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ルンバのメディア戦略を次のフェーズへと進化させるため、 「1リーチの価値」を再定義したい

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デジタルからテレビをはじめとするマスメディア、さらには店頭行動までがデータで一本につながるようになったことで、メディア投資戦略にイノベーションを起こすような新たな取り組みが始まっています。本連載は、企業・メディア・広告会社に多面的な取材を行う中で、マーケティング・コミュニケーションの未来を探っていくものです。今回は、ロボット掃除機「ルンバ」を展開するアイロボットジャパンから豊泉氏と福永氏、博報堂iRobotチームのビジネスプロデューサー樋口氏、メディアプラナー中村氏に、同社のメディア戦略について聞きます。

写真 人物 左から)アイロボットジャパン 豊泉伶奈氏  アイロボットジャパン 福永翔平氏  博報堂DYメディアパートナーズ 中村有陛氏  博報堂 樋口修斗氏
(左から)アイロボットジャパン 豊泉伶奈氏 アイロボットジャパン 福永翔平氏 博報堂DYメディアパートナーズ 中村有陛氏 博報堂 樋口修斗氏

「イエナカ」需要を追い風にルンバをもっと普及させたい

―「ルンバ」は高い認知度を誇る製品ですが、iRobotではどういったマーケティング戦略を描いているのでしょうか。

福永:日本市場におけるルンバの認知度は約98%と非常に高い数字を出しているのですが、実は世帯普及率は10%以下という状況にあります。まずは世帯普及率を10%台に乗せることを2023年の目標に設定しています。その中で、デジタルの領域でやるべきこととしては、「購入未検討の方々へ気づきを与えるマス的なアプローチ」と、「購入を検討されている方々へのダイレクトレスポンス的なアプローチ」、その中間の「ルンバのことをまだよく知らない方へのエンゲージメント促進」を相乗効果を生みながらハイブリッドに行うことだと考えています。

豊泉:「ルンバ」の世帯普及が滞っている理由としては、「ロボット掃除機で本当に隅々まで掃除ができるのか?」という、デビュー当時のイメージを払拭しきれていないところがあります。それと日本特有の事情として、「掃除は自分の手でするもの」という意識が強いことも障壁になっています。とはいえ、コロナ禍によって「イエナカ」需要が高まったことや、共働きの方などの「時間を有意義に使いたい」というニーズの強まりは普及の追い風になっています。

写真 実データ 「ルンバ」の広告クリエイティブ

「ルンバ」の広告クリエイティブ。すでに認知は獲得しているので、マーケティング施策は次のフェーズに向かっている。

 

―その変化に対して、博報堂のチームはどのような取り組みをしているのでしょうか。

樋口:コロナ禍により、EC購買が加速化したことで、生活者とのEC上での接点の急拡大、ECチャネルの利用方法の変化、ECを中心にiRobotさんの競合他社が多数出現するなど変化がありました。それらに対応するため、マーケティング全体の改革はもちろん特に、EC・デジタルマーケティング戦略の改革を一緒に取り組んできました。

単なるリーチにとどまらずテレデジの効率の違いも意識

―チームの取り組みとして、テレビとデジタルのリーチをダッシュボード上で見られていると伺いました。

福永:「Tele-Digi AaaS※1」のダッシュボードで議論を重ねています。テレビとデジタルの統合をして、同予算の中でどういう投資をするのが最適解かを来年以降、見つけていければと思っています。

※1 Tele-Digi AaaS「テレビCM」と「デジタル広告」のメディアパフォーマンスを 一元化してモニタリングできる統合ダッシュボード。

樋口:今までは、テレビとデジタルは指標が異なり、どうしても分断した活動になっていましたがTele-Digi AaaSを導入することで、同一指標で一元管理ができて、統合したマーケティング推進を実現できています。

中村:例えばKPIでも、「テレビとデジタルでは、どちらのリーチ効率がよいか」、「具体的にどういったリーチでお客さまにアプローチを取るのがベストか」など多角的にテレビとデジタルを検証し、「1リーチの価値」の精緻化を図っています。

―現時点の手応えはいかがですか。

福永:第一段階のパフォーマンスとして、メディアのリーチ効率やエンゲージ効率という点では非常に満足のいく結果が出ています。その背景としては、もちろん博報堂チームとの強固なパートナーシップがあると思います。これまでは各チーム単位でお願いをして、単体で仕事をしていたため、少しズレが生じていたのですが、現在は戦略から戦術まで、芯の通った活動ができています。

―現在の取り組み以外にも、AaaS※2を使って実現できそうなことはありますか。

※2 AaaS:統合的なメディアプランニングから、広告枠のバイイング、広告効果のモニタリングをワンストップで支援することでマーケティング戦略上最適な広告メディア活用を可能にするサービス。

中村:「広告接触ベースの分析」を突き詰めて、指名検索やサイト来訪など、より生活者の行動に基づいたKPIでPDCAを回すことも考えています。また、顧客接点が複雑になっている中で、改めて「どのチャネルが売上に効いているのか」ということを可視化するのも重要だと思います。

樋口:あくまでAaaS活用を目的化せず、iRobotさんの事業成長・事業課題に応じた手段としてAaaSを最適活用することを考えているため、新しいAaaSソリューションをiRobotさんとゼロから一緒につくることも視野に入れています。これはiRobotさんと博報堂チームが単なる受発注の関係ではなく、各々がオーナーシップを持つ最強のチーム創りができているからだと考えています。

顧客行動を可視化し、広告体験に落とし込む

―今後チャレンジしたいことについてお聞かせください。

福永:「マーケティング施策がいかに事業に貢献できるか、それを可視化するか」が今後の大きなチャレンジになると思っています。

豊泉:デジタルマーケティングは難しい話が多いので、それをシンプルになるまで削ぎ落とし、全員がゴールに向かって協力できる仕事の進め方を整備するのも私たちの仕事だと考えています。

中村:メディアプラナーの視点でやっていきたいのがEC領域における広告効果の紐付けですね。Amazonや楽天などのECサイト上での行動分析は外部ECゆえの難しさがあるのですが、そこの効果もどんどん可視化していって、全体最適を目指したいです。

樋口:私は、CRM/顧客データの有効活用に挑戦したいですね。ルンバから「購入後の価値あるデータ」がたくさん得られていることや2024年には3rd Party Cookie廃止が予定される中、顧客データの有効活用は、ビジネス上の競争力になり得ると強く感じています。既存顧客へのアプローチはもちろん、より多くの新しいお客さまにルンバを使ってもらうために有効活用できればと思っています。

編集協力:博報堂DYメディアパートナーズ

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