「人生の転機だった」と10年後に言えるように/「宣伝会議賞」グランプリインタビュー 

3月10日、第60回「宣伝会議賞」が幕を閉じました。初めての応募でグランプリの座に輝いた守本悠一郎さん。「言葉」に対する思いと、これからについて聞きました。
※本記事は5月1日発売の月刊『宣伝会議』2023年6月号からの転載記事です。

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グランプリの守本悠一郎さん。

「言葉を仕事にしたい」と思って応募したのが「宣伝会議賞」でした

─大学でプロダクトデザインを学んで、在学中からフリーランスでデザインの仕事をされてきた守本さん。「宣伝会議賞」に応募したきっかけとは何だったのでしょうか。

言葉にかかわる仕事をしてみたかったんです。クライアントさんの考えを文章でまとめたり、プライベートでもnoteを書いてみたり、昔から言葉を書くことが好きでした。でも、今まで「デザイナー」という肩書で仕事をしてきたので、ここからどうやって言葉にかかわることを仕事にできるだろうか?と考えた時に見つけたのが「宣伝会議賞」でした。

応募を思い立ったのは2022年の9月。宣伝会議賞の他にもラジオCMコンテスト3~4件に応募して、そのひとつで金賞を受賞しました(第33回MBCラジオ CMグランプリ)。

─グランプリを受賞した作品は会話調でしたね。

会話調のキャッチフレーズが得意というわけではありません。応募した作品で会話調のものは、決して多くはありませんでした。むしろ、広告コピーを考えるようになって日が浅いので、自分の得意な型についての自覚もありませんでした。まずは「宣伝会議賞」のサイトに掲載されていた過去の受賞作品を見て、そのコピーたちが持っている性質を意識しながら、見よう見まねで考えていきました。

全部で600点ほど応募しましたが、音声広告はそのうち1割程。ひとことでは伝えきれない切り口から膨らませて字コンテにしたり、逆に、字コンテから中心となる言葉だけを削りだしてキャッチコピーで応募したり。初めてだった分、柔軟な手法で考えられたのかなと思っています。

─デザインとコピーライティングに共通点はありますか。

僕は、デザインとコピーの根幹は同じだと思っています。デザインもコピーも、始まりはアイデアです。そして、そのアイデアは企業や商品が持つ魅力だったり、まだ形になっていない“何か”に輪郭を与えるものです。輪郭が与えられた結果、グラフィックか、映像か、言葉か⋯というアウトプットになるわけですが、根本は一緒なのではないでしょうか。

僕の場合、デザインをするときも、一度コンセプトを言葉にしてから、それに見合う“カタチ”をつくっていきます。そのため、いざキャッチコピーを書こうとした時に、そこまで高い壁は感じませんでした。いつも通りに、対象が持つ課題からアイデアを出し、最終的にできるものが言葉のカタチをしている、という感覚でした。

─「宣伝会議賞」に応募される方、受賞される方の裾野は広がってきています。こんな人にチャレンジをお勧めしたいというアイデアはありますか。

物事に対して敏感な人、でしょうか。もしくは常識を疑って、いろいろなものに文句を言いがちな人。そういう人がキャッチフレーズを書いたら、いいものが生まれるんじゃないかなと思っています。

そもそも僕がデザイナーを目指したのは、世の中に存在していたデザインに自分の納得がいくようなものが少なかったからです。広告の言葉も同様で、「自分が納得のいくものが世の中にないから、自分でつくってしまおう」というくらいの気持ちの人が「宣伝会議賞」に向いていると思います。

応募サイトをメモ代わりにランダムに考えていった

─「宣伝会議賞」にはどのように取り組みましたか。

電車に乗っている時や人と待ち合わせしている時など、外で考えることが多かったです。家で課題とオリエンを読んで、それをなんとなく頭に入れた状態で出かけて、思いついたらスマートフォンで直接、応募サイトに打ち込む、という感じです。そしてしばらく時間を置いてから投稿一覧を順に見ていって、違和感がある言い回しは直していきました。でも、どんなものが審査を通過するかが分からなかったので、一度投稿した作品を撤回することはしませんでした。アイデアとして出したものは、ほぼ全部投稿したのではないでしょうか。

目標はまずは全課題、最低10本は提出すること。

投稿ページの仕様で、ひとつ応募したらランダムに次のおすすめ課題が3つ出ますよね。その順番に従って考えていきました。例えば同じ「日本酒」の課題でも、「麦茶」の課題の後と「ボイラー」の後では、出てくるアイデアが変わってくると思うんです。

印象に残っているのが、「新しいアイデアが浮かんだ!」と思って応募したコピーが、すでに応募済みの作品と一言一句同じで、エラーが出てしまったことです。そのぐらい深く考えすぎずに、肩の力を抜いて取り組めたのも、功を奏したのかもしれません。

これから頑張っていくための後押しをしてくれた感覚

─贈賞式で名前を呼ばれた瞬間は、どんなお気持ちでしたか。

不意打ちで、本当に1ミリも選ばれると思っていませんでした。シルバーの発表で名前が呼ばれなかった時点で、「今年の挑戦は終わったな。おいしいものでも食べて帰ろう」と、すごくリラックスした状態になっていました。

グランプリ発表の時、仲畑貴志さんが「三浦工業の⋯」とおっしゃった時も、「他にも同じ課題でファイナリストの人がいたんだな」と思ったくらいです。

壇上でスピーチをしましたが、今でも「あの時の言葉はあれでよかったのかな」と反省する部分があります。

─今後の展望についてお聞かせください。

贈賞式直後は「選ばれて信じられない」という気持ちでしたが、いまは、今回の受賞をターニングポイントにしなくては、という焦りが大きいです。

僕はこれまで、デザインのコンテストではグランプリをとることはできなかったんです。そして、そうしたアワードの難しさを実感してきました。だからこそ、これからコピーライティングの世界で成果を出していかなければいけません。それが、選んでいただいた審査員の方々への恩返しだとも思っています。

「卒業」というのも、後押しをしてもらった感覚でいます。10年後に「人生の転機でした」と言えるように、ここからスタートする気持ちで頑張っていきたいと思います。

月刊『宣伝会議』6月号の「宣伝会議賞」特集では、グランプリインタビューのほか、「コピーゴールド・ビデオ&オーディオゴールド・眞木準賞 受賞者座談会」や「中高生部門 受賞者座談会」も掲載します。

月刊『宣伝会議』6月号(5月1日発売)

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ングの力とは?
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〇マーケティングの市場創造機能が変革期の企業で担える役割とは
立命館大学ビジネススクール 鳥山正博
〇人を動かすマーケターの力が企業のコアスキルになる 
「ピープル・ファースト」の時代が来た
D&Fクリエイツ 矢野健一

▼特別企画
受賞者と振り返る 第60回「宣伝会議賞」


▼特集2
経営に生かす「顧客」という資源
「ファンコミュニティ」の運営と活用

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マスヤ「おにぎり倶楽部」、BRUNO「BRUNOがある暮らし」、コクヨ「meeket!」など

▼シリーズ特集
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