並ぶまで一連の過程に携わっていますが、例えば契約農家さんとの取り組みや工場の様子等普段ファンの方に見えにくい部分をオンラインイベントでお見せしたり記事で紹介したりしています。研究や開発部門等なかなかファンと接することができない部門の取り組みもしっかり届けていきたいですね。

鈴木:課題は、先ほどの目標と反してしまいますが、つい「商品ありき」に陥ってしまうことです。毎週企画を出していくとなると、それだけの企画テーマに加えて熱量をもった販売員という出演者も必要になります。しかし、社内とはいえ「語りたい」ことを持った人を発掘するのはなかなか難しい。そうなると、「商品発信」になってしまうことが往々にしてあるんですね。かといって本人に熱量がないことを無理に語ってもらっても、動画として面白くないものになってしまう。新たな出演者を探す上でも、YouTubeの重要性を理解してもらうための社内広報にも力を入れていきたいと考えています。

また、店舗に来店していただいたお客さまに『有隣堂しか~』を知っているかアンケートを取ったところ、3.5%程度しか知らないという結果でした。オフラインでは、ほぼ知られていない状況なので、オンラインと店舗をどうつなげるのかも今後の課題です。

田口:おっしゃる通り、活動に対して社内での認知度を高めることは大切ですよね。今年の4月から「カゴメの人」という社員のカゴメや業務への想いにフォーカスしながら取り組みについて紹介していくコンテンツを始めたのですが、登場してくれる社員を探してオファーしています。有隣堂さんの動画に出演されている方も、皆さん本当に魅力的ですよね。

鈴木:最多出演者である文房具バイヤーの岡﨑弘子は、イベントなどに出ると写真撮影を求められることも。動画で紹介した眼鏡を買いに、その店員のいる店舗に遠方から足を運んでくれたりと、「人」にファンがついているのだと実感します。

田口:&KAGOMEのこれまでの知見からも、ファンづくりには「人」を感じてもらうことが重要な要素のひとつだと分かってきています。

―――「メディア運営におけるKPI」「100年続く企業のファンコミュニティ」「今後の展望」など、本記事の続きは、12月1日発売の月刊『宣伝会議』1月号で読むことができます。

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