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「テレビCMを打つ意味は確実にある」ベンチャー2社、初出稿後の成果は?

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宣伝会議は、2023年11月29日、30日に九段会館テラスにて「宣伝会議マーケティングサミット2023」を開催しました。2日間で合計34セッションの講演、展示ブースでのプレゼンテーション、マーケター交流会などが行われました。本稿では、新興企業2社による「初のテレビCM、どうだった?」をテーマに議論したセッションについてレポートします。

※次回のリアルイベントは、2月29日、3月1日に「アドタイ・デイズ2024春」を浜松町コンベンションホールで開催予定です。

近年、初めてテレビCMに投資をする新興企業が増えている。今回登壇したのは、2022年夏から新たにテレビCMを始めた2社。

支出管理クラウドサービスを提供するTOKIUM 取締役の松原亮氏、オンラインピル診療サービスを展開しているmederi 取締役の大池優貴氏がその目的設定やクリエイティブに関する戦略、実際の効果などについて語る。


写真 風景 TOKIUM 取締役の松原亮氏(右から2人目)、mederi 取締役の大池優貴氏(右)
TOKIUM 取締役の松原亮氏(右から2人目)、mederi 取締役の大池優貴氏(右)。

全国CMで早急な認知獲得へ

⸺テレビCMへの投資はどのような経営判断で行われましたか。

松原 競争環境と市場環境を鑑みて、急速に企業としての認知度や信頼度を高めるにはテレビCMが最も効果的だという考えからスタートしました。

まず競争環境として、2020年ごろに生まれた請求書受領クラウドは大手企業も参入しています。私たちも選ばれることがある一方、当時は企業としての認知度や知名度が低かったことによる失注も少なくありませんでした。そのため、まずは商談やコンペで声がかかるようにすることと、知名度の低さによる失注を避けることが大きなテーマでした。

また、市場環境としては2022年から2023年にかけて電子帳簿保存法やインボイス制度といった法改正が迫っており、追い風が吹くことが予想されていたのでピークが来る前に認知を獲得する必要がありました。

大池 mederiも同じく、認知を早く獲得することが目的になります。「オンラインピル診療」というサービスの場合、競合も扱う商材は同じ。差別化が難しい点とそもそも市場が認知されていない点から、認知度を高めなければならないという課題がありました。テレビなら最も早急に認知が得られると考え、サービスローンチの半年後ほどでCMを打ちました。

最初は地方でテストをして反応を見てから全国区での展開をしようと考えましたが、当時は全国区でテレビCMを打っている競合他社はない状態。先んじるためにも失敗を恐れずに全国でのCM展開を決断しました。

松原 タイミングとしては、私たちも追い風が吹くであろう時期が決まっていたため、地方で少しずつ試してから大きく展開するよりも、覚悟を決めて大々的にテレビCMを打ちましたね。もちろん事情が異なれば、違う選択肢を取った可能性はあります。

媒体費と制作費のバランスは?

⸺CMのクリエイティブ制作の裏側についても聞かせてください。

松原 クリエイティブの費用を抑えて媒体費用を増やすかどうか、タレントを起用するかどうか、SaaS企業によくあるオフィスのシーンを描くCMフォーマットを踏襲するかどうかなど、それぞれを目的に照らし合わせて決断しながらクリエイティブを制作していきました。


写真 人物 松原亮
松原亮(まつばら・とおる) TOKIUM取締役。東京大学を卒業後、新卒でドイツ証券に入社。投資銀行業務に携わる。2020年に経理DXを支援するTOKIUM参画。入社当初は請求書受領クラウド「TOKIUMインボイス」の事業責任者として事業を推進したのち、2021 年ビジネス本部部長就任。2022年4月より取締役。

今回は競合企業が私たちよりも体力があり、出稿量での競争では不利になると予想できたので、媒体費よりもクリエイティブ重視でコストをかけようと考えました。また、高単価のSaaS商材ということから、信頼性のあるタレントを起用する方が望ましいだろうと考えて俳優の永山瑛太さんらを起用。SaaS企業のCMフォーマットは避ける判断をしました。

そういった要望を広告会社(博報堂)に伝えてコンペを実施し、出演者が防衛隊員に扮する「トキウム防衛隊」という企画を選びました。出演者が代わっても「防衛隊」のフォーマットを残せますし、深緑のコーポレートカラーを衣装などにも反映させました。

大池 mederiの場合はオンライン診療や医薬品には規制があることから、クリエイティブでの表現の幅が狭まってしまうという課題がありました。また、信頼や安心感を伝えられるようなタレントを起用することは決まっていて、女性が身近に感じられる存在としてYouTuber芸人のフワちゃんに出演をお願いしました。


写真 人物 大池優貴
大池優貴(おおいけ・ゆうき) ラグジュアリーブランドを多く取り扱うECサイトのフルフィルメント会社に9年間在籍。アカウントマネジメント部門の責任者として複数ブランドのEC戦略立案やサイト構築・運営、コンサルティングを経験。2021年にmederiへ入社し、事業責任者としてマーケティング、オペレーション構築、システム開発PM、法人営業など全体を統括。

内容に関しては、オンライン診療の風景やサービスの説明を具体的に入れることも検討しましたが、テレビCMで全て伝えきることは難しいと判断しました。まずは名前を知ってもらおうと、CMの内容も誰もが知っている童謡の『メリーさんのひつじ』の歌詞と「メデリ」「メデリピル」という名称を連動させています。

広告会社(電通)の選定から2カ月ほどで放送というタイトなスケジュールになりましたが、本来はもっと時間をかける企業が多いのではと思います。

松原 私たちも紆余曲折がありながらも、実働期間としては3カ月弱で放送することができました。同じくかなりタイトでしたので、広告会社にサポートをいだきました。

指名検索が増加、営業の後押しも

⸺テレビCMによる成果や反響はありましたか。

松原 指名検索数は右肩上がりでした。明確に効果はありましたが、「CMを見て即導入」とはなりにくいBtoB商材ということもあり、リードや指名検索の単価を厳密に算出するのは難しいとも感じました。分析や効果測定に難しさはあるものの、テレビCMを打つ意味は確実にあることから、今後も続けたいとは考えています。

大池 私たちは、サービスローンチ時にほとんどなかった指名検索が、CM放送後に急増しましたね。また、この1年で計3回テレビCMの山場を設けたのですが、1回ごとに指名検索のボトムも徐々に上がっていきました。「オンラインピル」「ピル効果」といった検索からの流入も非常に増え、検索順位も上がった印象があります。2回目以降のCM放映ではSEO対策にも注力したことで指名検索以外の伸びもより感じました。

松原 TOKIUMの場合は地域の営業活動に合わせて戦略的にエリアを絞り込んでCMを打つ試みもしました。基本的にマス広告と営業活動をセットで捉えていて、特に有力な代理販売のパートナーがいる北海道と北陸では、CM放映期間中に合わせて顧客訪問に力を入れてもらうようにしました。営業活動の後押しという意味では、地方はやはりテレビの力が強いなと実感しました。関東エリアよりも地方の方がテレビCMとの相性がいいとも感じています。

大池 mederiの場合、オンラインピルについては忙しく働く女性のニーズが多いこともあってか、関東での反応がいいですね。実際にテレビCMのパフォーマンスもリアクションも関東が圧倒的に高く、今後も関東を中心に展開する戦略を考えています。

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