クリエイターとのフラットな関係性が肝 森永乳業の「伝わる広告」の考え方

生活者の心をつかみ、売上に繋がる企画は、どのような課題設定や意思決定から生まれるのか。「リプトン ミルクティー」の“旧” 発売施策、「マウントレーニア」の30周年コミュニケーションなど、話題を集めた施策の実践から見えてきた、クリエイターとのパートナーシップの最適解とは。

※本記事は月刊『ブレーン』2024年1月号「2024年広告主がクリエイターに期待すること」特集からの抜粋です。
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林正義さん

森永乳業 マーケティングコミュニケーション部 部長。森永乳業に新卒で入社後、工場事務・営業を経て2000年~2021 年までマーケターとして、アイスクリームのマーケティングを約20 年、ビバレッジのマーケティングを1 年経験。その間アイスクリームの「MOW」「PARM」の開発に携わり、2015 年から7 年連続でロングセラーブランド「ピノ」のV 字回復を実現。2021 年より現職。「生活者のココロを動かすコミュニケーション」をテーマに活動中。

 

オリエンまでの下準備に2、3 カ月

森永乳業ではマーケティング統括部が練った戦略をもとに、マーケティングコミュニケーション部が広告コミュニケーションのプランニングから実装までを担う。体制は広告担当が10人、社内でパッケージデザインなどを手がけるデザイナーが5人在籍する。

林正義さんは2021年から同部の部長を務めている。これまで「MOW」や「PARM」の開発に携わったのち、2015年から「ピノ」のV 字回復を主導してきた。

就任以来、チームのメンバーに伝えているのは「消費者に伝わるコミュニケーションをつくることが最優先」であること。そしてそのために広告会社とは、共に企む仲間としてフラットな関係でいるべきだと考えている。

「広告の発注・受注の関係性から、それが上下関係になってしまうと、伝えることのプロであるクリエイターが考えた最善の施策に、余計な口出しをしてしまったり、演出など触れてはいけない領域に要望を出してしまったり、といったことがあるためです」と、林さん。

しかし決して「お任せ」というわけではなく、目的は明確に定めている。

「効果に繋がる企画のためには、ブランドオーナーの我々がしっかり決め込まなければいけない部分があります。ブランドのコアな価値や志、パーソナリティ、ポジショニング。成長するためにどんなお客さまを取り込みたいか、それはどんな人で、ブランドに何を求めるのか。そういった面をクリアにすべく、オリエンの下打ち合わせには基本的に2、3カ月はかけています」(林さん)。

 

生活者が「本質的に求める」ことは?

そんなチームで、2023 年、「ここまで実際に手をかけたのは初めて」と話すほど力を入れて取り組んだのが、同年3 月から実施した「リプトン ミルクティー」の“旧”発売に合わせて公開したWeb 動画「667 通のラブレター」と、その交通広告。生活者の声をそのままコミュニケーションに反映する形で実現した企画だ。

リニューアルした「リプトン ミルクティー」を、元の味に戻す際に公開したWeb 動画「667通のラブレター」。667通の問い合わせの文言を用いて、青春恋愛風のアニメーションを制作した。

「リプトン ミルクティー」は1984年に発売。2022年3月に味のアップデートと共に「リプトン ロイヤルミルクティー」にリニューアルした。しかし、元の味に愛着を持っていた消費者たちからは、「以前の味が好きだったので変わってしまい残念」という旨の問い合わせが多数届くように。その数は半年間で同社史上最多の667件にのぼった。

「単に味を元に戻すだけでなく、問い合わせをくださった方々の声に応えるようなコミュニケーションができないかと考えました。そこで以前『ピノ』などでもお付き合いのあった電通のクリエイティブディレクター 尾上永晃さんに相談。いただいたお問い合わせを皆で改めて読むことにしました。

すると、そこに込められた熱量や愛情は、クレームとは異なることに気付きまして。尾上さんから『これはラブレターだ』と視点をいただいた時、たしかにそうだと腑に落ちました」(林さん)。

その「ラブレター」を元にどんな企画を打つべきか。いくつか提案を受けたうち、林さんたちが選んだのは、険しい道のりをたどるものだった。

667件の問い合わせの中にあった文言をラブレターに見立てて、青春恋愛風のアニメーションをつくる企画。感謝の思いを伝え、使用許諾をとるべく、問い合わせの送り主に手紙を書いて送付。完成後は一般公開に先立ちその人たちを呼び試写会を実施する⸺。

「667通のラブレター」では、まるで映画の予告のような交通広告も展開。実際の問い合わせ内容(下、白枠内)も用いられている。

X では「#リプトンミルクティーおかえり」というハッシュタグを用意して、復活を喜ぶ人たちが集まる場も設けた。この「667通のラブレター」に関する情報は、パッケージデザインにも組み込まれている。

なぜこの企画を選択したのか。

「667人の声をまとめて最大公約数的なメッセージを打ち出すのではなく、n=1 の声としてそのまま企画に取り入れたい、という想いがありました。

というのもここ数年、部として、“どうメッセージするかというクリエイティブも重要だが、それ以前に生活者がブランドに何を求めているのかを本質的に追求しよう“という意識があります。リプトンミルクティー宛にいただいた声の一つひとつには本質が込められていて、その声をくみ、最大限応えることが、ここでブランドに求められていることだと考えました」(林さん)。

結果として反響は大きく、売上も大幅に伸長。部としては引き続き、生活者が本質的に求めていることを探るべく、部員が必要な時に調査をできる仕組みも導入した。2023年から、より積極的に用いられ始めているという。

……続きは誌面でご覧ください。

続く内容
・「マウントレーニア」30周年のブランディングキャンペーン「もしも東京の真ん中に山があったら」。抱えていた課題感と実施の結果は?
・2024年3つの注力方針。

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月刊『ブレーン』2024年1月号

  • 〈巻頭特集〉
  • 2024年
    広告主がクリエイターに
    期待すること
  • クリエイターとのフラットな関係性が肝
  • 森永乳業の「伝わる広告」の考え方
  • 林正義(森永乳業)
  • 「マッチングアプリの認識を変えたい」
  • Tinder Japan 5年目の展望
  • チョウ・キョ(Tinder Japan)
  • 変革期の「kintone」
  • 2024年に目指すはブランドイメージの統一
  • 山田幸(サイボウズ)
  • 実写版テレビドラマも公開
  • 「ハジメとケンとセツ」次なる展開は?
  • 江角大樹(一建設)
  • 広告注力企業
  • 14社が回答
  • 「広告クリエイターに求めることは?」
  • 青山商事/アサヒビール/インターメスティック/Uber Eats Japan/エクシング/大塚製薬/花王/カンロ/クラシエホームプロダクツ/GO/大日本印刷/パルコ/LIFULL/リクルート

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