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SKY-HIさんに聞く!10代に伝えたい、言葉との向き合い方

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2月上旬、宣伝会議賞中高生部門の最終審査会が行われ、グランプリ各賞が決定しました。審査会の終了後、審査員長の阿部広太郎さんと特別審査員のSKY-HIさんのお二人に、言葉との向き合い方について話を聞きました。
※本記事は月刊『宣伝会議』2023年5月号からの転載記事です。
※中高生部門の受賞作品はこちらの記事をご覧ください。

左から)BMSG 代表取締役CEO プロデューサー/アーティスト SKY-HI氏、電通 コピーライター 阿部広太郎氏

コミュニケーションではサークルを狭めていく作業が大切

阿部:早速ですが、審査会はいかがでしたか。

SKY-HI:楽しかったです。長く続いているアワードであり、なおかつプロのコピーライターの方々と審査をするということで、初めはほんのり緊張というか、ノイズにならないといいなと、ドキドキしていました。でも作品について議論するのがとても楽しくて、途中から最初のドキドキも忘れていました。

阿部:審査員による推したいコピーの応援合戦みたいになっていましたよね。「物議を醸したいわけではないんですが…」とひとこと添えながらも、率直な意見を交わしていって。非常に創造的な時間でした。

SKY-HI:そうですよね。気になるけど言わない方がいいかな、と思うこともあったんですが、最終的にはたくさんしゃべってしまって。大丈夫でしたか?

阿部:本当にありがたかったです!特にフレーズにおけるリズム感だったり、句読点の位置だったり。作者ではなく、見る側が魅力を言語化していくことで、鑑賞の仕方が豊かになっていくのを感じました。

SKY-HI:分析すると、さらに良さが出てくることってありますね。無意識的に「なんかいいよね!」と心に残るものにも、確実にロジックやテクニックがあるので、大切な作業だと思います。

阿部:秀でている部分を言葉にすることは重要です。SKY-HIさんも若い世代の方と接するとき、そうした「何か見つけてあげよう」という気持ちがあるんじゃないでしょうか。

SKY-HI:そうですね。人はテンプレートに逃げてしまいがちというか、褒めたり、ダメ出ししたりするときにも、どこかで聞いたような表現を使ってしまいがちです。

でも、その言葉がカバーする“サークル”が大きくなるほど、相手の心に深くは届かなくなってくる。なので、サークルを狭めていく作業が、コミュニケーションにおいてとても大切だと思っています。

定型文だとしても、自分の想いにぴったりとハマっていればよいのですが、褒めるにしてもなんとなくざっくりしてしまいますよね。

阿部:お互いの関係性も、そこにある言葉で育まれていきますよね。

SKY-HI:はい。サークルが狭いということは当然、外す可能性も高くなるのでとても難しい作業です。でも相手のことを思って、より深く届くためのコミュニケーションに頭を悩
ませるプロセスは、人として大切なことですよね。

自分の気持ちを届けてくれた人がたくさんいることに励まされた

阿部:SKY-HIさんの活動は若い世代の皆さんに響いていると感じます。歌詞も含め、届けるメッセージをどのように考えていますか?

SKY-HI:そうですね…自分で責任を持てる言葉しか発さないようにはしていると思います。あとは、自分で理由を説明できないことは、相手にも伝わらないというのは意識しています。

阿部:自問自答し続けて、そこから出てくる言葉が、責任感や信頼感のある言葉なのかもしれませんね。

SKY-HI:今回、審査していても実感しましたが、インプットが同じでも、学び方とか、働き方とか…その人の経験や方法によって、アウトプットの方法はいくらでもあるのだと思います。

それから、制限があるからこそ生まれる言葉もある。例えば10言いたいことがあったのに折り合いをつけて6だけ表現するみたいなことってありますよね。でも、試行錯誤するなかで、ときに12とか20まで表現できる場合もありうる。そんな可能性を探り続けたいと日々、考えています。

阿部:今回、おそらく初めてコピーを書いた中学生・高校生が多いと思います。「コピーってこういうものだよね」というものを取り払って、自由にチャレンジしている姿が見えてきて…それは大きな希望を感じました。

SKY-HI:夢がありますよね。誰もがインターネットで自分の意見を発露できるようになって、「こんなに伝わらないのか」と絶望したり、勝手に傷ついてしまったりすることも多い。

だから、こうして自分の気持ちを言葉に乗せてくれた人が、こんなにもたくさんいるということに励まされました。

阿部:エネルギーを持て余したときに、それは歌だったり、ダンスだったり…机に向かってスマホに言葉を打ち込んでみるっていうことも、ひとつの自己表現ですよね。

SKY-HI:以前にスタッフと、「何もない一日」をドラマチックに描くことができるのがよい作詞家だよね、という話をしたことがあって。そうやって言葉で照らし出すことが、人生を豊かにするコツだと思っています。

阿部:私も作詞をするのですが本当にそうですね。何もないと思っていても、言葉にすることで魅せられる。

SKY-HI:そうなんです。特にクリエイティブな仕事をしていると、「なんかよくないんだよね!」って言われることってあると思うんですよ。

でも、その「なんか」の要素を探るために、自分のアウトプットを客観的に分解する。その最中で良いところや自分のクセに気づけることも絶対にある。言われた瞬間はムッとしますけど、言葉にすることで状況を変えられるので、それも悪いものではないなと思います。

感情に向き合うとき、松明になるのが「言葉」

阿部:では最後に、中高生の皆さんにメッセージをお願いします。

SKY-HI:特に10代って感情が大きく揺れ動く時期ですが、その感情を、喜怒哀楽の4つだけに区切るのはあまりにもったいない。それどころじゃない振れ幅を絶対に経験しているはずです。

その感情に向き合う作業は、必ずその後の人生を豊かにします。その作業をするときに、おそらく一番役にたつ松明みたいなものが「言葉」だと思うんです。今は間違っていても、ズレていても当たり前。それでも、向き合うことをあきらめないでほしいと思っています。

阿部:今回、コピーに対する見方や味わい方を、SKY-HIさんに照らしていただけました。ありがとうございました!